加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

「コパクト・シティ」に関する考察(その4):ヨーロッパにおけるコンパクト・シティ論とエコミュニティ論

2005-11-12 06:43:14 | Weblog
 欧州における「コンパクト・シティ」論に決定的な影響を与えたのは、90年代末から認識が一般化した地球環境問題への対応です。この時期にEUや各国政府の都市政策、地域政策において環境政策とのリンクが重要視されるようになりました。
 EUは、環境政策の一環として、「持続可能な都市」(sustainable city)を目指しており、今日における欧州、特に英国の都市計画のキーコンセプトは、「持続可能な発展」(sustainable development)です。そして、「コンパクト・シティ」は持続可能な都市の空間形態として提起された都市政策のモデルなのです。その意味で 20世紀に展開された主要な都市論であるエベニーザ・ハワードの「ガーデンシティ」、ル・コルビジェの「輝ける都市」、ジェーン・ジェイコブスの「大都市像」などに匹敵するものといえます。
 EU委員会は、96年『サステイナブル・シティ報告書』を発表し、次のような持続可能な発展のための4つの条件を明らかにしました。
 ①都市経営
 ②政策統合
 ③エコシステムへの配慮
 ④資源、交通、土地利用、市街地地再生、観光レジャー、文化遺産分野での協力 とパートナーシップ
 これを発展させた議論を展開し、実践に移しているのが世界的に有名な英国の建築家であるリチャード・ロジャーズです。彼は「コンパクト・シティ」論の熱烈な支持者であり、中国上海市のほとう地区の開発を「持続可能な都市」(sustainable city)を指導理念として設計した建築家ですが、彼の「持続可能な都市」(sustainable city)論は、文化的要素を強調し、教育、情報、参加、技術の活用を主張しているところに、従来より私が主唱している「エコミュニティ」論と共通した特徴があります。
 ロジャーズは1998年に表した『小さな衛星のための都市』の中で、「持続可能な都市」(sustainable city)の特性として次の7点を挙げています。
 ①正義の都市:食物、教育、保険、希望がフェアに配分されている
 ②美の都市:芸術、建築、景観がイメージを書き立てる
 ③創造的な都市:開かれた心と経験が人的資源のポテンシャルを高めて、変化にすばやく反応できる
 ④エコロジカルな都市:生態への影響を最小限にし、景観と市街地形態がバランスし、建物とインフラが安全で資源が効率的に使われる
 ⑤到達のしやすさと移動性が高い都市:フェイス・ツー・フェイスでも、通信手段でも情報がやり取りしやすい
 ⑥コンパクトで多中心(ポリセントリック)な都市:農村地域を保全し、近隣コミュニティが結ばれ、交流が高められる
 ⑦多様な都市:幅の広い重層的な活動が活力を生み、活気のある市民生活を促す
 
 1998年『エコマネー』の刊行以来私が展開してきた「エコミュニティ」論は、これに8番目の要素として次のものを追加したものだということができるでしょう。
 ⑧金融・通貨の民主化が行われる都市:「市民起業家」(Civic
Entrepreneur) が一方でエコマネー、エコポイントなど自分たちが創造したお金を活用し、他方でPPP(Public Private Partnership)により地域再生ビジネスを展開している