酔いどれ烏の夢物語

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酔いどれ烏の夢物語 あたりまえ

2022-12-31 21:10:16 | ポエム

  皆さまこんばんは!今年もあと数時間となりましたね。今年はどんな年だったでしょうか

私は妙にバタバタした感じです。思い立ったらすぐ実行!の私、まあそのせいで失敗も多々あるのですが

ブログも始めたは良いけど何をどうすれば良いのかわからず、未だに初心者の域を越えられません。

皆様には短い間ですがお付き合い下さり、ありがとうございました!

 来年もコツコツUPしていきますので、末永くお付き合いくだされば嬉しいです!

 皆様にとって来年が良い年でありますように願っています‼

 ついでに私にも良い年でありますように!

                          karasu

 

      あたりまえ

 貴方って本気で人を好きになった事ある?

結婚して一年持たずに 別れた元妻に言われたセリフだ

今まさに離婚届にサインしようとしている俺に言った

答えられずにいると やっぱりねえ、と言った

 今更だけどもう少し好きになって欲しかったなあ

彼女とは大学の先輩からの紹介で付き合った

良い感じの人だと思ったし、気さくな所が気に入って

ほどなく結婚した それが当たり前の事だと思っていたから

だが当たり前では無かったらしい

 よく言われるけど、好きの反対は無関心って言うでしょ?

 貴方ってそんな感じなのよ 嫌いでは無いけど興味が無いみたい

 

離婚してすぐ先輩からメールが来た

 もう別れたって? 何が原因だ?

 …無関心だって。

 え、何それ⁈

結局、俺とでは幸せになれないと早々に見切りを付けられたって事だ

 そんな顔してると幸せが逃げちゃいますよ、先輩!

俺の顔を覗き込んで 最近やたらと絡んでくる新入りが言った

 生憎だが、俺の幸せは一週間前に出て行ったよ

と答えると、えー可哀そうに と言われた

何でこんな可愛くない後輩に可哀そうな人認定されなきゃならないんだ?

 じゃあ、今フリーですか? そう訊かれて言わなきゃ良かったと後悔した

 

こいつは今年入って来た新人だが、何かにつけ俺に絡んでくる

仕事はまあ出来る方だと思う 何より客受けが良い

その人懐っこさとしぶとさが 天性の武器だと俺は思う

 ねえ、先輩行きましょうよ! 今度の休み

 何で俺が休みの日までお前に付き合わなきゃいけない?

 俺が先輩と行きたいからです!だって先輩俺のタイプだし

 俺は男だ! 俺もです!

一体何なんだこいつは?新種の生物か?

 一度くらい連れて行ってあげたら?

同期入社の橘まで口を出してきた いや、むしろ面白がっているな

結局、独身組みんなで行くことになった

 

ついた先は最近オープンした テーマパークだ

はしゃぐ後輩たちを眺めながらコーヒを飲んでいると

橘が来て隣に座った

 あの子、心配していたのよ。ここ数日貴方に元気が無いって

 いい後輩じゃない、気づかなかった?

そう言われた 途端に別れた妻の言葉を思い出した

 貴方って無関心なのよ

だから最近アイツはしつこく絡んで来たのか?

俺は何時から、俺の事を気遣ってくれる人の気持ちに鈍感になってた?

妻が言いたかった事が少し解った気がする 当たり前だと思っていた事が

それを当たり前にしてくれていた人が居た事を

 

 

 

 

 

 

 

            

       

  

 

 


酔いどれ烏の夢物語 キャンバス

2022-12-30 20:14:01 | ポエム

 

        

       キャンバス

僕は彼の絵を描く姿を見ているのが好きだ

キャンバスに向かい考え込んだり 首を傾げたり

時には筆を持ったまま停止したりする

そんな表情を見るのが楽しいから

僕は少し離れたソファーに座り 本を読みながら彼を見ている

だが時おり絵の中に引き込まれてしまう様な気がする

そんな時は少しだけ怖い だからコーヒーでも淹れようかと声を掛ける

 

そんな彼と出会ったのは一年前 

僕はいつもの公園のいつものベンチで本を読んでいた

先ほどからスケッチブックを片手に

ウロウロしている青年がいるのは気づいていた

その青年が僕の前に来て お願いがあるんですけど と言った

彼が言うには 絵を描きたいのでモデルになって欲しいと言う

何でも辺りに散った落ち葉と 僕がとても似合っているらしい

 

何をすれば良いの?と訊いた

そのまま読書をしていて下さい そのままを描きたいんです

よく解らなかったが それなら好きに描いて良いよ

それから二月ほどしてあの青年からメールが届いた

小さなコンクールですが金賞を取れました

展示しているので一緒に見に行きませんか?

という内容だった流石に気になったので見に行く約束をした

 

出掛けた先は小さなギャラリーの様だった

中に入ると十数点の絵が飾られていた

すれ違う人たちが何故か 僕の顔をチラチラと見る

こっちです! 連れて行かれたそこには僕がいた

確かにあの日の僕だ 着ていたセーターの色も

ベンチに座った姿勢も 間違いなく僕の姿だ

とても不思議な感覚だったのをよく覚えている 写真とは違う何か

 

彼はその翌年から美大に通っている

よく家に来るので合鍵を渡したら

いつの間にか居ついてしまった 彼の私物も増えている

すみません画材に匂い気になりませんか?なんて気を使う癖に

毎日のように絵を描いている これは少し早まったかな?

そう考えて ふとあの絵を思い出した

そうか、俺は既にあの四角いキャンバスの中に捕らわれていたのか

 

 

 

 


酔いどれ烏の夢物語 雪の日

2022-12-29 19:39:59 | ポエム

       

       雪の日

舞い落ちる雪を見ていると 心が落ち着いてくる

昨夜から降り続いている雪は この街を白く塗り替えている様だ

昨日別れ際に小さな喧嘩をした 別に珍しくも無いが気にかかる

お互いに意地っ張りな性格だから 素直に謝ることが出来ない

出逢ったのも雪の日だった お洒落なカフェを見つけたので入ってみた

微かに流れるBGMが良い感じだ 窓辺の席が空いていたので座った

注文を取りに来たのが彼だった 大人ぽくって優しそうな人

声は少し低くて聞き取りやすかった 僕はミルクティーを注文した

鞄から最近買ったばかりの本を取り出して読んでいた

ミルクティーを運んできた彼はそっとテーブルに置き

 その本面白いですか? と訊いた

 はい、まだ読み始めたばかりですが面白いですよ と答えると

 それではごゆっくり、読書を楽しんでください と言った

とてもスマートな物言いだなと僕は思った

 

彼の働いているカフェは年末30日まで営業している

クリスマスには時間を延長して夜11時まで営業する

ツリーの飾り付けを手伝った事もある

窓の外は段々と暗くなり 定休日の今頃は一緒だった筈なのに

そんな事を考えていると 無性に逢いたくなってきた

スマホを取り 電話しようと思った時 部屋のチャイムが鳴った

 はい とだけ答えると

 俺だよ と言った

ドアを開けるとちょっと照れくさそうに 彼が立っていた 

おかえりと言って中にいれた 一緒に暮らしている訳では無いが

いつもおかえりと言ってしまう 

雪の降る寒い夜には やはり人恋しくなるものだなと

そう思いながら 窓のカーテンを閉めた

彼と僕が出逢って二度目の冬の日の夕暮れ

 

 


酔いどれ烏の夢物語 恋

2022-12-29 10:48:03 | ポエム

             

          

最近、夜中に目が覚める いやな夢を見て目が覚める

時計を見ると決まって午前一時三十分 何かあった訳でもない

その時間に何か心当たりがある訳でもない しかしそれは続いた

幾日も幾日も それは続いた だからと言って眠れない訳でもなく

日常に支障をきたす訳でもないのであまり気にせずにいた

そんなある日、ホームで電車を待っていた時

向かいのホームに懐かしい顔を見た いや、似ていただけかも知れない

七年前の記憶が蘇る 俺が十七歳、彼が二十二歳の時の話だ

俺の通う高校に教育実習生徒してやって来た一人の大学生

物腰柔らかな口調、優しい眼差し、そのくせ凛とした態度

モデルの様な顔つき、身長は178センチ

当然女生徒からは羨望の眼差しを受け、男性徒からは嫉妬の眼差し

気づいているのかいないのか、彼は全く気にする風もなかった

 

ある日の下校時間、帰宅部の俺は真っすぐ校門に向かっていたが

いつもは静かな道場の方が、何やら騒がしかった

気になったので俺も行ってみることにした

そこは柔道場と隣接し、弓道場があるだけだ

行ってみると女生徒がひしめき合い悲鳴にも似た歓声が聞こえた

サッカー部や野球部でもあるまいし 何を騒いでいるんだ?

そして皆が注目する先に居たのは あの教育実習生だった

紺色の弓道着を着た彼は 凛とした表情で弓を構えた

彼が弓を射るまでのほんの数秒、あたりは静まり返った

そして彼の放った矢は真っすぐ、いやほんの少し弧を描いて

的の真ん中に的中した その瞬間怒涛のような歓声と拍手が沸き起こった

彼は美しかった その外見では無く 矢を射るその姿が

ドキドキしていた 自分でも驚くほどドキドキしていた

今にして思えばあれがときめくと言う事なのだと知った

 

その後すぐに教育実習を終えた彼は学校を去った

最終日、涙ながらに先生に群がる女生徒たちを尻目に

男子たちは遠巻きにその様子を見ていた 俺もその一人だ

だが、俺は校門を出る先生を追った ただ一言いたかった

かっこ良かったと あの弓道場で矢を放つ先生が…

間に合わないのは分かっていた それでも追いかけたかった

駆け上がったプラットホームには誰も居ない 筈だった

顔を上げると彼がいた ビックリしている俺にかまわず

ちょっと待ってね、今、思い出すからと笑った

そういえばマイペースだったなと思い出す頃

そうだ、黒崎君だ! まるでパズルが解けた時の様に

嬉しそうに俺の名を言った へえー 覚えてるんだ!

 

その後カフェでお茶を飲んだ やっぱりかっこいい

先生は今、仙台の高校の教師をしているらしい

弓道部の顧問も務めていると言っていた

よく俺の事覚えてましたね、と訊くと

印象に残ってる子は覚えてるよ、特に女の娘を泣かせる様な子は

そうだ思い出した! 昼休みに告られて断った女子が居た

そういえば午後の授業中 泣いていたっけ

あの夢はあの娘への罪悪感? それとも先生に再開する予知夢?

なんにせよもう夜中に目が覚める事は無くなった

今ならわかる気がする 恋ってやつは少々もどかしい

今じゃ先生からの連絡が待ち遠しい 週に一度は逢えるけど

黒崎修司 現在二十四歳 只今恋愛中


酔いどれ烏の夢物語 かぐや姫

2022-12-27 18:13:39 | ポエム

                               

 

星の綺麗な夜だった 人気のない公園のベンチに座り

彼は空を見上げていた 近づいて彼の目線を追った 

どうやら星ではなく月を見ている様だった

その眼差しは憂いを帯びた 少し大人っぽい瞳で

まるで 早く月に帰りたがっているかぐや姫のようだ

時計を見ると既に十時を廻っている 

見るからに高校生らしい服装に 通学用のバック

こんな時間に何してるの? もう帰ったほうがいい

俺の声に振り向いた彼は おじさん刑事か何か?と訊いた

危ないって、どんな? 彼はさもどうでもよさそうに訊いた

この公園、薄暗いからたまに危ない奴が出るんだ

危ない奴って? また興味なさそうに彼は訊いた

君みたいな若い子に危害を加えたり、悪い事に誘う奴!

ふーん。じゃあ帰るよ、またね、おじさん!

まったく可愛げの無いかぐや姫もいたもんだ!

 

翌日も仕事が長引き、会社を出たのは九時半を過ぎていた

仕方ない、またあの公園を通るか そうすれば少しは早く家に着く

歩きながらふと空を見た まさかまたあのかぐや姫は居ないよな

大抵の悪い予感は的中するもので やはりいた あのかぐや姫が

あのさ、昨日も言ったけど、ここ危ないから…

今頃 親が心配してるんじゃないのか?

親ねえ… 父さんは今出張中 母さんは半年前に出て行った

だから心配してる訳ないよ 俺は何て言って良いか解らなかった

聞きたくもない人様の家庭の事情に首を突っ込んだ事を後悔した

仕方なく彼の隣に腰を下ろし、さっきコンビニで買った

夜食のおにぎりを袋から出した 食うか?と訊くと

おじさんの分無くなるでしょ いいよ俺はと答えた

いいから食え、そう言って強引に彼の手におにぎりを渡した

俺も一つ取り出し、食べ始めた 冷たいままのおにぎりだ

温めて貰えば良かったな、と言うと 美味しいよと彼は笑った

 

その翌日は珍しく早くに仕事を終え、同僚と飲みに出た

ここの所寝不足だったせいか、酔いが回るのも早かった

悪い、俺今日はもう帰るから! そう言って居酒屋を出たのは

十一時近かった さすがに今日はもう帰っているだろうさ

だが、やはり かぐや姫はそこに居た バッグを枕に横たわって

眠っていたのだ 馬鹿か、お前は! 一気に酔いが冷めた

肩を揺さぶり起こすと あれ、今日は遅いんだねと

悪びれもせずに言った 待ってる人が居なくても家に帰れ!

うん、解ったよ そう言って再びかぐや姫は眠りについた

これじゃあ かぐや姫じゃなくて、眠り姫だろう

仕方なく負ぶって家まで連れて来た どうするんだ 俺⁈

簡単な朝食を作り彼を起こした お前も学校だろう

それ食って学校へ行け!遅刻しないか?

彼は最初不思議そうにしていたが、うん大丈夫だよと笑った

今にして思えば あれが決定打だったのかもしれない

 

かぐや姫はあれ以来、公園で月を眺める事は無くなったが

俺の安アパートに居座る事が多くなった 合鍵を渡したせいか

お互いに特に何かを求める訳でも無く ただ一緒に居た

そんなある日、俺に転勤の辞令が下った 先輩から聞いていた

入社三年をめどに一度は転勤の辞令が下る筈だと

どう切り出せば良いのか、だが彼の反応は意外だった

転勤先が北海道だと告げると 俺も行きたい!

目を輝かせてそう言った まて、俺にお前を養う余裕は無い!

大丈夫!俺も卒業したら働くから 良いでしょ、良いよね!

お前が父さんを説得できたならな! 俺は勘違いしていた

何だかんだ言っても、父親は彼の行く末を心配してるだろうと

しかし 彼の父親は本当に自分の事で忙しいらしく

息子の行く末には関心が無かったらしい

高校を卒業したらそっちの大学に通う事になりました

父が大学だけは出ておけというので そんなメールが春に届いた

 

やれやれ、とんだ出会いをしてしまったと思ったが

あの日の 君を思い出すとこんな出会いも悪くない

月を見ていた時の憂いとは裏腹な 何も興味がなさそうな目

そんな奴が興味どころか、今は俺を必要としている

時計を見た もう奴の乗った飛行機が到着する頃だ

俺もどうかしている 有給を休暇までとってまで

この千歳空港まで迎えに来たんだから

東京からの到着ゲートに居た俺の目に映ったのは

一回り大人らしく成長した 奴の姿だった

そう思ったのも束の間 顔いっぱいに笑顔をほころばせ

俺の胸に飛び込んで来た ああ、変わっていないな

あの時、あの公園で見た妖しくも危なげな顔

今すぐにでも月に帰りたいと願うかぐや姫のような瞳

だが、俺のかぐや姫は月よりこの地球を選んだらしい

ならば何か貢物を 最初にどこに行きたい?