夏祭り
もうすぐ夏祭りがやって来る
今年は二人で行きたいね
去年は君が熱をだして行けなかった
悔しがる君のために君の好きな
焼きトウモロコシを買いに行った
独りで歩く祭りの屋台は
なんだかとても寂しかった
だから今年は二人で歩きたい
もうすぐ夏祭りがやって来る
揃いの浴衣を着て行こう
仁平姿も君には似合いそうだ
一日目は露店を巡り遊んで食べて
きっと君はへたくそな射的をする
釣れそうで釣れない金魚
何処からか聞こえる祭り囃子
今年こそ君と歩きたい
もうすぐ夏祭りがやって来る
涼しげな風鈴の音も
季節が巡って街並みが変わっても
やはりこの風景は変わらない
三日目の祭りの夜は花火大会
人込みではぐれない様
君としっかりと手を繋ごう
誰かに連れて行かれない様に
もうすぐ夏祭りがやって来る
いつまで君と来られるのかな
焼きそばも焼き立てのタコ焼きも
ペロッと平らげてしまう
見上げる花火の音に紛れて
君が好きだと囁いた
聞こえる筈はないのに
君は僕の手をぎゅっと握った
終焉
もしも僕の人生が森の中を流れる川だとしたら
君は気まぐれな風に飛ばされてきた木葉だろうか
ゆっくりと大海に向って流れる川の上に
ひらりと舞い落ちてくるくると回りながら浮かぶ
何の変哲もない僕の人生に一片の小さな希望
それとも木々の隙間から時おり差し込む陽光
君はモノクロームの僕の心に色をつけてくれた
もしも君に出逢わなければどんな風に生きたかな
ただ毎日を同じように繰り返すつまらない人生
さしたる夢もなくただ凡庸に終焉を目指す
何かを求めることもなく何も失うこともない
そんな僕に君がくれた太陽のような眩しさ
本当は解っていた僕は心に蓋をしてしまった
あの日傷つくのが怖くて自分に嘘をついていた
もしも君を知らなければ僕は心を閉ざしたまま
感情すらも表せずに人形のように生きていた
君と出逢えてから季節さえも愛おしい
春の喜び、夏の暑さ、深け行く秋、冬の静寂
何もかも君が思い出させてくれたから
歩いて行ける君となら自分自身を認めよう
いつかたどり着く終焉まで君と手を繋いで行こう