酔いどれ烏の夢物語

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夕闇

2023-08-06 17:38:16 | 日記

    

                      夕闇

夕凪の海の上を まるで滑るように

数羽のカモメが飛んでいく

遠くの波打ち際にはしゃぐ子供たち

その少し後ろにいるのは両親だろうか

僕はただじっと まだ沈みきってはいない

オレンジ色の夕日を眺めていた

僕のほほをつたう涙が 足元に落ちる

解っていた事なのに 覚悟はしていた筈なのに

それでもどうしようもなく 涙があふれる

僕を受け止めてくれた ただ一人の理解者

ほかの人とは違う僕を そのままで良いと

大丈夫だよと 抱きしめてくれた人

 

時間がない事は 最初に聞いていた

それでも良いとそう思えた

短い時間でも一緒に居られることが

ただ嬉しくて ただ幸せで夢のようだった

僕はただ彼の 優しさに甘えていたかった

神様は僕の大切な人を取り上げた

口惜しさと悲しみと切なさとが

胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って

今は悲しくて どうすることも出来なくて

今だけは 泣いても許されるよね 

心の中で彼に訊いた きっと許してくれる

泣いている僕の姿が夕闇に消える時まで


酔いどれ烏の夢物語 死神

2023-05-04 00:40:36 | 日記

      

      

        死神

 

汝よ、そなたは何故に美しい瞳で見る

澄んだ瞳 薄紅の唇 栗色の柔らかな髪

汝よ、そなたは何故に私の邪魔をする

ただ美しく 美しく いればいいものを

そう言って彼は 女性の腕を掴み

持っていた大鎌を彼女の首にかけた

小さな芝居小屋で 僕は彼を知った

死神が命を奪いに行った家で

娘に恋をしてしまうという話だ

 

汝よ、その罪深い男を庇うな

その唇で 慈悲を 私に求めるな

汝よ、そなたの父親は罪深い

彼のセリフが 僕の心を 掴んでしまった

艶めいた黒髪 青白い肌

僕は彼に殺されても良い

いや彼に殺されたいのだ

別に死にたい訳では無い

只、死ぬ時は彼の手で死にたいと

 

呆れた、一目で恋に陥るなんて

後輩に頼まれて買ったチケット

まさか、そこで恋に堕ちるなんて

舞台後、声を掛けたのは 彼の方だった

あれから僕の中に 彼が居る

死神を演じた彼がいる

普段では 虫も殺さぬ様な彼が

舞台では どんな狂人にもなれる

ああ、芝居とは恐ろしい

 

彼は今、僕の家に居候している

お金が無い訳じゃ無い

彼が、一緒に居たいだけなんだと

二人で暮らす 楽しい日々を

僕は楽しんでいる 彼もまた

あの日思った彼への想い

叶えてはいけない想い

でも僕は何故か願ってしまう

この人の手で殺されたいと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酔いどれ烏の夢物語 冬の朝

2022-12-16 19:19:00 | 日記
    冬の朝

ある冬の朝 コーヒーを飲んでいると
俺、留学しようと思う と涙ぐんで
俺の目を見てあいつが言った
最近 何か悩んでるのは知っていた
あいつは音大の三年生で
いつかそんな事を言っていた
オーストラリアの大学に決めた
なら、頑張れよ
それ以外に言葉が見つからない
行かないでとは言える訳が無い

二月になり 空港へ向かう途中
必ず帰って来るから
それまで待っててくれる?
不安そうな顔をしてあいつが訊いた
そんなの当たり前だろう 
待つよ たった一年だろう?
だから安心して行ってこいよ
何度も何度も振り返り
あいつは旅立った
本当は寂しく無い訳が無い

あいつが居なくなって初めて
独りがこんなに寂しいと知った
あいつと暮らす前も独りだった
けれど寝る時感じる温かさも
ドライブしてる時の助手席も
空っぽだとそう感じた
たった一年のその長さを痛感した
留学してから時おり来るメール
コンクールに出たけど4位だった
みんな上手くてやばい!

写真のあいつは楽しそうだ
嬉しい様な 少し寂しい様な
それでもあいつを支えたい
もう少しで一年が過ぎようとしていた
あいつからメールが来た
こっちに来られる?一日二日でいいから
何かあったのか?大丈夫か?
俺はすぐに休みを取り 向かった
空港で迎えに来ていたあいつは
満面の笑みを浮かべ抱きついてきた

結婚しよう!俺たち結婚しようよ!
驚きと嬉しさで、唖然としている俺に
あのね、こっちで出来た友達が
最近元気が無いけどどうしたの?
そう訊くから、俺たちの事話したら
だったら結婚すればいいのに
そう言ったんだ だから結婚しよう
その日のうちに俺たちは結婚した
帰りの飛行機の中で思った
こんな簡単な事だったんだ

あいつはまだ向こうで頑張っている
だけど不思議と寂しくは無い
ある冬の朝 俺はそう思った





酔いどれ烏の夢物語 放課後

2022-12-12 16:47:59 | 日記

                                                      

                             やっぱり降りましたね! 公園の木もまるでクリスマスツリーみたいです。雪かきしているみ皆さま、お疲れ様です!

 こんばんは、karasuです。いいね!や応援ありがとうございます。正直、とっても嬉しいです‼

今日は早朝からの出勤だったので、もうのんびりとしています。皆様、風邪と怪我には気を付けて下さい。

 

 

              

             放課後

 

 ぼくが恋をしたのは二年前の高三の秋だった 放課後の音楽室

 聞こえてくる小気味よいメロディーに惹きつけられよう様に中に入った

 彼はとても楽しそうにギターを弾いていた 僕に気づき少し微笑んだ

 音楽は好き? 何か楽器は弾ける? そう聞かれて、ピアノなら少し

 と答えると 彼は眼を輝かせて 何かセッションしようよ! と言った

 

 できるかな?大丈夫! せっかくのピアノだしJAZZなんていいね!

 名前も知らない彼と僕とで ギターとピアノのセッションが始まった

 ほんの三十分ほどの短い でもとても楽しい時間だった

 その後は進学の準備とか説明会などに追われ 音楽室には行かなかった

 もちろん彼と話すこともなく卒業した あの時の胸の高鳴りは何だったのか

 

 あれから二年が過ぎ 今なら解る 僕は彼の弾くギターではなく

 ギターを弾いている彼の姿に魅了されていたのだ

 あの時僕は恋に堕ちた だってほら 今笑顔で近づいてくる彼の

 ギターを背負って歩いてくる姿が 悔しいくらいにカッコイイと思うから

 あの二年前の放課後の音楽室で 僕は彼に恋をした

 


酔いどれ烏の夢物語 君を

2022-12-10 23:11:59 | 日記

                     『君を』            

君の声が聞こえる 僕を呼ぶ君の声 

少しだけ高くて 少しだけ掠れた君の声

こんな天気の良い秋の日には

こうして二人で手を繋いで公園を散歩したね

僕の前を歩く君の柔らかな髪が

優しい日差しに透けて キラキラと

紅葉した木々に溶け込んで見えた

君の声が聞こえる 僕の名を呼ぶ君の声

遠い空の彼方から 君の声が聞こえる                 

                         

窓に映る君の泣き顔が見える

少し俯きながら 唇を嚙み締める君の顔

窓の外は雨 色とりどりの傘が行き交う

些細な事で喧嘩になってよく君を泣かせたね

冷たい雨がやがて雪に変わるこんな寒い夜は

二人で毛布に包まってミルクティーを飲んだ

ラジオから流れるラブソングを聴きながら

涙ぐんで僕を見上げる 君の顔が見える

唇に触れると頬を染める 愛しい君の顔

 

君の声が聞こえる もう何処にも居ない君の

大好きだった君の声が聞こえる

逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて

もうすぐ君の好きな春が来るのに

僕の傍に君は居ない もうすぐ桜も咲くのに

 

逢いに行くよ君の居る空の彼方へ

そしたら二人でワインでも飲もう

何時もの様に 手を繋いでくれるかな

酔っぱらった僕が 雲の上から落ちない様に

 

もうすぐ君に逢いに行くよ

君を見つけたら二度と離さない

愛してる誰よりも 愛してる君を