酔いどれ烏の夢物語

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酔いどれ烏の夢物語 冬の朝

2022-12-16 19:19:00 | 日記
    冬の朝

ある冬の朝 コーヒーを飲んでいると
俺、留学しようと思う と涙ぐんで
俺の目を見てあいつが言った
最近 何か悩んでるのは知っていた
あいつは音大の三年生で
いつかそんな事を言っていた
オーストラリアの大学に決めた
なら、頑張れよ
それ以外に言葉が見つからない
行かないでとは言える訳が無い

二月になり 空港へ向かう途中
必ず帰って来るから
それまで待っててくれる?
不安そうな顔をしてあいつが訊いた
そんなの当たり前だろう 
待つよ たった一年だろう?
だから安心して行ってこいよ
何度も何度も振り返り
あいつは旅立った
本当は寂しく無い訳が無い

あいつが居なくなって初めて
独りがこんなに寂しいと知った
あいつと暮らす前も独りだった
けれど寝る時感じる温かさも
ドライブしてる時の助手席も
空っぽだとそう感じた
たった一年のその長さを痛感した
留学してから時おり来るメール
コンクールに出たけど4位だった
みんな上手くてやばい!

写真のあいつは楽しそうだ
嬉しい様な 少し寂しい様な
それでもあいつを支えたい
もう少しで一年が過ぎようとしていた
あいつからメールが来た
こっちに来られる?一日二日でいいから
何かあったのか?大丈夫か?
俺はすぐに休みを取り 向かった
空港で迎えに来ていたあいつは
満面の笑みを浮かべ抱きついてきた

結婚しよう!俺たち結婚しようよ!
驚きと嬉しさで、唖然としている俺に
あのね、こっちで出来た友達が
最近元気が無いけどどうしたの?
そう訊くから、俺たちの事話したら
だったら結婚すればいいのに
そう言ったんだ だから結婚しよう
その日のうちに俺たちは結婚した
帰りの飛行機の中で思った
こんな簡単な事だったんだ

あいつはまだ向こうで頑張っている
だけど不思議と寂しくは無い
ある冬の朝 俺はそう思った