石屋のカミさん日記

仕事に趣味に 好奇心の赴くまま楽しいこと追求します!

恋の蛍

2009-12-08 21:06:30 | Weblog
松本侑子「恋の蛍  山崎富栄と太宰治」を図書館で借りて読んだ。



生誕100年ということで(今年?来年?わからない)
太宰関係の本や映画が目立つ。

高校生のときに「人間失格」を読んで
「何という暗い人間!!ネガティヴな生き方!!」と
嫌悪感をもち 以来、読んだことがない。
私は体育会系で超楽天的、ポジティブ人間だったから。

太宰治本人にもあまり興味もなく
何回か自殺や心中を試み、最終的に酒場の女と情死した作家だと
認識していた。

この本を手にとったのは 太宰本人でなく
情死の相手、山崎富栄に焦点をあてたものだったからだ。

山崎富栄という名前も初めて聞いた。

酒場の自堕落な女性を想像していたのに
本当の山崎富栄は 日本初の美容学校創立者の令嬢で
三井物産商社マンの戦争未亡人だったのだ。

富栄の生まれたところから話が始まる。
大正デモクラシーの民主化と共に女性の洋装化が発展し
富栄の両親は 日本で初めて美容学校・洋裁学校を設立する。
多いときで年間800名の修了生が全国へと巣立った。

一人娘の冨栄は 跡継ぎとして父親から英才教育を受け
美容・洋裁のみならず、文学・心理学・経済学・
英語・フランス語・ロシア語を学んだ。
山野愛子や宇野千代が活躍したのと同じ頃だ。

こんなお嬢様・商社マンの奥様だった冨栄に
関東大震災・戦争・東京大空襲・終戦・・・と
容赦なく悲劇が襲いかかる。
すべてを失った冨栄と両親

傷心の冨栄の前にあらわれたのが「死の美学」を追い求める太宰治だった。

10歳年上の天才作家に身も心も骨抜きにされ
後世に残る名作を執筆する太宰に献身的に仕えるのだ。

太宰には奥さんと3人の子供がいる。
そのほかに愛人静子と、その愛人に産ませた子供
そして冨栄
人にふるまう酒代・飲食代で富栄の貯金も使い果たし
そんな男のひとに一緒に死んでいくことまで
仕えてしまうなんて。

奥さんも静子も冨栄も 女やお金や人生にだらしない太宰に
なんでこんなに溺れているんだろう
天才なんだろうなと思う。
女性を惹きつけてやまない天才的な魅力があるんじゃないだろうか

いろいろ太宰作品を読んでみたくなった。

この本では、冨栄のお父さんの人生も感慨深いものがあって
ところどころで涙が出てくる。
手塩にかけて育てた最愛の娘を 戦争や天災で傷つけられ
妻子ある作家に黄泉の国へ連れていかれた無念が
痛いくらい伝わってくる。

良い本だった。
私の拙い説明では 伝わらないので
生誕100年ということで 皆さま読んでみてください



コメント (2)
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