KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

全日本大学女子駅伝雑感

2009年11月12日 | 駅伝時評
かつては、大阪で開催されていた全日本大学女子駅伝が、開催地を仙台に移し、主催も讀賣新聞社に代わってから今回で5回目となる。朝日放送が中継していた時代には、男子の全日本大学駅伝、東京国際女子マラソン、福岡国際マラソンとともに「四大ロードレース」とテレビ朝日が名づけてPRしていたが、僕はあまり感心していなかった。

「フクオカを学生さんの駅伝大会と同列に扱うんじゃねえ!」
と文句を言っていたのだが、男子に比べると女子は高校駅伝の強豪ランナーの大学進学率が低く、
「有森裕子や高橋尚子も走った大会」
とは言うものの、あまり「登竜門」というイメージは無かった。大学出の女子マラソンメダリストでも、山下佐知子や土佐礼子はこの大会に出場していないからだ。

僕自身、この大会に関心を持ち始めたのは、京都産業大が初優勝した'94年頃だったが、多大な期待をかけた同校のエースが「ある事情」で陸上界を去ってしまったことに大いに失望してしまった。毎週のようにマラソンや駅伝の中継がある時期だが、この大会は録画して保存することはこれまでしてこなかった。

そんなわけで、大阪での大会終了、朝日新聞社の主催からの撤退というニュースにもさほど驚きを感じなかったくらいだ。

主催と会場が変り、2006年から全国中継が復活したが、さすがは箱根駅伝の主催社だ。「男は箱根、女は仙台」のコピーで大会を盛り上げ、箱根の中継で培った技術を駆使して、大阪時代よりも見応えのあるレースを演出してみせた。特に、
優勝争いのみならず、「シード権争い」にもスポットを当て、6位以内の順位争いもきちんと見せてくれる辺りが面白い。

さらには、女子ランナーの進学率も高まり、大会のレベルも上がった。卒業後も実業団で活躍するランナーも増えてきた。今年夏の世界選手権のマラソン代表のうち、赤羽有紀子(城西大卒)、藤永佳子(筑波大)、加納由理(立命館大卒)はこの大会の優勝メンバーである。彼女たちは皆、大阪時代に活躍したランナーだが、「杜の都」も世界への通過点に成り得る大会になった。

仙台には学生時代に一度だけ訪れたことがある。その時は気づかなかったがこの街は市内の中心部に坂道が多い。高速コースと言われている大阪国際女子マラソンのコースを走っていた大阪に比べるとかなり「苛酷」になったと言われるが、仙台ハーフマラソンに出場した、僕の知りあいの女性ランナー(サブ40の記録を持っている)が、大会で知り合った女子学生ランナーから聞いた話では、
「仙台に移って良かった。」
という声が多いようである。なんといっても、
「大会の運営が良くなった。」
というのである。僕がこれまで出た大会で運営の良さを実感したのは京都ハーフと福知山マラソンだが、宮城も京都も高校駅伝の優勝校を生み出した大会である。やはり、駅伝の強い県の陸協は運営力が高く、地元の住民の理解度も高いのだろう。中学駅伝の県大会の最中、主催する新聞社とラジオ中継を担当する放送局に、
「道路が混雑してかなわん。なんとかしろ。」
という電話がひっきりなしに鳴り響くような県とは違うのだろう。(知り合いの地元局のアナウンサーか聞いた話である。)

そして、この大会が身近になった最大の理由は、前回書いた通り。松山大学が出場するようになったせいである。

誰か1人でも故障をすれば即、欠場という6人ギリギリの陣容ながら、無事に大会当日を迎えた松大の駅伝チーム。コーチの村井さんからは
「1区の田村は区間賞を狙わせる」というメールを貰っていたし、彼女がそれだけの実力を持っているランナーだと認識していた。あるいは、昨年の大会で1区で区間賞を獲った関西大学の松山祥子のサプライズの再来を期待した。

スタートから飛び出したのは佛教大の石橋麻衣。4連勝を目指した立命館を抑えて区間賞を獲得、その勢いを維持し続け、大会新記録で初優勝に輝いた。立命館は、過去3大会連続区間新記録更新のスーパーエース、小島一恵が今年も3区で区間新記録を獲得するも及ばなかった。

佛教大と立命館という「京都ダービー」という結果になったが敗れた立命館も最も悪い区間順位でも4区での3位、小島以外の選手は全て区間2位だった。お気づきのように、女子の大学駅伝は男子とは勢力図が全く異なり「西高東低」である。京都だけでこの2強の他にも、過去には4連勝の実績のある京都産業大が6位に入賞した。昨年は今回のゲスト解説者である、3000mSCの五輪代表ランナーの早狩実紀(同志社大卒)の現在の職場である京都光華女子大も出場していた。流石は女子駅伝発祥の地である。

一方、関東勢のトップは城西国際大の4位。1992年に開校した、城西大の姉妹校だが、監督が大塚正美氏、と言えば箱根駅伝をラジオ中継の時代から聞いていたファンには懐かしい名前だろう。「花の2区」の元区間記録保持者で、日本体育大では谷口浩美氏と同期だった。東京農大、順天堂大、日本大と箱根駅伝の常連校も上位に入ったが、男子同様にケニア人留学生を擁する日本大が意外と伸びず、12位に終わる。城西大はもともと、女子駅伝部の活躍の後、男子部を創設した珍しいケースだが、男女ともに全日本に出てくる大学というのは意外と少ない。大学としては、箱根だけで精一杯ということなのだろうか。

さて、我が松山大。1区で1年生田村が区間賞というサプライズは逃したものの、トップとは9秒差の3位で2区につなぐ。それだけでも中継アナや解説の金哲彦氏らには十分「サプライズ」だったようだ。さらに昨年に続いて2区を担った、唯一の愛媛出身者である矢野麻利亜が田村の順位を守り通したのだ!

3区はキャプテンの國仙幸子。創設時のメンバーとして、松大女子駅伝部を支えてきた。しかしながら今シーズンは不調だと聞いていたが結果として順位を9位にまで下げてしまった。代わりのいないチーム事情を思えば、彼女にとってはつらかったに違いない。タスキを渡した後、その場で倒れこみ、自力では立ち上がれなかった。泣くな!國仙!

ゴールは11位。10位以内にも入れるチャンスはあったが、それでも昨年より7位も順位を上げた。そして、この順位は12月23日につくばで開催される選抜大学女子駅伝の出場権を得られる順位だったのだ。2年前に國仙が中四国学連選抜の一員として出場して以来、ついに単独での出場権を得た。それによって、中四国学連は、松大以外の大学のメンバーでチームを結成することとなり、他校のランナーに全日本の舞台を経験できるチャンスが増えたことになる。これは中四国のレベル向上にもつながるだろう。

つくばでは、是非、國仙の笑顔を見たいと思う。



コメントを投稿