またしても、「嬉しい誤算」という言葉を使ってしまう結果になったと思う。予想外のランナーが活躍したというだけでなく、東京マラソンという大会の印象自体が一変した。
ロンドンやニューヨークなどが長い時間をかけて築き上げた「3万人規模のマラソン」をいきなり開催しようという姿勢にかなり無理を感じたし、氷雨の中を走るランナーたちの姿には羨望の念を抱けなかったし、おりしも東京都知事選挙直前だっただけに、暴挙だ愚行だと現職都知事に対する批判材料のダシにされるのは、いかにあの都知事の国会議員時代からの言動を支持できなかった僕にも心苦しかった。
悪天候のせいか、優勝争いも25km過ぎてから独走したダニエル・ジェンガの優勝タイムも2時間9分台とやや大味なレース、という印象を拭えなかった。いっそ、選考レースから切り離した方がいいのではないかと思っていた。
やはり、五輪代表選考レースというのは違う。
気温は低いものの好天に恵まれ、ペースメイカーも1km3分きっちりで引っ張り、20人以上のランナーが集団を形成する。昨年は、スタート前のトップランナーに対する配慮も足りなかったという声も関係者から上がっていたようだが、今回は選考レースとしても、「名勝負」が見られた。
前半、中間点の手前までは、ランナーたちは反対車線を走っているが、僕は東京の地理には詳しくないのだが、どうしてもそうさせる必要があるのだろうか?給水所が右側に置かれているために戸惑うランナーたちの姿を見て、
「欧米か?」
とツッコミたくなった。左側通行の国のマラソンでは、給水テーブルは右手で取るのが常識なのだが、そんなところまでマネしなくてもと思ったのだ。
2時間6分台も見込めるハイペースの集団から次々とランナーが落ちていくが、12年前の東京でアトランタ五輪代表の座をつかんだ実井謙二郎が20kmまでついていたのが驚異的だった。
30km過ぎても、JR東日本のグリーンのランシャツのランナーがついていた。頑張るなあくらいには思っていた。最初に仕掛けたのは昨年3位の入船敏。ぴたりとついたのはジェンガ。しかし集団から抜け出すのは失敗した。32kmで昨年の世界選手権で銅メダルのヴィクトル・ロスリンが飛び出す。そこで、諏訪利成とジェンガが遅れ始める。ロスリンについたのは、ジェンガの仙台育英高校の後輩、ジュリアス・ギタヒとJR東日本の藤原新。おいおい、これはもしかして。入船も梅木蔵雄もついていけない。
35km過ぎの難所、佃大橋でロスリンがスパート。藤原も先頭から離れていく。ああ、ここまでか。いや、ここからがドラマチックな展開となった。一度は引き離されたギタヒを捕らえて前へ出る。38km過ぎて藤原の走りのバランスが崩れた。明らかに足にきている。こういう真冬の晴れた、乾いた空気の日のマラソンで、ハイペースで走るとケイレンに見舞われることがよくある。初めて僕が愛媛マラソンを完走した時もそうだった。
立ち止まってもおかしくなかった。すぐ後ろにはギタヒがいる。後方からは諏訪が梅木、入船を捕らえ4位に上がってきた。2年前の福岡の時を思わせる。そんな状況で藤原は実に冷静だった。立ち止まらずにピッチのリズムを変えることでケイレンを封じ込めた。一歩誤れば、走れなくなっていてもおかしくなかった。まして、40kmではスペシャルドリンクの補給にも失敗している。精神的に動揺してもおかしくない。
藤原を捕らえていれば、実績的には申し分のない諏訪が五輪代表の有力候補になっていただろう。しかし、藤原の勝利への欲求が諏訪に勝っていた。そう思えるような終盤の藤原だった。ギタヒも捕らえることができなかった。
ロスリンは圧倒的だった。終盤は独走し2時間7分23秒でゴール。耐暑レースも、冬場の高速レースにも強い欧州のランナーと言えば、マルティン・フィスやステファノ・バルディーニらと重なる。
創部5年目の新興チームであるJR東日本陸上競技部。今年のニューイヤー駅伝では15位と過去最高の成績を残し、藤原も13人抜きの快走を見せていた。箱根駅伝で活躍したランナーが部員の大半を占めるようになっていたが、ここまで早くマラソンで結果を残してみせるとは。監督はびわ湖マラソンの優勝歴もある岩瀬哲治氏、ヘッドコーチは世界選手権入賞歴もある打越忠夫氏と実績を残しているランナーが指導者になっている。今春には今年の箱根駅伝で往路優勝のゴールテープを切った駒野亮太が入社する予定だ。
トップ10のうち、初マラソンの堀端宏行を除いて6人が自己記録を更新した。気候条件とペースメイカーの技量次第では高速コースとなり得るコースであることが証明された。好記録ラッシュを生んだのは、沿道のギャラリーと反対車線のランナーたちからの声援の力もあるだろう。そう思ってみると、上位に入賞したのは諏訪に入船、梅木に小林誠治、高塚和利。ベルリンやシカゴ、ロンドンなどの海外都市マラソンへの出場歴のあるベテランが揃った。
来年は3月に移行することが決まっているが、世界選手権ベルリン大会の選考レースとして、東京を選ぶランナーも増えそうだ。一般のランナーたちの応募も増えるだろう。僕も来年はエントリーしてみようかと思っている。トイレに行くのに行列ができるような大会は好きではないのだけど。
ロスリンのスパートの瞬間を映し逃すチョンボは減点ものだが、日テレの中継は昨年のフジの中継よりも良かった。箱根駅伝中継でおなじみの碓井哲雄さんを加えていたことで、瀬古利彦さんの「暴走」にブレーキがかかっていたのかもしれない(笑)。
午後からの中継は、局の女子アナたちばかり映していたことを週刊誌では批判していたが、それは関東ローカルのみではなかったのではないか?少なくとも、僕の住む愛媛では、読売テレビの大人気番組「そこまで言って委員会」等、通常の番組を放映していた。週刊文春で「私の嫌いな県民アンケート」という企画で、東京人の嫌いな部分として、
「東京の人間しか知らない地名を、お前ら知らないの、と言わんばかりに話題にする。」
ところを挙げていたが、僕も東京のお笑い芸人が、東京の人間にしかわからないようなテレビ等の話題を全国ネットの番組でネタにするのが嫌いだった。文春さんも新潮さんも、全国で売られているんだから東京ローカル番組のことなんかネタにすんなよ。
しかし、女子アナがフルマラソンを7時間以内でゴールできるのを見てしまった人たちは、100kmを24時間もかけて走るのは、大したことではないと気づいてしまったのではないか?どうでもいいけどね。
ロンドンやニューヨークなどが長い時間をかけて築き上げた「3万人規模のマラソン」をいきなり開催しようという姿勢にかなり無理を感じたし、氷雨の中を走るランナーたちの姿には羨望の念を抱けなかったし、おりしも東京都知事選挙直前だっただけに、暴挙だ愚行だと現職都知事に対する批判材料のダシにされるのは、いかにあの都知事の国会議員時代からの言動を支持できなかった僕にも心苦しかった。
悪天候のせいか、優勝争いも25km過ぎてから独走したダニエル・ジェンガの優勝タイムも2時間9分台とやや大味なレース、という印象を拭えなかった。いっそ、選考レースから切り離した方がいいのではないかと思っていた。
やはり、五輪代表選考レースというのは違う。
気温は低いものの好天に恵まれ、ペースメイカーも1km3分きっちりで引っ張り、20人以上のランナーが集団を形成する。昨年は、スタート前のトップランナーに対する配慮も足りなかったという声も関係者から上がっていたようだが、今回は選考レースとしても、「名勝負」が見られた。
前半、中間点の手前までは、ランナーたちは反対車線を走っているが、僕は東京の地理には詳しくないのだが、どうしてもそうさせる必要があるのだろうか?給水所が右側に置かれているために戸惑うランナーたちの姿を見て、
「欧米か?」
とツッコミたくなった。左側通行の国のマラソンでは、給水テーブルは右手で取るのが常識なのだが、そんなところまでマネしなくてもと思ったのだ。
2時間6分台も見込めるハイペースの集団から次々とランナーが落ちていくが、12年前の東京でアトランタ五輪代表の座をつかんだ実井謙二郎が20kmまでついていたのが驚異的だった。
30km過ぎても、JR東日本のグリーンのランシャツのランナーがついていた。頑張るなあくらいには思っていた。最初に仕掛けたのは昨年3位の入船敏。ぴたりとついたのはジェンガ。しかし集団から抜け出すのは失敗した。32kmで昨年の世界選手権で銅メダルのヴィクトル・ロスリンが飛び出す。そこで、諏訪利成とジェンガが遅れ始める。ロスリンについたのは、ジェンガの仙台育英高校の後輩、ジュリアス・ギタヒとJR東日本の藤原新。おいおい、これはもしかして。入船も梅木蔵雄もついていけない。
35km過ぎの難所、佃大橋でロスリンがスパート。藤原も先頭から離れていく。ああ、ここまでか。いや、ここからがドラマチックな展開となった。一度は引き離されたギタヒを捕らえて前へ出る。38km過ぎて藤原の走りのバランスが崩れた。明らかに足にきている。こういう真冬の晴れた、乾いた空気の日のマラソンで、ハイペースで走るとケイレンに見舞われることがよくある。初めて僕が愛媛マラソンを完走した時もそうだった。
立ち止まってもおかしくなかった。すぐ後ろにはギタヒがいる。後方からは諏訪が梅木、入船を捕らえ4位に上がってきた。2年前の福岡の時を思わせる。そんな状況で藤原は実に冷静だった。立ち止まらずにピッチのリズムを変えることでケイレンを封じ込めた。一歩誤れば、走れなくなっていてもおかしくなかった。まして、40kmではスペシャルドリンクの補給にも失敗している。精神的に動揺してもおかしくない。
藤原を捕らえていれば、実績的には申し分のない諏訪が五輪代表の有力候補になっていただろう。しかし、藤原の勝利への欲求が諏訪に勝っていた。そう思えるような終盤の藤原だった。ギタヒも捕らえることができなかった。
ロスリンは圧倒的だった。終盤は独走し2時間7分23秒でゴール。耐暑レースも、冬場の高速レースにも強い欧州のランナーと言えば、マルティン・フィスやステファノ・バルディーニらと重なる。
創部5年目の新興チームであるJR東日本陸上競技部。今年のニューイヤー駅伝では15位と過去最高の成績を残し、藤原も13人抜きの快走を見せていた。箱根駅伝で活躍したランナーが部員の大半を占めるようになっていたが、ここまで早くマラソンで結果を残してみせるとは。監督はびわ湖マラソンの優勝歴もある岩瀬哲治氏、ヘッドコーチは世界選手権入賞歴もある打越忠夫氏と実績を残しているランナーが指導者になっている。今春には今年の箱根駅伝で往路優勝のゴールテープを切った駒野亮太が入社する予定だ。
トップ10のうち、初マラソンの堀端宏行を除いて6人が自己記録を更新した。気候条件とペースメイカーの技量次第では高速コースとなり得るコースであることが証明された。好記録ラッシュを生んだのは、沿道のギャラリーと反対車線のランナーたちからの声援の力もあるだろう。そう思ってみると、上位に入賞したのは諏訪に入船、梅木に小林誠治、高塚和利。ベルリンやシカゴ、ロンドンなどの海外都市マラソンへの出場歴のあるベテランが揃った。
来年は3月に移行することが決まっているが、世界選手権ベルリン大会の選考レースとして、東京を選ぶランナーも増えそうだ。一般のランナーたちの応募も増えるだろう。僕も来年はエントリーしてみようかと思っている。トイレに行くのに行列ができるような大会は好きではないのだけど。
ロスリンのスパートの瞬間を映し逃すチョンボは減点ものだが、日テレの中継は昨年のフジの中継よりも良かった。箱根駅伝中継でおなじみの碓井哲雄さんを加えていたことで、瀬古利彦さんの「暴走」にブレーキがかかっていたのかもしれない(笑)。
午後からの中継は、局の女子アナたちばかり映していたことを週刊誌では批判していたが、それは関東ローカルのみではなかったのではないか?少なくとも、僕の住む愛媛では、読売テレビの大人気番組「そこまで言って委員会」等、通常の番組を放映していた。週刊文春で「私の嫌いな県民アンケート」という企画で、東京人の嫌いな部分として、
「東京の人間しか知らない地名を、お前ら知らないの、と言わんばかりに話題にする。」
ところを挙げていたが、僕も東京のお笑い芸人が、東京の人間にしかわからないようなテレビ等の話題を全国ネットの番組でネタにするのが嫌いだった。文春さんも新潮さんも、全国で売られているんだから東京ローカル番組のことなんかネタにすんなよ。
しかし、女子アナがフルマラソンを7時間以内でゴールできるのを見てしまった人たちは、100kmを24時間もかけて走るのは、大したことではないと気づいてしまったのではないか?どうでもいいけどね。
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