goo blog サービス終了のお知らせ 

鴨頭の掲示板

日本史学関係の個人的な備忘録として使用します。

【受贈】 岡本健一郎「対馬藩における軍制と沿岸警備」(長崎歴史文化博物館『研究紀要』第19号、2025年3月)

2025年04月14日 19時15分52秒 | いち研究者としての日記
岡本健一郎さんより標記論文の抜刷1冊を私にも贈ってくださりました。ありがとうございます。
江戸時代いわゆる「四つの口」の1つを担いつつ、その前半期より十万石格並への家格上昇を目指した対馬藩について、17世紀後半~18世紀前半期に直面した「唐船打ち払い問題」への対応をとおし、長崎警備と連動した沿岸防備を重視していく流れを説明しました。
ひととおり読み関心をもったのは、論文に登場する「唐船」「異国船」「沿岸警備」3つの近世史用語をいかに使い分けるかです。うち「唐船」は当時、単に中国船あるいは中国製の船ばかりでなく、外国船自体を指して使う場合もあったので(唐船に乗り来日した外国人を指す「唐人」についても然り)、その史実が論述の疑問点を生んでいます。具体的には、論文の中核部分、第3章について章題を「幕府の唐船対策への対応」(掲載誌62頁)とし、岡本さんが読んだ史料に出てくる「唐船」の問題に注目したのに対し「おわりに」では「沿岸警備」や「享保期以降に異国船の脅威は…」(掲載誌68頁)などと、注目する用語が変わっています。しかしながら、これは有名な史実ですが、この論文で分析対象とした期間の延長線上にある文政8年(1825)「異国船打払令」を改めて読めば……
「一體いきりすニ不限、南蠻、西洋之儀は、御制禁邪教之國ニ候間」と、打ち払う理由を述べる箇所より「若押て致上陸候ハゝ(マヽ)、搦捕、又は打留候ても不苦候」と、打ち払い対象が上陸した場合の対処方法まで示すうえで、通達の最終部分につき「無二念、打拂を心掛、圖を不失様取計候處、専要之事候條、無油斷可被申付候」としつつ「尤、朝鮮、琉球なとハ船形人物も可相分候得共、阿蘭陀船は見わけも相成兼可申」と、打払対象外の船籍にも言及しているのです[脚註]。
すなわち「唐」の国の船と、それら以外の国の船とに区別がつけられているのです。ならば、論文で提起した、対馬藩における「唐船打ち払い」とはどう理解すればよいのでしょうか。
おそらく岡本さんが研究された打ち払い対象の「唐船」と、のちの幕府通達にある「唐」の船とは別ものと思われるので、論文中でその用語の整理を施されれば、読者は対象時期のあとの歴史まで見とおしやすくなるのではないかと考えます。

 [註]
・『御觸書天保集成』下(岩波書店、1941年)858~859頁(史料番号:6541)
・鴨頭俊宏《歴史教育》「近世史用語『異国船』をいかに教えるか」『山口県地方史研究』第129号(2021年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【備忘】 放送大学 広島学習センター教員懇談会

2025年04月14日 12時15分06秒 | いち非常勤講師としての日記
今年度より本職の兼業で客員准教授としてお世話になる放送大学 広島学習センターは広島大学東千田キャンパス(広島市)のなかにあるのですが、ここで開かれる教員懇談会に初めて臨みました。
懇談会では、出席者間で自己紹介を交わすとともに、年間のスケジュールや職務につき説明を受けています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする