鴨頭の掲示板

日本史学関係の個人的な備忘録として使用します。

【受贈】 吉田智史「朝鮮通信使の通航における宰判の役割―宝暦通信使の都濃宰判を中心として―」

2016年07月02日 17時58分13秒 | いち研究者としての日記

吉田智史先生より、標記論文(『山口県地方史研究』第115号、2016年6月)の抜刷を1冊、私にも贈っていただきました。ありがとうございます。

 

江戸時代に朝鮮国より江戸へ向かう通信使への迎接について、当時萩藩(長州藩)領だった周防国都濃宰判(現在は山口県周南市域。宰判〔さいばん〕とは、古代律令制以来の郡を基準に設けられた、萩藩独特の行政単位)を素材にしつつ、宰判が果たす役割を説明しようとしたものです。

私個人的に興味深く感じたのは、通信使の接近にあたり領内各拠点間の早急な連絡で使用された「狼煙」の問題です。私が平成26年(2014)に出版した著書でも、その問題に言及しました。著書では、実際に迎接の役割を果たす立場の側から、狼煙は不具合なことが多いため別の伝達手段にさせてほしい旨、藩庁に上申していると書きました。伊予国松山藩領におけるこの場合に対して萩藩では、狼煙に要した経費は藩庁から支給されず、そのことを承知で地域住民が狼煙を使用したというのです。

狼煙は、公的な情報ネットワークから近世的な支配関係の本質を見とおすうえで重要な切り口になりうることを、改めて考えさせられました。

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