鴨頭の掲示板

日本史学関係の個人的な備忘録として使用します。

【読了】 寺島宏貴「19世紀の旅日記―『近藤家文書』を素材に―」(2015年)

2015年06月28日 11時17分23秒 | いち研究者としての日記

『東西南北―和光大学総合文化研究所年報―』という報告書に収録されている標記の論文を読みました。

研究対象である近藤家とは、岡山県玉野市域にあって明治初期より醤油醸造業を主業としつつ土地集積もおこないながら財をきずいた家です。

論文では、この古文書史料の解題を軸としつつ、当主の旅日記19世紀分(江戸時代後期~明治時代)に着目し、その中身を分析しています。

そして結論部分では、このような家にとって旅は商業活動であり、販路・経営規模の拡大や価格決定などの意味合いがあると、指摘しました。すなわち、19世紀民間人の旅には商業ネットワークの意味合いもあったことを提起する論文であり、私が取り組んでいる江戸幕府役人など公用通行の情報ネットワークを分析する研究とは対を為すものだといえましょう。

 ※論文の研究史整理部分に設けられた脚註の一つで、私が2014年に出版した単著を取りあげてくれています。管見の限り、多分この論文が、新刊紹介・書評を除く学術論文で初めて私の単著を取りあげてくれた第1号だと思います。

今後は、19世紀後半よりメディア・通信システムの整備が進んでいくので、時代が進むにつれこれらの整備と旅の意味との相関性がどう変化するのかが、課題となってくるのではないでしょうか。

 

なお、この論文はPDF形式でネット上にて、無料閲覧できるようになっています。

 ↓↓↓ [論文URL]

http://www.wako.ac.jp/_static/uploads/contents/managed_html_file.name.88796573ab9fae83.3032382d3035312de69785e697a5e8a898502de5afbae5b3b62de69c80e7b582572e706466/028-051-%E6%97%85%E6%97%A5%E8%A8%98P-%E5%AF%BA%E5%B3%B6-%E6%9C%80%E7%B5%82W.pdf#search='%E9%B4%A8%E9%A0%AD%E4%BF%8A%E5%AE%8F'

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【業績】 鴨頭俊宏《新刊紹介》「富海史談会編『大坂通いで活躍した飛脚船・富海飛船の歴史』」

2015年06月25日 01時22分52秒 | いち研究者としての日記

標記新刊(2014年5月刊行、A4判ソフトカバー、横書き、63ページ)の紹介記事を掲載する山口県地方史学会『山口県地方史研究』第113号(2015年6月)が発行されました。

標題にある「富海飛船」の富海は、現山口県防府市の地名です。JR山陽本線の駅名にもあります。飛船については、快速の連絡・通信船として一般的には「ひせん」と読みますけど、地元で呼称として多く用いられていたとして「とびふね」と、定められています。

 ※編者である富海史談会のHPは、

http://blog.canpan.info/tonomishidankai/

 

近年、インターネットで研究論著を検索するシステムが整備され、研究者は、取り組むテーマの研究史を画面上で容易に調べられるようになりました。その便利さが増すに従い、一方で高まるのは、各地方の郷土史研究会などの重要な発表論著を見落としてしまう危険性です。本稿で紹介した図書の場合は、正式な出版物として国立国会図書館などの蔵書検索データに収録されております。しかし、まだまだ多くの郷土史研究に関する論著は、こうしたインターネット蔵書検索システムに収録されていないのが実情なゆえです。

会誌わずか2ページ分の紹介文ですが、そのなかには、便利さに流されずコツコツと足で調べる姿勢の大切さを、改めて籠めています。

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【受贈】 福山市史編さん委員会編『福山市史』近代現代資料編Ⅲ 教育・文化

2015年06月24日 11時53分38秒 | いち研究者としての日記

福山市の市史編さん室より、標記の史資料集1冊(発行日:2015年3月31日、B5判800ページ、価格3,500円)を贈っていただきました。ありがとうございます。

 

広島県福山市における明治初期~平成15年(2003)間の教育史関連史資料を編集し、年代順に収録されています。私自身は、調査員の一人として登録されておりました。

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【業績】 鴨頭俊宏《各地のフィールドから》「近世地域社会史研究における『大山祇神社文書』再検討の取り組み」

2015年06月22日 17時27分04秒 | いち研究者としての日記

標記の小論文を掲載する中国四国歴史学地理学協会『年報』第11号(2014年度)が発行されました。

登録された会誌の発行日は2015年3月31日ですが、何らかの事情があったようで、今週ようやく完成誌を受領です。

 

さて、本稿で研究動向を説明した、瀬戸内海域の大三島に所在する大山祇神社(現愛媛県今治市)の近世史料については、テーマに関係するとして、2014年5月出版の単著『近世の公用交通路をめぐる情報―瀬戸内海を中心に―』(清文堂出版)に分析の成果を盛り込もうと計画していました。しかし、実際に原稿を書いてみれば本の総ページ数が400を超えてしまい、研究単著としては「ページ数が多くて読みにくい」とか、かえって評価が下がるのでは?などと思いなおしたのです。

結局、盛り込むのを見送り、実は今もなお史料分析のデータを放置した状況が続いておりますが、研究動向をまず整理する本稿を再出発の土台として、将来(何年後かは未定)具体的な分析成果を発表してまいる所存です。

 

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【受贈】 東昇「対馬藩における文化九年『毎日記』の引用・書き分けと職務」

2015年06月01日 23時47分05秒 | いち研究者としての日記

東昇先生より、国文学研究資料館編『幕藩政アーカイブズの総合的研究』(思文閣出版、2015年2月)収録にされた標記論考の抜刷を贈っていただきました。ありがとうございます。

いわゆる「鎖国」制下だった当時、朝鮮国ほか外国への対応の窓口の一つを担った対馬藩の公務について、アーカイブズ学の視点から記録を検討しています。そして、公務のなかで記録の先例調査に関心が高まり、過去の記録の引用が進んでいく変化を見とおしています。

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【受贈】 東昇「近世後期津山藩の簗をめぐる領主と農民」(『津山市史研究』創刊号、2015年3月)

2015年06月01日 23時33分07秒 | いち研究者としての日記

東昇先生より、標記論考の抜刷を贈っていただきました。ありがとうございます。

河川の資源である鮎などを獲るための簗(やな。河川の両岸または片岸より列状に杭や石などを敷設して水流を堰き止め、誘導されてきた魚類の流路をふさいで捕獲する漁具・仕かけ)に着目し、寛政~文化期(1789~1818年)の津山藩を対象としながら、領主と農民の関係変化を整理されています。

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