上小田井ステーション マンション長期修繕委員会

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福岡沖地震マンション地震保険金が出ない・・(朝日より)

2005-05-15 | マンション関連ニュース
福岡沖地震で意外と伝えられていないのが、新築高層マンションの被害だ。壁が壊れて、おまけに地震保険は下りないというケースも少なくない。★当マンションは地震保険に入ってますが、その契約内容について見直し確認中です。確認後、ご報告します。添付写真は耐震マンションでも崩れた壁です。by kumasan★

◇3月20日に起きた福岡沖地震。主婦(39)は、その時の記憶が、まだ頭から離れない。

29型のテレビが棚から落ちて、リビングを滑り壁に激突、壁に穴が開いた。約1分間、ソファにもたれたまま動くことができなかった。揺れが収まった後、外に出ようと思ったが玄関のドアが開かない。ドアが変形して、開かなかったのだ。玄関越しに大声で助けを呼び、外を通った男性に無理やり力でドアをこじあけてもらった。

●恐怖感で戻れない人も

これは、あの玄界島の話ではない。福岡市中心部のある高層マンションでの話だ。4月20日早朝に震度5強の余震が起きたときは、朝食を作っている途中だった。炊飯ジャーがテーブルから落ちて、ご飯が飛び散った。主婦は言う。

「地震の影響で、部屋の壁には何本もひびが入ってしまった。今度大きな地震が来たら崩れてしまうんじゃないでしょうか。5年ほど前に新しく買ったばかりなのに」

3月の地震では、震源に近く大きな被害が出た玄界島などに注目が集まった。しかし、震度6弱を観測した福岡市の中心部にも地震のつめ跡は残っている。中でも、地震に強いと思われていた新しいマンションが、大きな損傷を受けているのだ。

福岡市の中心、天神地区から歩いて15分ほどのファミリー向け分譲マンション。14階建てで、築5年とまだ新しい。しかし、このマンションでは現在も、全48世帯中26世帯が親類のもとなどに避難したままだ。

各階で、ベランダや玄関周辺の壁などに無数のひびが入った。廊下や駐車場の共有部分でも壁がはがれ落ち、中の鉄骨があらわになっている部分もある。特に2階から7階くらいまでの中層階でダメージが大きく、玄関のドアがグニャグニャに湾曲している。

1級建築士の資格を持ち、このマンションの管理組合理事長を務める白石信吾さんは言う。

「もし地震で火事が起きていたら、ドアが開かなくて逃げ遅れていた人もたくさんいたはず。入居者に恐怖感が広がっており、避難して戻って来られない人もいる」

●「想定内」のはずが……
 このマンションの周辺では、やはり築5年程度で、10階から15階建ての新しいマンションが、他の建物と比べても大きな被害を受けている。なぜなのか。

福岡マンション管理組合連合会の杉本典夫理事長は説明する。

「今回、被害に遭った高層マンションは、見栄えを良くしようと開口部を広くしたり、天井を高くしたりしている。その分、柱と柱の間隔が開くなどして、地震にもろくなっていた可能性があります」

マンションの設計図を見ると、天井の高さが約3メートルあるなど、開放的なつくりになっていることは確かだ。

しかし、1981年の新耐震設計法(新耐法)施行によって、それ以降に建てられた建築物の耐震性は強化されていたのではなかったか。杉本理事長が続ける。

「新耐法では、建物自体が倒壊して人がつぶされないことが基準となっている。だから重要なのは柱と梁。ドアの周りの壁などは、倒壊には直結しない『非構造壁』とされ、壊れてもやむを得ないと考えられているのです」

マンションで隣の部屋と接する壁などは、地震の力を吸収する「クッション」のような役割をすることがあり、むしろ壊れることで建物全体の耐震性を保つ、という考え方だ。

福岡市の調査によると、市内のマンションは全壊の3棟を含む356棟が被災したが、中には壁が崩れて隣の部屋が丸見えになってしまったマンションもあるという。

九州大の崎野健治教授(建築構造学)はこう指摘する。

「新耐法の基準で建てた新築マンションで今回のような被害が出ることは、95年の阪神大震災でも経験済みで、専門家の間では『想定の範囲内』だった。だから施工側は、非構造壁の部分にも一定の強度を保てるような工法や対策をとる必要があったのではないか」
●柱と梁が無事でも

確かに、たとえ耐震基準をクリアしているといっても、実際にマンションを買った入居者にとってみれば、これでは納得できるはずはない。壁であっても自分の家であり、資産の一部だからだ。

白石さんの管理組合では、いまマンションを修理するか建て直すかの議論が続いている。耐震性なども改めて調査し、設計者や施工会社の責任も明確にする考えだ。

「柱と梁が無事で、建物が倒れなかったからいいなんて考え方は許せない。少なくとも玄関のドアが壊れるなんてことは設計段階で予見できたはず。これでは欠陥マンションです」

マンション住人を悩ませている問題は他にもある。地震保険だ。

マンションの場合、専有部分である住居の中の損害については、各戸が自分で入る地震保険でまかなわれる。しかし廊下の壁やピロティ、非常階段などの共有部分については、管理組合が別途に加入しなければいけない。前出の杉本理事長によれば、福岡県内のマンション管理組合の8割が、地震保険に入っていなかったという。

●壁だけでは保険下りず

修繕費は共有部分を合わせて1世帯200万~300万円かかるところが多いと言われている。 たとえ保険に入っていたとしても、安心するのはまだ早い。冒頭の主婦の家では、部屋の壁にいくつものひびが入ったが、保険金はまったく下りなかった。

日本損害保険協会によれば、マンションの建物被害の査定は、そのマンションの中で最も被害の大きかったフロアを対象に、「主要構造物」とされる柱や梁の被害をチェックし、その被害の程度で「全損、半損、一部損」の3段階に分ける。全損であれは保険金全額、半損であれば50%、一部損であれば5%が支払われる。

だが査定のポイントとなる「主要構造物」に、非構造壁や廊下などは入らない。だから前出の主婦の家のようにいくら壁に亀裂が走っても、柱や梁に一定の被害がなければ保険金は原則下りないのだ。

地震保険の加入率はまだ全国平均で17.2%(福岡県は15.5%)にすぎないが、入っていれば何でも大丈夫というわけでもないのだ。

地元のファイナンシャルプランナー、久保逸郎さんは言う。

「地震保険は、甚大な被害を受けたときに、生活の立て直し資金の一部を補填するためのもの。ひびなどを直す『修理費用保険』ではないと認識することが必要です」

朝日