忙しさに追いまくられたようなランチが終わる。
充実していない日が続く。
心のこもった料理ができないままでいる。
素材と味だけに頼った小手先の料理だ。
「おいしい!】
多くの客が口にしてくれる。
僕は笑顔で返す。
しかし本当は心がこもっていない。
客に合わせて、微妙な味覚の好みを考えたり、
量や素材も変える。
そんなことさえできなくなっている。
18周年に贈られた生け花や、
バレンタインにプレゼントされた26個のチョコレートなど、
まるで誰かの忘れもののように寂しくカウンターに置かれている。
今までにはなかったことだ。
送ってくださった人には感謝しているが、
それらを楽しむことができないでいる。
K子ちゃんの死、
アキちゃんの事件。
そして僕の癌の転移。
右腕という、仕事になくてはならない力を一時的に失った。
未来が見えてこない。
生きている楽しみがない。
原稿を書くにも、左手でパソコンをたたく。
1時間でできるものを3時間以上もかけなくてはならない。
ステロイドで体がボロボロになってきているのがわかる。
それでも、店を続けなくてはならないのか?
すごく悲しい思いで考えてしまう。
夜の仕事はもっと楽しいはずだ。
金曜日と会って、多くの客が来てくれる。
カウンターはずっと満席状態で、
カウンターに置いてあるチョコレートの包みや花を話題に食事を楽しんでくれた。
店が終わって、僕は久しぶりに深夜のドライブをした。
行くあてはない。
何となく寒い夜を走るしかない。
12時半、デニーズに入る。
コーヒーを頼む。
ため息しか出てこない。
明日の競馬新聞も買う気分にさえならない。
10分くらいで店を出る。
頭が働かない。
また車を走らせる。
そのまま彰子先生のアパートの前に行く。
明かりがついている。
ドアの前に立つ。
ノックしようかどうか迷う。
もし、誰かと一緒なら大変失礼なことだ。
もう一度車に戻る。
電話をかける。
携帯から電話をするということは、
僕の電話番号を知られることになる。
それでもいい。
いま、誰かにしがみつかないと気が狂いそうだ。
自分勝手な行動だ。
彼女が電話に出る。
少し不安そうなイメージが伝わる。
一瞬間があって、小さな声で「はい」と答える。
「一人ですか?」
彼女の声が変わった。
「どこ? どこにいるの?」
「会いたい」
「早く来て。いまどこ?」
僕は電話を途中で切り、ドアまで急いだ。
彼女はドアを開けて迎えてくれた。
「暖かい部屋の中は、エアコンとストーブのせいだ」
パジャマとナイトガウンの姿で彼女は僕にしがみついた。
また、僕は女に逃げた。
卑怯者だ。
卑劣な男だ。
彼女に対しては、今までにない激しい勢いで貪った。
24歳の若く美しい体がしなやかにうごめき、
それに刺激されて僕は一層に激しく攻める。
2時間以上も、彼女が全く知らなかったセックスを味あわせる。
僕自身、これほど激しく下品な体位を要求するとは自分自身でも記憶がない。
そしていま、少しばかりの安心感とともに、彰子先生を抱きしめている。
この素直な女を、僕は汚してしまったのではないだろうか?
そんな想いも少しばかり僕を襲う。
充実していない日が続く。
心のこもった料理ができないままでいる。
素材と味だけに頼った小手先の料理だ。
「おいしい!】
多くの客が口にしてくれる。
僕は笑顔で返す。
しかし本当は心がこもっていない。
客に合わせて、微妙な味覚の好みを考えたり、
量や素材も変える。
そんなことさえできなくなっている。
18周年に贈られた生け花や、
バレンタインにプレゼントされた26個のチョコレートなど、
まるで誰かの忘れもののように寂しくカウンターに置かれている。
今までにはなかったことだ。
送ってくださった人には感謝しているが、
それらを楽しむことができないでいる。
K子ちゃんの死、
アキちゃんの事件。
そして僕の癌の転移。
右腕という、仕事になくてはならない力を一時的に失った。
未来が見えてこない。
生きている楽しみがない。
原稿を書くにも、左手でパソコンをたたく。
1時間でできるものを3時間以上もかけなくてはならない。
ステロイドで体がボロボロになってきているのがわかる。
それでも、店を続けなくてはならないのか?
すごく悲しい思いで考えてしまう。
夜の仕事はもっと楽しいはずだ。
金曜日と会って、多くの客が来てくれる。
カウンターはずっと満席状態で、
カウンターに置いてあるチョコレートの包みや花を話題に食事を楽しんでくれた。
店が終わって、僕は久しぶりに深夜のドライブをした。
行くあてはない。
何となく寒い夜を走るしかない。
12時半、デニーズに入る。
コーヒーを頼む。
ため息しか出てこない。
明日の競馬新聞も買う気分にさえならない。
10分くらいで店を出る。
頭が働かない。
また車を走らせる。
そのまま彰子先生のアパートの前に行く。
明かりがついている。
ドアの前に立つ。
ノックしようかどうか迷う。
もし、誰かと一緒なら大変失礼なことだ。
もう一度車に戻る。
電話をかける。
携帯から電話をするということは、
僕の電話番号を知られることになる。
それでもいい。
いま、誰かにしがみつかないと気が狂いそうだ。
自分勝手な行動だ。
彼女が電話に出る。
少し不安そうなイメージが伝わる。
一瞬間があって、小さな声で「はい」と答える。
「一人ですか?」
彼女の声が変わった。
「どこ? どこにいるの?」
「会いたい」
「早く来て。いまどこ?」
僕は電話を途中で切り、ドアまで急いだ。
彼女はドアを開けて迎えてくれた。
「暖かい部屋の中は、エアコンとストーブのせいだ」
パジャマとナイトガウンの姿で彼女は僕にしがみついた。
また、僕は女に逃げた。
卑怯者だ。
卑劣な男だ。
彼女に対しては、今までにない激しい勢いで貪った。
24歳の若く美しい体がしなやかにうごめき、
それに刺激されて僕は一層に激しく攻める。
2時間以上も、彼女が全く知らなかったセックスを味あわせる。
僕自身、これほど激しく下品な体位を要求するとは自分自身でも記憶がない。
そしていま、少しばかりの安心感とともに、彰子先生を抱きしめている。
この素直な女を、僕は汚してしまったのではないだろうか?
そんな想いも少しばかり僕を襲う。