亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

恋人が鳥人。

2018-04-07 01:02:58 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
「真知子ちゃん。」

幼馴染みの桜田逸郎は、イケメン長身フェミニスト
頭脳明晰コミュ力高し。非の打ち所のない紳士。

に、見えるんだが
なかなかに癖のある変わり者である。

小学生のときから私たちはずっと
同じクラスで、一緒に登校する仲良しだった。

「真知子ちゃん、昨日はタカシくんと
仲良さそうだったよね。」

「え、図書委員だからね。昼休みと放課後
一緒にいたからそう見えるだけじゃない?」

私は、この幼馴染みの優しい男の子を
小学生のうちは弟みたいに思っていた。
でも、この男の子の方は早くから私を
れっきとした一人の女性として見ていたようで
いかにして自分の手元から離さず置いておくか
それを邪魔するものを排除するか
そんなことに躍起になっていた気がした。

「へんな噂が立つよ。気を付けなきゃ!」

「逸郎ちゃんとの方が、一緒にいる時間が長いけど。」

「俺はいいんだよ。だって。俺は。」

そこでいつも逸郎ちゃんは
幼馴染みだから、とか
兄弟みたいに育ったからだ、とか
遠回しなことを言ってくる。
でもその日は違ったんだ。

「真知子ちゃんをお嫁さんにするんだから。」

は?

私があんまりポカンとして無反応だったのが
お気に召さなかったのか、ランドセルをガチャガチャ
揺らしながら私の正面に回り込んできた。

「真知子ちゃんは、ずっと俺が一緒にいて
守ってやるから!」

男に守られることに、女としての価値を見出だすような
観念はまだなかった。守ってほしいとか思うような
切羽詰まった経験も特になかった。
ようするにさほど嬉しい台詞ではなかったのだ。
正直、一人で熱くなる彼を見て正義の味方ごっこを
真剣にしている幼稚園児のようだと思う。
そのごっこ遊びにいい年してつき合わされる。
そんな気持ちだった。

「そっか。逸郎ちゃんに任せとけば安心ね。」

私は年の離れた弟に話を合わせるように
振る舞っていた。
そんな私の思惑も知らずに、逸郎ちゃんは
満足そうに拳でどん、と自分の胸を叩いた。

「任しといて!だから真知子ちゃんは
俺から離れないでいてよ!」

別にありがたくはなかったが
だからといって彼と一緒にいるのが
嫌なわけでもなかった。

好きか嫌いかで言ったら、当然好きだった。

「桜田と妹尾は夫婦~アツアツ~」

クラスの男子たちから冷やかされることも
しょっちゅうだった。
一緒に遊んでいても、高いところに登れば
逸郎ちゃんが上から手を引いてくれたし
日差しの強い日には自分の帽子を私に被せて
寒くて震える日には手袋を取って私の手にはめた。

「結婚手袋。」

すごく真面目な顔で私の手を取り
指輪を嵌めてくれるみたいに
手袋を私の五本の指にあてがった。

「け、結婚、手袋って、何!」

爆笑した私を見て、大層機嫌を損ねた逸郎ちゃんは
もう!自分ではめろ!なんて言って
頬っぺたパンパンに膨らませて怒っていた。
力一杯膨らませたので、上顎の耳に近い辺りが
滲みるみたいに痛くなったらしい。

そんなことを教えてくれたのは
私たちが別れ話を始めたときだったけど。



私たちの住んでいたあたりには
魔物とのハーフとかは全然いなくて
魔界との境の土地でのエピソードは違う国の話
みたいな現実味の薄い感覚だった。
中学のとき、初めてヴァンパイアとの混血の男の子が
クラスに転校してきた。私たちは珍しくて
でもどう接していいかわからなくて
各々いろんな反応をしていたんだけど
好意か敵意かで分けていくとだいたい6対4くらいで
なんとかバランスを取りながらやっていた。
嫌なことを言うやつがいれば
好意で見ているやつが庇う。
人間同士でも不自然ではないくらいの
つきあい方で、段々とクラスに馴染んだ。

そんな中で、逸郎ちゃんの反応に違和感を持った。

「逸郎ちゃん、紺野くんのこと嫌いなの?」

「え、ど、どうして?」

転校生の話題を出すと明らかに狼狽える逸郎。

「もしかして、怖いの?大丈夫だよ、血は吸わない
って言っていたじゃない。」

ヴァンパイアとの混血というのは
純血のやつらと違って、血を吸わないと
生きて行けない訳ではないのだそうだ。
あくまで嗜好品であり、自分はオレンジや
グレープフルーツの方が好きだと
自己紹介で言っていた。

「こ、怖くなんかないよ!それより真知子ちゃん
あいつとあんまり仲良くするな!!」

まただ。
あれからずっと逸郎ちゃんは
過剰な嫉妬を私にむける。

「もう。しょうがない人。」

私が彼の腕を取って軽く引いてサインを出す。
彼はきょろきょろと回りを見回し、誰も見ていないのを
確認すると私の唇に唇で触れる。

「大好き。愛してるよ。真知子。」

「ん。嬉しいよ。ありがと。逸郎ちゃん。」

初めてキスなんかしちゃったのは
中学に上がる直前だった。
今ではわりと当たり前に、朝昼晩とディープキスを
してくるけど、初めてのキスは鼻息が荒くて
乾いた唇が震えてて、たまらなくくすぐったかった。

「本当に、あいつには近づかないで。
何されるかわからないじゃないか。」

「わかったから。別にクラスメートの一人だし。
二人きりになんかならないもの。」

でもこのヤキモチは、今までのと少し
違っていたような気もする。








「妹尾さん。ちょっと話があるんだけど。」

私はなんの前触れもなく紺野君に捕まった。
昼休みももうすぐ終わる。
日直だった私は、職員室に日誌を取りに行き
急いで教室に戻る途中だった。
渡り廊下に出ようとしたとき、横からいきなり
紺野くんが顔を出したのだ。

「早くしないと五時間目始まるよ?」

私の頭に浮かんだのは、ヤキモチを妬いて
不機嫌な顔をする逸郎だった。
私も胸が痛む。彼が傷つくのは私も辛いから。
紺野くんが話しかけてきたのは、面倒以外の
何者でもなくて。
それが顔に出たんだろう。
紺野くんは申し訳なさそうに身を縮めた。

「ごめんね。話っていうのは君のことじゃなくて
桜田くんに関することなんだけど。」

「え?逸郎くんのことって。何なの?」

途端に捨て置けない気分になる。
彼になんかしようってんなら私が許さない!

「違うよ、ただ俺は…………」

その時、風に乗ってふわふわと綿毛が
漂ってきたのに気づいた。

「やっぱり!!」

紺野くんはそう言うと、私の後ろに目をやる。
私はその目線に導かれるように振り返った。

「い、逸郎?」

凄い形相で紺野くんを睨みつけていた逸郎は……

「やっぱり桜田くんも魔物のハーフだよね!」

背中から大きな白鳥の翼が空に向かって伸びていた。

「うるさい!!真知子から離れろっ!!」

回りにいた生徒が次々集まってきた。
ざわめきが大きくなる。
みんな、怯えた目をしてる。
何度も言うけど、私も含めて魔物に免疫のない
お土地柄なのである。
これって一大事なのだ。
それに、転校生のヴァンパイアより
今まで純正人間だと思っていた逸郎が
鳥人とのハーフだったんだから
もっと驚きなのだ。







放課後、先生に呼び出された。
私と逸郎と紺野くんだ。
横一列に並ばされて担任の先生から
聴取をうける。

「話の始まりから聞かせてくれるか?」

私は昼休み、紺野くんに話があると
呼び止められた。これだけしか言えなかった。

その私の話を受けて紺野くんが
続きと補足を入れてくれる。

「俺、この人間しかいない町に越してきて
すごく浮いてるのが辛くて。仲間が欲しかった。」

クラスに入った瞬間、自分と同じ魔物とのハーフが
いることは分かった。友達になりたかった。
でも彼はハーフなのを隠しているのか、完璧に
人間になりきっていたので分からなかった。
毎日クラスメート一人一人を観察し、見つけ出そうと
必死になっていた。

桜田くんが鳥人のハーフだと気づいたのは
校舎の裏で二人が仲良さそうに寄り添っているのを
見たときだった。

「妹尾さんと仲良くしてるときに、ほんの少し
桜田くんの背中から翼の気配が見えるんです。」

その時、逸郎は顔を真っ赤にして俯いてた。
性的興奮を覚えると自制する集中力が落ちる。
ようするに私とイチャイチャするのに忙しくて
翼の気配を消すとか、気分が高揚すると広がる
羽根や羽毛を鎮めるためのコントロールが
決まらなくなるということなのだ。

「強いな。お前は。」

逸郎は顔を上げて、紺野くんを見た。

「俺は母親が鳥人だった。俺を生んで
すぐ亡くなった。今の両親は父方の叔母夫婦だ。
この町で暮らすようになって、両親は俺に一つの
約束をさせた。」

魔物とのハーフであることがバレたら
必ず迫害を受ける。
家族一緒にこの町では暮らして行けなくなるんだ。

あなたは羽根さえ見せなければ
鳥人とのハーフとはバレないわ。
このまま、私たち人間のあいだに生まれた子として
独立するまで隠し通すのよ。

「だから、俺は人前で翼いや羽根一本
出したことなんかない。」

紺野くんは悪気がなかっただけに
自分がしたことの意味を知って茫然とした。

「ここは、そんなに暮らしにくいところなの?」

紺野くんのご両親は有名な学者さんで
研究施設の特別顧問として、この土地に招かれた。
肩身の狭さは感じたものの、そこまで
差別されたり迫害されたりといった実感は
持っていなかったのだろう。

「今、思ったよ。きっと自分次第なんだ。」

それから逸郎は少し変わった。

回りの皆はやっぱりどうしていいか
分かんなかったけど、紺野くんが皆を説得して
くれたり、先生もHRで話題にしたりして
徐々にあの異常事態がちょっとした驚く出来事に
変化して行ったのだ。


中学を卒業すると
逸郎は今まで育ててくれたご両親から
独立して、遠い国に留学していった。















「それで別れたの?」

美月は保健室で野田先生とお茶を飲んでいる。

「それもあるんだけど。」

二人は遠距離でも繋がっていたかった。
中学卒業が間近に迫ったある夜。
月がきれいな晩だった。
逸郎はキスしながら真知子の体に触れる。
ひとつになろうと決めた、記念すべき夜。

「性器の形が合わなかったの。」

鳥人とのハーフである逸郎のぺニスが
細く短かったのが決定打になった。
真知子の処女も貫けず、二人は完全に白け切った。

「なんかね。笑っちゃった。それで、あたしたち
運命の恋なんかできないんだよって。」

これは、二人が同時に同じことを思った。
でも真知子はこの瞬間、別れようと言った逸郎が
一番好きだった。

「なんか、男らしくてやさしくてカッコよくて。」

「なのに何で別れたのさ。」

美月には分からなかった。

「今思うとあたしにも分かんないよ。」

逸郎と再会したのは
養護教諭としてこの学園にやってきたときだ。

「今でも彼は素敵。それはある。」

「よしくんに言ってやろ~」

美月は附属の大学の教授である
真知子の旦那さま、よしくんに
告げ口するとおどけた。

「大丈夫よ。彼には、一緒にこの学園に
きたときお話したもの。」

そうだ。野田教授は全て知っている。
あんな嫉妬深い男と青春時代を送った真知子と
最終的に添い遂げようとしている夫は
嫉妬をおくびにも出さず、追いかけず
いつでも待っていてくれる。
逸郎とは真逆の男だった。

逸郎の奥さんは魔女と人狼のハーフだ。
セックスは合うようだが、気性の激しい女で。
真知子に甘えきっていた逸郎が、今や奥さんを
おおらかに見守り、甘えさせるポジションで
夫婦生活を営んでいる。
妻といて、翼が飛び出したことは
いままで一度もなかった。

逸郎は今でも公式の場では魔物とのハーフだと
言うことは隠している。