亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(84)

2018-04-01 00:04:39 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
「コウモリに教えを乞うなんて
俺は純血のヴァンパイアの血を継ぐ者
なんじゃないのかよ?!」

はじめ、話を聞いたときには
食堂の長テーブルをひっくり返して
やろうかと思った。

シュウは20歳の誕生日を前に
マナーレッスンの教師が
コウモリだと聞いて怒りに震えた。
何故ちゃんとした教育係がこないのか
執事に食って掛かる。

「社交界からビジネスマナーまでを
お一人で、住み込みで教えられる方は
なかなかいらっしゃいませんで。」

「は?!コウモリがビジネスマナーまで
カバーするってえのかよ。なんの冗談だ!」

「んまあ。雛鳥がピーチク賑やかだこと。」

少しハスキーで妙に耳に引っ掛かる
甘過ぎない艶やかな声が響いた。

振り向くと、つぶらな瞳が黒く濡れた
小さなコウモリが羽音もさせずに
いつの間にか、そこに控えていた。

「バーバラです。よろしくお願いしますわ。」

シュウはたまらなく不愉快だった。
彼女の声に胸が掻きむしられるような
ざわざわさせられる感じで
こめかみがヒクヒクと痒かった。

「君のようなコウモリに務まる役目じゃない
と思うけどね。どういうつもりなんだか。」

「私は確かにコウモリですわ。
評価は、もう少しお仕事をさせて頂いてから
決めてください。」

バーバラは口元をまろやかにほころばせて
シュウに華やかな笑顔を向ける。

バーバラの瞳を真っ直ぐに見られない自分に
シュウはとても情けない思いをする。
彼女は自信に満ち溢れ、誠実に職務を全う
しようとしていた。
それなのに。

コウモリに一目惚れだなんて。




レッスンが始まると、シュウは白旗を
上げざるを得なかった。
バーバラは完璧な指導で次々と
シュウに紳士としての振る舞いを教える。
シュウは、バーバラを認めた。

「バ、バーバラ。」

シュウは、どうしても初めに取った
失礼な態度を謝りたくて、レッスンが
終わってからバーバラを温室に招待した。

「ごめんよ。失礼なことばかり言って。」

温室には丹精されたバラやカトレアが
咲き誇っている。シュウはバーバラに
合わせてミニバラを摘み取り、軽く
リボンで束ねてプレゼントした。

「嬉しい!ありがとう、ぼっちゃま。」

「許してくれる?」

「私だって、初対面で生意気な口を
ききましたわ。失礼しました。」

シュウはもじもじしながらも
ゆっくりとバーバラに手を伸ばす。
バーバラは戸惑いながらも
その手を受け入れた。
バーバラの耳の裏をやさしくまさぐる。
バーバラはキュハァンと甘い声を上げる。

「素敵だ。バーバラ。君のように
聡明で自立した美しい女性はいないよ。」

シュウは耳の裏から首筋、翼の付け根に
指を這わす。

「や、やめ、てぇ。ぼっちゃま。」

「うれしい。感じてくれてる?」

「ヒュウウン、キャ、キュヒュウン」

バーバラはどんどん溺れるように
身悶え始める。

「バーバラ。好きだ。もう、俺は」

「い、いけない……こんなことはだめ。」

「嫌なの?俺を、嫌い?」

「私には…そんな想い、許されてはいない。」

「て、ことは。」

シュウは必死にバーバラを感じさせる。
雄の生殖器を受け入れる場所に、指で
触れに行った。小指の先でつついてやる。

「あ、あん!」

「ねえ。君も、俺を?」

「あなたは、素敵。きっと紳士として
生まれついたの。こんな方に一生を
捧げられる女性が、羨ましい。」

「バーバラ。」

「あ、ああ、いや、いや。やめ、」

バーバラは必死に羽ばたいて
シュウの指を逃れた。

「だめ、です。あなたを、汚してしまう。」

バーバラは温室から出ていった。
シュウは、指に絡みついた彼女の匂いに
しゃぶりついた。








……………………………

「いけない恋ってやつだな。
もう俺はバーバラに夢中だった。」

シュウは三十年も昔を振り返る。

「若いってのは暑苦しいな。もう俺は
バーバラとしか未来はないと思った。
それこそ、そんな未来は許されなかった。」

「それで、前の奥様と。」

当然と言えば当然だ。
魔界はそういった婚姻やら
相続やら割とどんぶり勘定なとこはあるが
多分ヴァンパイアとコウモリの婚姻は
今でも認められていない。
シュウとバーバラは内縁関係が
認められるかもわからないし、一コウモリの
バーバラの魔界での戸籍も
厳密に言えばペットとしての血統書までしか
認められていない。ショーンも同じである。

「俺は必死で訴えた。バーバラは有能だし
そんじょそこらの純血のお嬢様なんかより
家にとっても必要とされるべき存在だ。
本気でそんなことを主張したんだ。」

その結果、シュウは地下牢に閉じ込められ
目の前でバーバラを拷問された。
翼と腕を剥がされそうになっても
バーバラは無抵抗だったが
最後までシュウを許して欲しいと
訴え続けたという。

「今でもたまに夢でうなされる。」

シュウは右手で顔を覆うとゆっくりと
頭を振った。深いため息をつく。

「それからは、随分と冷たくされた。
バーバラはしばらく、俺に気持ちがない
風を装って、ろくに口もきかなかった。」

ジュリが嫁いで来る頃には
心を入れ替えた振りをしたシュウと
執事長に登り詰めたバーバラは
人目を忍んで愛し合うようになっていた。

「シンは人間を選んだ。
俺はコウモリだったが。
お互い、選んだパートナーは
人並み外れた能力をもつ
凄い女性だということには
変わりがない。」

親子だな、俺たちは。
シュウは幸せそうに笑った。

「愛した女に愛される。
それだけでも凄い奇跡ですよ。」

「違いない。」

「そろそろ仕事の話に戻りましょうか。
新規事業の件ですが…」

亮はタブレットに資料を出し、シュウの
手元に差し出した。

「お互い、女房に恥ずかしくない
仕事しなくちゃな。」

二人とも仕事モードの表情に変わった。
もうひと仕事終わるまで、女房に
デレるのはお預けだ。