ンデンデキ外伝

僕の話をしよう。

ロデオ

2006年03月25日 15時47分26秒 | Weblog
良くテレビで見る芸人とかの控え室みたいな場所

俺は背広で立っていた。

隣に立っているのは母親。
パイプ椅子には芸人の品川庄司の品川(背広着てる方だっけ?)が座っている。
腕を組み壁にもたれかかるように相方の庄司が立っている。やはり凄い身体だ。

そうだ。俺は就職に困り遂に芸人の弟子入りしようとここまで来たのだった。

品川「で、君は何ができるわけ?」
俺「いえ、まだ学生なので特になにができるというわけでは・・・」

品川しかめっ面。庄司苦笑。

母「あの、この子は昔から周りを気遣う良い子だから、きっと良い芸人さんになれると思うんです。」

庄司「良い子って・・・(苦笑)」

品川「あのね、お母さん。貴方たち何しに来たか分かってます?就職に失敗してこんな芸人のところまで来たわけでしょ。何処にも雇って貰えずに、困って、若手芸人の品川庄司さんのところまで弟子にして下さいって頼みに来たんでしょアンタ達?っていうか君。っていうかお前。」

返す言葉が無い。というより何も考えられない。
どうしてこんなことになったのかも全く思い出せない。
いくら愚図とはいえ、いつもならもう少しそれらしい応対ができたはずだ。
これが芸能人のオーラというものなのか?

・・・今の問題はそんなことではないだろう。

そうではなくてどう間違ったらこんな状況に陥れるのか、だろう。
何処にも雇って貰えなかった。確かにそうだ。・・・確かにそうだった、はず。
でもそれでどうして芸人なんだ?
俺が一度でも、後にも先にも芸人になりたいなんて思うか?
ありえない。
なら、これはやっぱり間違いだ。
母親まで引率して何をやっているんだ。早く帰ろう。
この若手芸人に何かの間違いだったと説明して早くこの場から逃げよう。

品川「・・・煙草吸っても大丈夫?」
俺「あ、はい。自分も吸いますから。」
品川「そーじゃなくて。灰皿持って来いっつってんの。」

くそっ、それにしてもこの男はなんて横柄なんだ。テレビで見たのと大違いだ。
向うの庄司もずっとニヤニヤしやがって。

「どうぞ。」
品川の前に少しだけ使った痕跡のあるよく見かける銀色の灰皿を差し出す。

するとどういうことだろう、品川は何処から持ってきたのかマクドナルドのハンバーガーのパティ(バンズに挟まってる肉)を手に取り、灰皿の真ん中のくぼみのところにぺたりと置いたではないか。

俺「・・・は?」
庄司「ぶふっ・・!ぶふぉっ・・・!!」
品川「・・・なにやってんだよ。これじゃタバコ吸えないじゃん。」

庄司「ぶひゃあっ、ぶひゃひゃひゃ・・・!!ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・!!」

部屋中に庄司の馬鹿笑いがこだました。
なんだよこれ。
そのパティ食えっての?俺に?灰皿にのった肉を?俺が?食うの?

その時、俺の視界を薄い白っぽい幕が覆った。

気づけば品川の首に手をかけていた。器用にパイプ椅子に騎乗し全力で腕を揺すっていた。まるでロデオだ。

「死ね、死ね、死ね、死ねよ・・・」
異常に声が高い。
品川は目をまん丸に剥いて、俺の手を抑えてようとしている(そんなことよりも品川のあごの下の髭のチクチクが気になる)。
庄司はというと恐怖と驚きで品川と同じような顔でこっちを見ているが、どうやら笑いすぎて腹膜が痙攣しているらしい。動けずにその場で身体をピクつかせている。
母はこの場から消え去ってしまったかのように、ただ黙って下を向いている。

ロデオは更に架橋に入る。
しかし次第に音も無くなり、視界の膜は白色を濃くしていき、遂には何も聞こえない、何も見えない、ただの白い世界。
白い世界の中で俺は一心不乱にロデオし続けた。





後味の悪い夢でした。布団かけすぎたかしら。
あと品川庄司は好きでも嫌いでもありません。本当に、すいませんでした。