元新撰組三番隊組長・斎藤一
――この斎藤一なんですが、るろ剣で初めてその存在を知って以来、なんかやたらと好きになっちゃいましてね~(笑)。
「新時代を築くための戦い(幕末の動乱)で活躍」「でも、その戦いでは敗れる」「でも、しぶとく生き残り、新時代でも戦場(西南戦争)に身を置く」――これ、いかにも小説やマンガや、あるいは映画なんかにおける、決して主人公ではないけど、それに匹敵するようなキャラ、おもにダーティヒーロー、ダークヒーローなんかでありそうな設定じゃないですか。それが実在した人の経歴なんですよ! まさに、「事実は小説より奇なり」ですよ。こんなに、マンガ好きの感性を刺激させられる経歴はありませんって! (笑)
そんなわけで、るろ剣以来、いろんな媒体の斎藤を読んできました。そんな中、最近、「燃えよ剣」読んでたころから、「今回のような企画やりたいな~」なんて思っててね。
で、今号のSQのるろ剣リメイク(キネマ版)で、幕末のころの剣心vs斎藤があったんでね(普段は買ってないSQを、斎藤のためだけに買ってしまいました/笑)。それに刺激されてやってみようかな、と。
あ、最初にいっておきますが、
「あくまで私、クラウド鈴木が読んだ、あるいは視聴した作品における斎藤一」
ですからね。「あの作品の斎藤は~」いわれても、それは「私が読んでない(視聴してない)ので書けない」ってことでお願いします(笑)。
燃えよ剣 (司馬遼太郎)
まあ、これは土方歳三が主役であり、斎藤はちょっとしか出てきません。
ただ、「維新後も生き残った新撰組幹部の土方評」ってことで、晩年の斎藤の土方評――「妙な人だった」なんて台詞も紹介されてます(ただ、その内容が事実であるのか司馬先生の創作であるのかは、わかりません)。
この作品での斎藤は、さすがに多摩のころからの同士というわけではありませんが、近藤が江戸で開いていた道場には出入りしてたようで、新撰組の前身の浪士組結成の際、
「加盟します。ただ、整理することがあり、明石に戻らねばならないので、結盟には遅れるかもしれません」
といった言葉を口にしてます。
まあ、ほぼ初期メンバーですよね(作品によっては、新撰組が京都にいってからの加盟だったりもするようですが)。
もっとも、斎藤の出生地は南多摩となっており、「明石は本籍」といったところでしょうか。
で、肝心の「この作品における斎藤像」ですが、
「京都にいたころはまるで面白味のない男だったが、(戊辰戦争以後か)次第に愛想のあるひょうきんな男になっていた」
みたいなことが書かれています。
実際、土方らと北海道に転戦したころには、どっか飄々としたトコも描かれていて、
土方「斎藤にいえ! 京都を思い出せ、と伝えろ!」
斎藤「京都のころでも、鴨川を泳いだことなどなかった! あの人(土方)にそういってくれ! 蝦夷地の冬に川泳ぎをするとは思わなかった!」
なんて減らず口にも似た言葉を、戦闘中に叫んでたりします(笑)。
るろ剣の斎藤も、クールでありながらどっかとぼけたトコもあったりしますが、おそらくはこの影響もあるのかと。
ほかに興味深いのは、この作品の斎藤は、前述のとおり北海道まで土方につき従って戦ってたり、あるいは、会津辺りからは銃も使ってるってことですかね。後者はともかく、前者は司馬先生の創作でしょうか?
余談ですが、この「燃えよ剣」は、主役なだけあって土方がめちゃめちゃカッコいいです。
まさに、
「ケンカのプロ」「永遠の不良少年、永遠のバラガキ」「それを最後まで貫いた男の美学」
といったものを読み取ることができます。銀魂やばくだんの土方は、この作品の彼がモデルでしょう。
一刀斉夢録 (浅田次郎)
斎藤という人は、どの作品においても、「クールで横柄な性格」として描かれているように思えます。
ただ、その共通項がありながらも、「人を突き放すような物言いを見せる高飛車系」と、「なにを考えているのかいまいちわかりにくい、ムッツリ系」の2パターンにわけられると思います。
この「一刀斉夢録」の斎藤は、後者といえるでしょう(「燃えよ剣」の斎藤も、前半はそんな感じかと)。ただし、晩年の、語り部である彼は、酒が入っていることもあり、かなり饒舌ではありますが。
ってかね、はっきりいって、「いじけたじいさん」(笑)。やたらひねくれてて、敵対した人間はもちろん、近藤、土方、沖田らのことまで、皮肉じみた言葉で評しています。
とくに、近藤、土方のことは、自分が(最下層ともいえる、貧乏御家人とはいえ)曲がりなりにも生まれついての武士であるゆえに、彼らのことを「百姓上がりの見栄坊」「俄か侍」などと評してます(笑)。
しかも、それらは新撰組時代から、胸の内に秘めていたようなので・・・
「いじけた若者、いじけたおっさん、そして、いじけたじいさん」
というべきか? (笑)
この作品で興味深いのは、「坂本竜馬を暗殺したのは斎藤」となっていることと、西南戦争での活躍も描かれていること、そして、「じつは『生き延びた』というよりは、『死に損なった』と描かれている」ところですかね。
まあ、竜馬の件は完全に、西南戦争での活躍もかなりの部分が浅田先生の創作なんでしょうが、その辺は小説家の特権。結果としておもしろく描写されてんで、それでいいのでしょう(笑)。
また、「左利き」と明言されてます。実在の斎藤も「左利き説」があって、るろ剣の斎藤も、牙突が「左片手一本刺突(づき)」なんて書かれてますが、明白に左利きとされているのは、私が知る限りではこの作品のみですかね。
新撰組! (大河ドラマ)
オダギリジョーです。別にこの人、好きでも嫌いでもないんですが、斎藤はハマリ役でしたね。
このドラマの斎藤はムッツリ系だと思うんですが、「ムッツリなイケメン剣士」「ひたすら寡黙な、仕事人的な斎藤」という役どころを好演してたと思う。
普段は「・・・斬りますか?」「殿はオレが守る」なんて、ボソッとした物言いなんだけど、そんな彼が「オレが生きている限り、新撰組は健在だ!」「新撰組三番隊組長、斎藤一!」なんて叫び声を上げたりしてたギャップなんかもよかったかと。
ちなみに、実写版るろ剣では江口洋介が斎藤を演じるようですが・・・江口さんは好きだし、カッコいいと思うけど、どうしてもカラッとしたワイルドさがイメージとしてくっついちゃってんですよねぇ・・・
ですんで、オダギリジョーの「再登板」もアリだったかと(笑)。
るろうに剣心 (和月伸宏)
私が初めて斎藤一という人物を知ったのは、このるろ剣でした。
それまで全く知らんかった(笑)。新撰組いわれたら、近藤、土方、沖田しか知らんかった(笑)。
もう、めっちゃハマリましたね。その突き放した物言いに、自信に溢れた言動に、そして確かな実力に(この斎藤は、言わずもがな、高飛車系でしょう)。
「vs左之助」における圧勝、「vs剣心」における激闘、
「vs宇水」における「何が可笑しい!!!」 (笑)
まあ、最後のは宇水さんの台詞ですが(笑)。
ともかく、これぞライバルキャラ、これぞ第三局、って感じで、速攻で好きになりました。
正直、るろ剣って作品自体は、それほど好きでもなかったんですよ(笑)。リメイク(キネマ)版は好きですが。
絵柄も、当時はなんか少女マンガっぽくって・・・やはり、リメイク(キネマ)版はそういう雰囲気が抜けてて好きですが(薫なんて、いまの絵柄なら普通にかわいいと思えるし)。
ただ、斎藤だけは別。彼だけは、絵柄も当時から異彩を放ってて、そんなわけでビジュアル的にも好きでしたね。
それと、
タバコの吸い方! これがまたカッコいい(笑)。
斎藤のタバコの吸い方は、マジでカッコよかったですね~。「じつは和月さん、ヘビースモーカーなんじゃない?」なんて思っちゃうくらい(いや、多分、吸ったことないでしょうが/笑)。
なんつーか、明治10年前後のお話なのに、ハードボイルドなんだよね、タバコ吸ってるときの佇まいが。
ちなみに、今号(SQ)のるろ剣では、江戸のとある問屋のみで扱っている舶来品のタバコを吸っており、これが何気に物語のキーにもなってたりします。
それと、今号の斎藤は(剣心も)「リメイク前とちがう」「剣心との戦闘中のやりとりは、なんかコミカルにも思えなくもない」という印象もたしかに受けましたが、これはこれでアリなのかな、と。
これは「続きもの」やリメイクの宿命でしょう。まあ、アマチュア、それも自己満足でやってるだけのオレなんかがわかったようなこといっちゃうのもおこがましいんだけど、拙著小説・「Lunarian Game」の主人公であるキタノとマリノだって、10年前の彼らとは微妙にキャラ変わってきちゃってるだろうし、あるいは、いまFFA書いたとしても(いや、書かんけど/笑)、マサキもレイナも当時の彼らを再現することなんてできねぇし。
それはともかくとして、斎藤のほうに話を戻すと、絵柄もキャラも微妙に変わっちゃったけど、それでも、自信に満ちた態度と、それゆえに人を突き放したような物言いは健在だったんで。
また、今号のリメイク版るろ剣では、前述のとおり、(リメイク前は描かれなかった)幕末の京都における剣心vs斎藤であり、マジで互角、伯仲で描かれてます。
このふたりのバトルは文句なくカッコよかったです。時代が明治に戻ったうえでのふたりの再戦も楽しみです(って、あるのかな? 「有耶無耶なまま共闘」になったり/笑)。
ばくだん! (加瀬あつし)
まあ、「カメレオン」の加瀬先生による新撰組作品ってこともあって、かなりお下劣なギャグも満載です(笑)。ってか、人斬り以蔵が、現在にタイムスリップしてまた幕末に戻ってきたら、
すっかり萌えオタになってた
なんて設定が素敵です(笑)。
斎藤も涙ながらに「だ~、オレの畳がー!」なんてことも(笑)。
ただ、基本、この作品の斎藤もカッコいいです。この作品ではムッツリ系でしょうか。
まさに「寡黙な仕事人」っていう感じで、でもマコト(主人公)のやり方を段々認めていく感じで・・・ある意味、「ツンデレな斎藤」というべきか? (笑)
ってか、近藤とのやりとり――
斎藤「へっ・・・冴えなねぇ遊女を囲ってる局長にしちゃ、こいつ(マコト)は拾いモンでしたね」
近藤「がっはっは! こいつ、はっきりいう」
ってのがよかったですね。
斎藤の、上を上と思わない物言いはもちろん、それを笑い飛ばす近藤さんの器のデカさもね。
また、この斎藤も、ザコ戦では瞬殺、vs以蔵でも圧勝といった感じに、作中最強クラスで描かれてるのが、ファンとしてはうれしいですね。
まあ、たしかにも実際に強かった人ですからね。実在の斎藤も、沖田と並ぶ新撰組の二枚看板、これに永倉も交えれば、「新撰組3トップの一角」ですからね。
ちなみに、この作者の加瀬さん、ヤンキー上がりでありながら画力も高く、そんなわけで、斎藤を始めとする(いや、ダジャレじゃないよ/笑)新撰組の面々、とくに土方、沖田、原田なんかは、絵柄からしてカッコいいです。
ってか、山南敬助が女性として設定されてて、めっちゃ美人さんです(笑)。
ってか、オリキャラのレンちゃんも青葉もめっちゃかわいいです。オレにとっては、下手なラブコメや萌えマンガの女の子よりかわいい(笑)。
ただ、男性キャラは、江戸時代なのにリーゼントが多いのが玉に瑕(笑)。まあ、斎藤はロン毛のセンター分けですが。
それと、さらに余談ですが、加瀬作品お馴染み、もはや“加瀬節”ともいえる、
「踊れオラァ!」は健在(笑)。
しかも、京都の商人が口にしてました(笑)、まあ、長州の息がかかった、彼らのために武器を売買している商人でしたが。
と、まあ、最後は話がそれてしまいましたが(笑)・・・
そんなわけで、斎藤一を取り上げてみました。
最初のほうでも書きましたが、やっばこの人の「経歴」ってのは、マンガ好きの感性を刺激されちゃいます。
Zガンダムのクワトロ大尉(シャア)の「経歴」にも通じるものがありますよね。斎藤といい、クワトロといい、私はこういう経歴、設定が大好物のようです。
拙著小説の主人公・キタノも、立ち位置という意味では斎藤(やクワトロ大尉)の「経歴」から影響を受けてます。
自己満足作家、素人の私ですらそうなんですから、やっぱプロの作家さんから見たら非常に興味深いものなんじゃないでしょうか。
最近では、私が読んだことのない新撰組作品でも、主要キャラとして斎藤を取り上げているようですから、やっばり魅力的なものなんだと思います。
るろ剣以来、すっかり新撰組の顔のひとりになりましたね(笑)。