総合科学出版よりご献本いただきました。
ある程度以上パソコンを嗜んでおられる紳士・淑女のお歴々にはいまさら説明するまでもないだろう。
そう、エロいゲームのことだ。
僕がエロゲーに興味を持ったのは高校生の頃、忘れもしないあれはパソコン雑誌の『コンプティーク』だった。
当時まだ「パソコンの雑誌」といえばごく一部のかなりマニアックな趣味で「理系で頭良い」みたいなイメージがあった(すくなくとも僕の周りではね)。そんな『コンプティーク』は表紙はそれほど萌え萌えでもないおとなしめの作りだったから「これはパソコンの本です(キリッ)」という顔をして買っていたもんだ。
もちろん当時の僕はパソコンなんてもってない。
僕がパソコンを手に入れたのは二十代まんなかを超えて少ししたあたりだから、当時はパソコンのパの字も知らなかったはずだ。
なのに、なんで僕はパソコン雑誌を買っていたのか?
……そんなの、
エロゲーのために決まってるじゃないかっ。
当時の『コンプティーク』では、まんなかに袋とじでその月に発売されるエロゲーの紹介をしていたのだ。とても小さい記事だったけれどたくさんのエロゲーのプレイ画面の写真とエロ文章がいっぱい書かれていた。
本書『エロゲー文化研究概論
』によると『コンプティーク』は袋とじをつけていた時期がたしかにあったらしい。でも1992年に編集が総入れ替えになってまったく別の雑誌に変わってしまったとある。
おまけにその『コンプティーク』を売っている書店が近所に一件しかなくて、しかもその書店には同級生のあこがれの女の子(黒髪で眼鏡のおとなしい子だった)がバイトしててしかたなくその子にレジを打ってもらってた。
それはそれでよかったんですよ。いや、変な意味じゃなく。
こんなふうに僕は毎月『コンプティーク』を買っていて、彼女も「パソコンの雑誌を読んですごい」みたいなことを言っていたのに、ある日を境に彼女、ムカデを見るような眼で僕を見てたっけ……。うん。まあそんな僕の話はおいておいて。
本書をひとことで言うなら「エロゲーの通史」だ。
エロゲーって、たいてい僕のように欲望のはけ口にするか、もしくは僕のあこがれのあの子(黒髪眼鏡のそれはそれはかわいい女の子だったんだぜ?)のように「キモイもの」としか見られていない。その通史をまとめた本なんていままでなかった。
でも。
エロゲーには時代を反映しつつ、またそのときどきにマスコミや保護者団体などにボコボコにされながら歩んできた歴史があったんだ。
『エロゲー文化研究概論
』宮本直毅・総合科学出版
タイトルに『概論』とあるとおり、本書はエロゲーの歴史全体を要約してあらましを述べている。国産エロゲーの約三十年の歴史を、先にのべたようないろいろな世間一般の世相を挟みながらどう変遷してきたかをまとめている。
本書は、
エロのいち窓口である「エロゲー」に対する、エロくないきちんとした通史なのだ。
じつはこれ、とってもすごいことなんだ。
なぜなら、
エロゲーというのはたしかにエロいけれど、でもそれはどこまでいってもゲームであるからだ。
つまり、
「エロゲーの歴史」とは、放っておいたらこのまま消えていってしまうかもしれない歴史なのだ。
……まあ、「べつに消えてもいいんじゃね?」という意見もわかるけどさ。
でもさ、ホントすごいんだってば。この本は。
読めばわかるのだけれど、本書はきちんと原典の資料にあたっているようで、「エロゲー通史」としての資料性はかなり高い。
「えー? エロゲーの資料性なんて必要なの?」とかお思いかもしれないけれど、こういういろいろなジャンルの資料が揃うことで、たとえば「90年代のエロゲーオタク」なんかを小説や映像作品でより鮮明に描くことができるようになるでしょ?
そしてそれは、
明日の名作が生まれる礎《いしずえ》になることなのかもしれない。
……べ、べつにエロゲーを擁護してるわけじゃなく、僕ぁ本当にそう思うのだ。
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→『エロゲー文化研究概論
』宮本直毅( @miyamo_7 )・総合科学出版
もくじ
→身辺雑感/脳をとろ火で煮詰める日記
→@miyamo_7(Twitter)
●どうでもいい話。
毎回いろんな意味で熱い書籍を送ってくださるスタークジェガンが好きな総合科学出版の営業のひとが書店さん向けに超熱いPOPを作っているようですよ。
→総合科学出版営業部 Blog:【書店さまへ】エロゲー文化研究概論のPOP作りましたー。
→【本がもらえる】レビュープラス
●こんな本も
→『真説 触手学入門』酒井童人・総合科学出版
→『仕事のマナー 「気がきかない」なんて言われるのは大問題ですっ!』就活応援アカデミー・総合科学出版
↓いろんな書評が読めます


![]() | エロゲー文化研究概論 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2013-01-26 |
ゲームについて話をしよう。ただし、そのゲームは「エロ」という冠をかぶっている。エロゲー。
ある程度以上パソコンを嗜んでおられる紳士・淑女のお歴々にはいまさら説明するまでもないだろう。
そう、エロいゲームのことだ。
僕がエロゲーに興味を持ったのは高校生の頃、忘れもしないあれはパソコン雑誌の『コンプティーク』だった。
当時まだ「パソコンの雑誌」といえばごく一部のかなりマニアックな趣味で「理系で頭良い」みたいなイメージがあった(すくなくとも僕の周りではね)。そんな『コンプティーク』は表紙はそれほど萌え萌えでもないおとなしめの作りだったから「これはパソコンの本です(キリッ)」という顔をして買っていたもんだ。
もちろん当時の僕はパソコンなんてもってない。
僕がパソコンを手に入れたのは二十代まんなかを超えて少ししたあたりだから、当時はパソコンのパの字も知らなかったはずだ。
なのに、なんで僕はパソコン雑誌を買っていたのか?
……そんなの、
エロゲーのために決まってるじゃないかっ。
当時の『コンプティーク』では、まんなかに袋とじでその月に発売されるエロゲーの紹介をしていたのだ。とても小さい記事だったけれどたくさんのエロゲーのプレイ画面の写真とエロ文章がいっぱい書かれていた。
本書『エロゲー文化研究概論
『コンプティーク』がエロゲー記事を収録した袋とじを「ちょっとエッチな福袋」と題して誌内に入れていたのが親しまれた時期があった。しかし同誌は、一九九二年に角川書店の社長と副社長の兄弟が対立・決別した関係で編集スタッフが入れ替わり、ほぼ別物になっている(当時の編集陣は元副社長とともにメディアワークスへ移り『電撃王』の立ち上げに携わった)。92年から違うのだったら、少なくとも91年くらいまでは袋とじが付いていたことになる。91年といえば僕は16歳(1975年生まれなもんでね)……そうかぁ……あの頃は多感な時期だったよなぁ。ちょうど新作ソフトとして紹介されていた『沙織』とか『星の砂物語』とか特集されていてその絵で抜い……いやいや、まあとにかく、すんげーお世話になりましたよ。
おまけにその『コンプティーク』を売っている書店が近所に一件しかなくて、しかもその書店には同級生のあこがれの女の子(黒髪で眼鏡のおとなしい子だった)がバイトしててしかたなくその子にレジを打ってもらってた。
それはそれでよかったんですよ。いや、変な意味じゃなく。
こんなふうに僕は毎月『コンプティーク』を買っていて、彼女も「パソコンの雑誌を読んですごい」みたいなことを言っていたのに、ある日を境に彼女、ムカデを見るような眼で僕を見てたっけ……。うん。まあそんな僕の話はおいておいて。
本書をひとことで言うなら「エロゲーの通史」だ。
エロゲーって、たいてい僕のように欲望のはけ口にするか、もしくは僕のあこがれのあの子(黒髪眼鏡のそれはそれはかわいい女の子だったんだぜ?)のように「キモイもの」としか見られていない。その通史をまとめた本なんていままでなかった。
でも。
エロゲーには時代を反映しつつ、またそのときどきにマスコミや保護者団体などにボコボコにされながら歩んできた歴史があったんだ。
『エロゲー文化研究概論
国産エロゲー誕生からおよそ30年。1980年代、8ビット機パソコンから幕を開けたエロゲーの歴史と名作たちを当時の世相や時事問題をまじえながら解説する。黎明期、あの有名ゲームメーカーが作っていたエロゲーの内容とは? 8ビット機、16ビット機、Windows といったパソコンの進化がエロゲーに与えた影響は? 現在に至るエロゲー30年の軌跡を振り返る!僕らの世代では、神戸連続児童殺傷事件(通称酒鬼薔薇聖斗事件)や宮崎勉元死刑囚による東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(連続幼女誘拐殺人事件)がおこり、よけい「エロゲーをするヤツ=理解不能の犯罪者予備軍」とまで思われた時期があった。そのせいで当然、エロゲーメーカーも自粛したりしてゲームの内容が変わったりもしたもんだ。
タイトルに『概論』とあるとおり、本書はエロゲーの歴史全体を要約してあらましを述べている。国産エロゲーの約三十年の歴史を、先にのべたようないろいろな世間一般の世相を挟みながらどう変遷してきたかをまとめている。
本書は、
エロのいち窓口である「エロゲー」に対する、エロくないきちんとした通史なのだ。
じつはこれ、とってもすごいことなんだ。
なぜなら、
エロゲーというのはたしかにエロいけれど、でもそれはどこまでいってもゲームであるからだ。
一九八〇年代初め頃のエロゲーはそもそも現物をプレイして確かめるのが難しいという点だ。三十年前の本なら手に取って開けばすぐ内容にアクセスできる。だが、三十年前のコンピュータゲームの場合は?つまりゲームである以上、起動させるためのハードとセットで揃えないとゲームを再現することができない。
まず三十年が経過してもまだデータが破損していないソフトを確保して、さらにソフトへ対応した「当時の」ハード環境を整えないといけない。もちろんコンピュータ上に仮想的に再現するエミュレータも可能だろうけれど、データの入手には違法性が絡むかもしれないし、なにより一般的にすぐできる方法ってわけじゃない。
つまり、
「エロゲーの歴史」とは、放っておいたらこのまま消えていってしまうかもしれない歴史なのだ。
……まあ、「べつに消えてもいいんじゃね?」という意見もわかるけどさ。
でもさ、ホントすごいんだってば。この本は。
読めばわかるのだけれど、本書はきちんと原典の資料にあたっているようで、「エロゲー通史」としての資料性はかなり高い。
「えー? エロゲーの資料性なんて必要なの?」とかお思いかもしれないけれど、こういういろいろなジャンルの資料が揃うことで、たとえば「90年代のエロゲーオタク」なんかを小説や映像作品でより鮮明に描くことができるようになるでしょ?
そしてそれは、
明日の名作が生まれる礎《いしずえ》になることなのかもしれない。
……べ、べつにエロゲーを擁護してるわけじゃなく、僕ぁ本当にそう思うのだ。
![]() | エロゲー文化研究概論 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2013-01-26 |
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→『エロゲー文化研究概論
もくじ
はじめに
エロゲー誕生前夜
「遊び+エロ」と「エロい遊び」
エロゲー史の芽生え
一九八〇年~一九八四年
エロゲー黎明期:一九八〇年代前半
一九八五年~一九八九年
巨頭らのうぶ声:一九八〇年代後半
一九九〇年~一九九四年
嵐の中で輝いて:一九九〇年代前半
一九九五年~一九九九年
エロゲー新世代:一九九〇年代後半
二〇〇〇年~二〇〇四年
爛熟するエロゲー、そして……:二〇〇〇年代前半
二〇〇五年~二〇〇九年
それでもなお、エロゲーは……:二〇〇〇年代後半
二〇一〇年~二〇一二年
エロゲーのかたち:二〇一〇年~現在
おわり
→身辺雑感/脳をとろ火で煮詰める日記
→@miyamo_7(Twitter)
●どうでもいい話。
毎回いろんな意味で熱い書籍を送ってくださるスタークジェガンが好きな総合科学出版の営業のひとが書店さん向けに超熱いPOPを作っているようですよ。
→総合科学出版営業部 Blog:【書店さまへ】エロゲー文化研究概論のPOP作りましたー。
エロゲーの歴史とは即ち
変態紳士《おれたち》の歴史ッ!
![]() | エロゲー文化研究概論 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2013-01-26 |
![]() エロゲ・美少女ゲーム・ギャルゲ |
●こんな本も
→『真説 触手学入門』酒井童人・総合科学出版
→『仕事のマナー 「気がきかない」なんて言われるのは大問題ですっ!』就活応援アカデミー・総合科学出版
↓いろんな書評が読めます

