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よく「そんなに働いて大丈夫? しんどくない?」と聞かれます。
僕は書店員とライターの二足のわらじを履いているわけで、たしかにまぁ、自分でも結構長い時間働いているほうだとは思います。
でもね、若いころに一度、なんていうかこう、「行くところまで行った」ことがありましてね。それからなんとなくやり方がわかるようになったんですよ。
あのころ勤めていたのは、
いまでいう「ブラック企業」だったのかもしれません。
家族経営で地域の酒屋さんからコンビニエンスストアになったところでして、深夜の仕事で昼夜逆転の生活をしていました。まあそれはいいんですよ。そういう仕事だと理解して入りましたから。
仕事も慣れていろいろ任されてきて、経営者一家に信用もされてきまして、あるとき店長さんが辞めたのをきっかけにその仕事を引き継ぐことになりました。まだ二十歳にもなってないし、お客さんへの対応の都合上いちおう「店長代理」という肩書きをもらったんですけれどもね。実質的には店長です。若いのに不安ですよ。
でも社長は「どうしても対応できないトラブルがあったら夜中でも俺に言ってこい。若者に任せるんだからいつでも俺が出て行ってやる」と言ってくれて引き受けました。
昔ながらの男気のある社長で家族同様に僕をかわいがってくれて仕事自体はとてもやりやすかった。
でもね。
その会社には昔ながらの家族経営の常識、というのがあったんです。
地域の酒屋さんだからお中元とかお歳暮の時期になると、昼間の営業部はものすごく忙しくなる。そりゃもう一日中フル回転ですよ。それでも仕事が終わらない。いわゆる「繁忙期」ってやつです。
ここで「忙しいなら家族みんなで手伝うのは常識」という空気がありました。卒業してすぐその会社に入った僕は、その空気を当たり前と思いました。
で、結局。
夜中のコンビニエンスの店長の仕事が終わった後に、営業部の仕事を手伝ったんですね。夕方まで。ときには日が暮れたあとまで。
もちろんその晩も朝までコンビニエンスの仕事があります。
お昼も社長宅でごちそうになって、夕方や夜にロヘロになったら社長宅の部屋を借りて仮眠したりしました。家に帰るのは週のうち数えるほどの数時間。そのうち、家に帰るのが面倒だから仕事場の近くでアパートを借りましたけれど、そこも寝に帰るだけでお風呂に入る時間ももったいないくらいでした。
いま思うと「すげー生活してたな」と思います。
身体はもともと頑丈なほうだったのでなにもなかったのですけれどもね、うん、心がね、壊れました。
ある日突然、
僕は失踪したんです。
着替えかなにかを自宅に取りに帰ったあと、ふとね、「あぁ、北に行こう」と思ったんです。
そのまま夜中の出勤時間に店に行かず、大阪から京都につながっている旧街道を僕は徒歩で北に向かいました。仕事の用意のままで大したお金ももたずに。
僕はなぜ突然そう思ったのか、なぜそれを実行したのか。いまもってわかりません。
たぶん心のどこかにガタがきていたのかもしれないし、うつ病かなにか心の病気だったのかもしれない。とにかく僕は徒歩で北に向かいました。そして、その間の記憶はほとんどありません。
しばらくして警察から実家に連絡が入って(なぜ警察が連絡するに及んだのかは不明)、両親が面会にきたとき、父が「おかえり。つらかったな」と言ったのが印象的でした。
それがきっかけでその会社を辞めたんですけれどもね、そのあと何年か、僕は仕事ができませんでしたね。
ま、昔の話ですけどね。
こういうことがあったせいか、、現在の僕の「適当に肩の力を抜いてもいいんだよ。っていうかむしろどう抜くかを考えろ」という性格になったんだと思います。おかげで二つの仕事を掛け持ちしてもうまい具合に力を抜けるようになったんだから、人生ってのはどう転ぶかわかりませんね。
うん。なんか今日は重くて長い話になってしまいました。。
っていうのもね、
本書を読んでふと思い出したんですよ。
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「仕事が辛い…でも辞められない」
その悩み、プロが解決します!
・仕事上のストレスには3つのタイプがある
・生活の「モード」切り替え術で楽になろう
・「強い心」ではなく「しなやかな心」を作る
シニア産業カウンセラーである私のカウンセリングルームには、オフィス街に立地しているので、ストレスを抱えたビジネスパーソンが多く訪れます。仕事で辛い思いをしている彼らが決まってする質問がこれです。大人として会社に勤めている以上、誰にでも働いている理由がある。
「“つぶれない働き方”をするためにはどうしたら良いでしょうか?」
実は私自身、仕事でつぶれてしまった経験があります。会社に勤めていたときは、退職直前まで持ちこたえていたのですが、直後に完全につぶれてしまいまいました。産業カウンセラーとして経験を積んだ今では、何がいけなかったのか、はっきり分かります。
本書は、私の経験を踏まえ、さまざまな具体例を挙げながら「つぶれない働き方」のポイントやヒントを盛り込みました。本書が少しでもみなさまの快適で豊かな生活の実現にお役に立てることができれば、とても幸いに思います。
それは家族のためであったり自分の趣味のためであったり、はたまた可愛がっている猫の餌代のためなのかもしれない。とにかく誰しも「譲れないなにか」を背負っている。
そのなにかのためには、仕事がつらいといっても簡単に辞めるわけにはいかない。そりゃそうだよね。僕たち大人だもん。
で無理がたたって「つぶれる」こともある。
第一章「こんなひとがつぶれていく」にはいろんなタイプが挙げられている。まじめな人、プライドのあるひと、「自分はつぶれない」と思ってる人などなど。
左遷されたりいじめられたりとかはまぁ理解できますよね。でもなかには、周囲に「ノー天気男」で通っているひとだって簡単につぶれてしまうこともあるんだそうな。
つまり「ぶつれる」とは誰にでも起きることなのかもしれない。
たとえ「自分はつぶれない」と思っていても……わかんないもんですよ?
だってこの僕もそうだったから。良くしてくれる社長で仕事自体をしんどいと思ったことなんか一度もなかった。でもつぶれるときはつぶれるんだ。
本書第一章を読んでいると、「結局だれしも『つぶれる』可能性があるんじゃないかな」と思える。それくらいいっぱい紹介されています。
大事ななにかのための仕事で「つぶれない」ために。
本書ではカウンセラーの著者はいろいろな方法を示している。
これは本書のキモだと思ったので引用する。
ここまで、仕事を通じて「つぶれてしまった」さまざまなケースをご紹介しました。つぶれるひとの特徴は、著者の名づけた仕事用の上下関係の「タテ・モード」と、プライベート用の共感の「ヨコ・モード」の使い分けがきちんとできていないからなんだそうな。
彼らには、共通点があります。それはみな、生活の「モードの切り替え」がうまくできていないのです。
いわく、仕事用のタテ・モードとは業務をこなすための上下の関係。やることを効率よく遂行するために簡潔に事実を伝える感じ。
反対にヨコ・モードはプライベートの関係で、内容の伝達よりも感情の共感や相手や自分を否定せずに受け止める関係なのだそうだ。
これはどちらが多すぎても足りなくてもダメだし、状況に応じてオンオフをしなきゃいけない。職場で家のようにナァナァにしてては同業他社に負けてしまうだろうし、家でも仕事モードだったら家族は息が詰まってしまうだろう。
なるほどねぇ。
先の僕の思い出話でいうなら、仕事用の関係であるはずの職場に、必要以上に「家族同然」というヨコ・モードを入れすぎたってことじゃないだろうか。相手もそうだったのかもしれないけれど、なにより僕自身がすすんで受け入れていた。だからつぶれたんだろうな。その当時は自分も相手もまったく普通に仕事している感じだった……でも知らないあいだにつぶれそうになっていたんだとしたら……なんか怖いな。
「自分は大丈夫」「つぶれるなんて軟弱ものだ」とか思ってる人のなかにも、あのころの僕のようなひとはいるんじゃないかな。
あと本書では「タテ・モード」と「ヨコ・モード」の違いを、実際のカウンセリングでも使っている表で分かりやすく紹介しているのだけれど、そこは引用しないでおく。でもまぁ、これを見たら「あの頃の僕は異常だった」って思えたね。しかもその当時の自分がなんとも思ってなかったってのが一番怖いよ。
著者はシニア産業カウンセラーにして近畿の地方自治体の「男性の悩み相談」の相談員としてかずかずの相談をうけている吉岡俊介氏。同系の著書も多数あり、NHKで専門家としても出演するなどいろいろな活躍をされているカウンセラーだ。
最後まで読んで感じたのは、著者は「カウンセラーとして相談をうける」「指導する」というよりも、「ともに寄り添っている」という感じだった。
ご自身も東京海上日動に勤めていて「つぶれた」経験をし、そのあとカウンセラーの道に進んだこともあって、僕たちの悩みを親身になって理解できるひとなんだろうな。
最後の章では「強い心よりも「しなやかな心」を持ちましょう」ともいっている。
鉄のようになにも動じないのではなくて、竹のように弾力のある心。そういう心を持ちましょうよ、と。
あとがきにも感謝がいっぱいだし、著者はきっと優しくてとてもいいひとなんだろうな。ビジネス書というか自己啓発系というか、生き方の指南書でこういう気持ちになったのは初めてだ。
もしもあの日の僕が、
彼のカウンセリングを受けていたとしたらどうだろう?
今の人生のいろいなものが少しずつ変わっていたのかもしれないね。
僕はそんなふうに読んだ。
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もくじ
はじめに
第1章 こんなひとがつぶれていく
つぶれる働き方を選ぶひと
自分はつぶれないと思い込んでいるひと
周囲からつぶされるひと
職務辞令・異動でつぶれるひと
転職でつまづくひと
良いひとを演じ続けるひと
家族の問題を抱えているひと
モードの切り替えでつぶれない
仕事で使う「タテ・モード」
プライベートで使う「ヨコ・モード」
ヨコ・モードだけでは生きられない
「新型うつ病」との関わり
第2章 ストレスについて知ろう
ストレスってなんだろう
仕事に関わる3つのストレス
ストレスはうつ病を招く
うつ病の治療と非定型うつ病
「タイプA」のひと
男の鎧
現在も続く「大勝負」
パワーとコントロール
モードバランスとワークライフバランス
第3章 モードの切り替え術
ひとがつぶれるとき
ヨコ・モードへシフトする
自分を変えることはできる
食事にこだわる、身体を動かす
休むことも仕事の一環
二・二・二の法則
就業規則を確認しておこう
専門家に相談することを躊躇しない
男も女も「男の鎧」を脱いでみよう
第4章 会話ができるひとになろう
コミュニケーションの大切さ
言葉は諸刃の剣
コミュニケーションの形態
ユー・メッセージとアイ・メッセージ
ヨコ・モードの感情表現を身に付けよう
肯定表現を身に付けよう
基本は挨拶
相手の目を少し見て会話しよう
いやな相手への対応方法
身近なひととの会話を大切にする
人間関係調整能力を高める
ヨコ・モードを取り入れて組織を活性化
第5章 しなやかな心を養おう
強い心より「しなやか」な心を持とう
人生を変えた二つの出会い
モード切り替えの達人になろう
ラポール・トーク
メリハリのある生活をしよう
自分を振り返ってみよう
ライフライン・チャート
想像力を豊かにしよう
自分を支えるネットワークを作る
道草をしよう
おわりに
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→【本がもらえる】レビュープラス
●こんな本も
→『考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」』秋山ゆかり・早川書房
→『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』石井琢磨・総合法令出版