東日本大震災から三年(本稿は2014年に書いている)。
原発の再稼働や被災地の復興など問題は山積みで、みんなで議論しなきゃいけないことは本当にたくさんある。
でも議論をするためには被災地や原発問題をめぐる「いま」と、三年経ったことによって起こってくるまた新たな問題も考えていかなければいけないわけで。
肝心の「あの場所」の「いま」を知らないのに、顔を真っ赤にして「原発反対!」と叫んでみても、僕にはただの感情論にしか思えない。たとえどんなに正しい意見だとしても、それはちょっと違うんじゃないだろうか。
賛成反対以前に、もうちょっと落ち着こうよ。
でないとまた違う「安全神話」や「想定外」とかいった思い込みを信じて同じ失敗をくり返してしまうかもしれない。そうなったらもう今度こそ本当にダメかもしれないんだから。
そんなわけで本書。
著者・物江潤氏は福島県喜多方市生まれ。
福島で生まれ育ち、東京電力(訂正;東北電力の間違いでした。僕の勘違いです)東北電力に入社して2011年2月28日に退職。著者が東電東北電力を辞めた11日後に「あの」東日本大震災が起こった。
このプロフィール。僕はなにかの運命のようなものを感じてしまう。
本書では福島に育った著者だからいえる、福島県内での微妙な地域差や県民感情みたいなものを紹介し、現在の原発問題のあらましなどを踏まえてこの事実を知ってみんなで議論をしようと呼びかけるている。
文章は終始穏やかで、なんだか著者の講演を聴いているようなやさしい口調だ。装丁もとても優しい色だよね。
本書のサブタイトルは「福島のこれからを話そう」だ。
→『聞き歩き 福島ノート 福島のこれからを話そう
』物江潤・近未来社
本書の第一章では福島に「いま」住んでいる方々と同じ目線で取材をして福島の「いま」の問題を見ていく。
そこにはワイドショー的な面白さはない。
でも人間同士のつきあいを通して朴訥に、そして淡々と語られていく内容は地味だけれど生活に強烈に密着しているんだ。福島県内の地域ごとの微妙な文化の違いから避難者と地元住民の間での軋轢が少しずつ歪みとなってきている三年目の「いま」の状況が、僕にはとてもよく理解できた。
当事者は辛いだろう。本当に。
プロフィールを見ると著者はまだお若い(昭和60年生まれらしい)のに、この取材姿勢は本当にすごい。これは僕の想像なのだけれど、著者は震災直前まで東電東北電力で勤めていたわけで、そういうのってやはり心無い事を言われたりしたんじゃないだろうか。でも根に持ったりせず、それどころか「故郷のいま」を黙々と取材していく姿勢には本当にもうなんと言っていいのか、言葉がなくなったんだ。僕は。
同じようにして二章では原発問題を見ていき、三章では本当にたいせつなものを考える。
そして。第四章では事実を知ってみんなで議論していこうと呼びかけていて、これが著者の本心なのだろうなと思えた。
少し長いが引用してみる。
難しい内容であることは確かだ。
だけど難しいことばを使わず著者の丁寧な語り口と等身大の取材、そして装丁のやさしさで僕にもすんなりと理解できた。彼ならきっと、「開かれた議論の場」を作れるんじゃないだろうか。
まずは知ること。
知って、どうすればいいのかを考え、そして自分はこう思うんだと声を出していかなければいけない問題がここに書いてある。
南海地震は明日にでも起きるかもしれないわけで、そうなったらきっとまたいろいろな「想定外」が起こるだろう。もしかしたら地震じゃなくてなにか「想定外」の大災害が今この瞬間にも起こるのかもしれない。
著者も言うように「自分のこととして」みんなでいま考えなければいけないときがきているんだ。
ぜひ一度読んでいただきたい名著だと思う。
2014/03/30一部訂正
→【本がもらえる】レビュープラス
●こんな本も
→『みんなの原子力発電』青山智樹・総合科学出版
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原発の再稼働や被災地の復興など問題は山積みで、みんなで議論しなきゃいけないことは本当にたくさんある。
でも議論をするためには被災地や原発問題をめぐる「いま」と、三年経ったことによって起こってくるまた新たな問題も考えていかなければいけないわけで。
肝心の「あの場所」の「いま」を知らないのに、顔を真っ赤にして「原発反対!」と叫んでみても、僕にはただの感情論にしか思えない。たとえどんなに正しい意見だとしても、それはちょっと違うんじゃないだろうか。
賛成反対以前に、もうちょっと落ち着こうよ。
でないとまた違う「安全神話」や「想定外」とかいった思い込みを信じて同じ失敗をくり返してしまうかもしれない。そうなったらもう今度こそ本当にダメかもしれないんだから。
そんなわけで本書。
![]() | 聞き歩き 福島ノート -福島のこれからを話そう- 価格:¥ 1,215(税込) 発売日:2014-03-12 |
著者・物江潤氏は福島県喜多方市生まれ。
福島で生まれ育ち、東京電力(訂正;東北電力の間違いでした。僕の勘違いです)東北電力に入社して2011年2月28日に退職。著者が東電東北電力を辞めた11日後に「あの」東日本大震災が起こった。
このプロフィール。僕はなにかの運命のようなものを感じてしまう。
本書では福島に育った著者だからいえる、福島県内での微妙な地域差や県民感情みたいなものを紹介し、現在の原発問題のあらましなどを踏まえてこの事実を知ってみんなで議論をしようと呼びかけるている。
文章は終始穏やかで、なんだか著者の講演を聴いているようなやさしい口調だ。装丁もとても優しい色だよね。
本書のサブタイトルは「福島のこれからを話そう」だ。
→『聞き歩き 福島ノート 福島のこれからを話そう
本書の第一章では福島に「いま」住んでいる方々と同じ目線で取材をして福島の「いま」の問題を見ていく。
個人的な友人は別として、私は避難者の方々に対し、過去を振り返させるような質問や話題は避けるようにしているため、そのご婦人にかつての生活について聞くことはしませんでした。それに聞かずとも、ご婦人が望むものがお金などではなく、かつての平穏な生活であることは明らかでしたので、聞く必要もありませんでした。ときにはバーに通って一緒にお酒を飲んだりしながら「地元住民」「被災者」「避難民」と呼ばれる方々に肩を寄せるように取材をしていく。この姿勢は、僕には取材ではなくて愚痴を言い合える人間同士の付き合いに思えた。
そこにはワイドショー的な面白さはない。
でも人間同士のつきあいを通して朴訥に、そして淡々と語られていく内容は地味だけれど生活に強烈に密着しているんだ。福島県内の地域ごとの微妙な文化の違いから避難者と地元住民の間での軋轢が少しずつ歪みとなってきている三年目の「いま」の状況が、僕にはとてもよく理解できた。
当事者は辛いだろう。本当に。
プロフィールを見ると著者はまだお若い(昭和60年生まれらしい)のに、この取材姿勢は本当にすごい。これは僕の想像なのだけれど、著者は震災直前まで東電東北電力で勤めていたわけで、そういうのってやはり心無い事を言われたりしたんじゃないだろうか。でも根に持ったりせず、それどころか「故郷のいま」を黙々と取材していく姿勢には本当にもうなんと言っていいのか、言葉がなくなったんだ。僕は。
同じようにして二章では原発問題を見ていき、三章では本当にたいせつなものを考える。
そして。第四章では事実を知ってみんなで議論していこうと呼びかけていて、これが著者の本心なのだろうなと思えた。
少し長いが引用してみる。
この問題を議論する場合、まず大切なことは犯人捜しを前提とした議論から始めないことです。「マナーの悪い避難者のせいだ」とか、「心の狭い地元住民の態度が問題だ」とか、「東電が全ての元凶ではないか」といったレッテル張りをやめることです。こういった話し合いや議論をいくらしても埒《らち》があくわけではなく、お互いの溝が深まるばかりです。
福島と原発をめぐる問題が難解であることは間違いありません。しかし、議論に参加することは、思いのほか簡単なことなのです。まずは、開かれた議論の場づくりが必要です。それは、今後の私の仕事になると思います。その次に必要なのは、肩肘《かたひじ》を張らずに皆さんに議論に参加していただくことです。解決に向けては、どうしても皆さんの協力が必要となります。福島の問題を自分のことのように考え、ひとりでも多くの方が議論に参加してくだされば、ほんの少しでも問題は解決に近づいていくのです。
難しい内容であることは確かだ。
だけど難しいことばを使わず著者の丁寧な語り口と等身大の取材、そして装丁のやさしさで僕にもすんなりと理解できた。彼ならきっと、「開かれた議論の場」を作れるんじゃないだろうか。
まずは知ること。
知って、どうすればいいのかを考え、そして自分はこう思うんだと声を出していかなければいけない問題がここに書いてある。
南海地震は明日にでも起きるかもしれないわけで、そうなったらきっとまたいろいろな「想定外」が起こるだろう。もしかしたら地震じゃなくてなにか「想定外」の大災害が今この瞬間にも起こるのかもしれない。
著者も言うように「自分のこととして」みんなでいま考えなければいけないときがきているんだ。
ぜひ一度読んでいただきたい名著だと思う。
![]() | 聞き歩き 福島ノート -福島のこれからを話そう- 価格:¥ 1,215(税込) 発売日:2014-03-12 |
2014/03/30一部訂正
![]() 東日本大震災・・・我々にできること |
●こんな本も
→『みんなの原子力発電』青山智樹・総合科学出版
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