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鏑木保ノート

ブックライターの書評、本読みブログ。

『Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54』Theodore Gray・オライリー・ジャパン

2010年07月30日 | サイエンス
 ブクログ談話室にて『夏休みに読みたい!『夏の一冊』教えてください!【しおりプレゼント!】』をやっていた。


 夏休み。
 それは宿題の季節である。

 たしか小学校三年生くらいの夏休みだったと思うのだけれど、自由研究で「肉まんはどこまで耐えることができるのか?」を調べようと肉まんを電子レンジに放り込み、分指定ダイヤルをぐりぐり回して見ていたことがある。
 肉まんは約十分を過ぎたあたりから色が変わって煙が出はじめ、だんだんと炭化して静かになった。肉まん(であった物体)の反応がなくなったので「なんだつまんねー」と思った僕は電子レンジのダイヤルをそのまま放置してファミコンをはじめた。

 と、突然。
 電子レンジからばごん!という音とともに鼻を突く黒煙がもくもく昇って部屋に充満。あわや消防車、という惨事になった。(もちろん母にこっぴどく叱られた)
 あとから見たら電子レンジの内面がへこみ、肉まん(であった物体)が粉々になってまだ黒煙がぶすぶすと出ていた。

 あの夏。
 我が家の電子レンジのなかではいったいなにがおこったのだろうか?


 そんな夏の思い出がよみがえったのがこの本。

Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54価格:¥ 2,940(税込)発売日:2010-05-24


 本書は、トンデモ実験をすることで有名なブロガー Theodore Gray 氏が、科学雑誌『Popular Science』誌上に連載していたコラムをまとめた日本語訳である。
 日本語版サブタイトルは『炎と煙と轟音の科学実験54』。


 なんか、
 おもわずにんまりしてしまうタイトルぢゃないか。
→『Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54』Theodore Gray・オライリー・ジャパン

 まずひとつめの実験からしてイカれてる(褒めてます)。
危険すぎる製塩法
 金属ナトリウムの入ったボウルの上に網に入れたポップコーンを吊るす。そして金属ナトリウムにガスボンベから気体塩素を吹きかけて反応させる……という実験。
ナトリウムは、軟らかく銀色の金属で、水に触れると激しく爆発し、ごくわずかな湿気にも反応して皮膚にやけどを負わせる。塩素は、窒息の恐れがある黄色の気体で、第一次世界大戦の最前線では毒ガス兵器として使用された。ただし敵とほぼ同数の味方が死んだとされ、成果はいまひとつであった。このナトリウムと塩素が出会うと激しく反応し、火の玉となって炎を上げ、白煙が立ち昇る。この煙は塩化ナトリウム(NaCl)、すなわち食塩であり、反応現場の上に吊り下げた網の中のポップコーンに、塩味を加えるために使用される。
 作者のウェブサイトに実験の動画が載っているのでまあ見ていただきたい。
Making Salt the Hard Way

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「Foo♪」「Hahaha!」じゃねぇよ(笑)
 反応の熱でポップコーンの網が溶けて燃焼中のナトリウムがまわりに飛び散ってるし!
 この実験の成果が「ポップコーンに(新鮮な)塩味をつける」ってんだからイカしてる。いやイカれてる。心底本気でイカれてる(だから褒めてますってば)。


 本書ではこんなトンデモ実験がカラー写真付きで合計54本収録されている。
「オレオクッキーはカロリーが高いんだから、そのカロリーを直接熱量に変換したらロケットを飛ばせるよな?」的な実験(本書26P「クッキー・ロケット」)とか「日本には、お燗できる缶入り日本酒があるそうだが、あの原理を使えば風呂を沸かせるよな?」な実験(本書230P「石灰温泉」)などどれもこれもいい具合にイカれまくり。

 最後の「石灰温泉」では、ガスマスクをしつつ200キログラムの石灰を駆使して完成させたお風呂に子供と一緒に入浴して写真を撮っている始末で、「おいオヤジ、奥さんに怒られないか?」と心配になってしまった。


 Theodore氏のそのすがすがしいマッドサイエンティストぶりがカラー写真付きで読める本書はぜひ一読の書なのである。
(でもよい子は真似しちゃダメだぞ)

Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54Mad Science ー炎と煙と轟音の科学実験54価格:¥ 2,940(税込)発売日:2010-05-24

科学の歴史では、数多くのアマチュアサイエンティストが自宅の地下室や作業場で実験を行い、驚くべき成果をあげてきました。本書『Mad Science』はその伝統を継ぎ、エクストリーム(過激)な実験を通して、科学の原理と楽しさを伝える書籍です。すべての実験はプロの写真家によって撮影され、読者は『オレオクッキーを燃料にしたロケット』『コップ一杯の水と電池で水素を作る方法』『シャボン玉爆弾』『雪の結晶を永久保存する方法』など、54本の実験の決定的な瞬間を安全に楽しむことができます。十分な経験を持つ読者なら、実験を実際に行うことも可能です。


8 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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鏑木少年が真夏にどこから肉まんを入手したかの研... (ぶぎょう)
2010-07-31 00:38:48
鏑木少年が真夏にどこから肉まんを入手したかの研究も必要なようです。
返信する
>おぶぎょうさま (鏑木保(ろぷ))
2010-07-31 11:46:40
>おぶぎょうさま
 大阪民国兵站部のエース『大阪王将』と双璧を成す肉まんの名門『551の蓬莱』をお忘れではございませぬか。365日いつでもお土産に大活躍なのです。

 大阪ローカル CM で「551の蓬莱があるときー♪」のなるみ姉さんのテンションは異常……と紹介しようと思ったらようつべにありませんでした。
 もとから無いのかはたまた消されたのか……。
返信する
面白そうな本( ̄∇+ ̄) (rider@新幹線)
2010-08-02 19:06:57
面白そうな本( ̄∇+ ̄)
大好物かも~

しかし、なんですのぉ。
鏑木少年はエライコトをやらかしましたね(笑)

寛大なおかん殿に拍手です。

私が同じことをしてたら…。
シメコロサレデす<(_ _;)>
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>rider飼い主@新幹線 (鏑木保(ろぷ))
2010-08-03 23:57:54
>rider飼い主@新幹線
面白そうな本( ̄∇+ ̄)
大好物かも~ はい。オヤジの真面目なマッドサイエンティストぶりが爆発しちゃってる良書ですよ。

 このオヤジはきっと映画『ヴァン・ヘルシング』を見たんだろうけれど、銀製の弾丸を作ろうとする実験があるんです。しかし現実では、溶解した銀ってヤツは鋳型の金属を痛めてしまうのでマトモに作ることができないんですね。だから狼男を殺すという伝説が生まれた。
 だけど。
 我らがオヤジはそのチョー難しい銀製弾丸を作っちゃう。
 そのときことばがこれです↓
私はお話だけの伝説が嫌いなので、本物の銀の弾丸を作ることがどういうものか、試してみることにした。メッキでもなく、合金でもなくーー純銀を使って。 んで銀の熱に負けない鋳型の製造から始めるんですね。旋盤やなんやらを使って本気で作ります。

 ホント、奥さんはいいひとだ。と思いましたよ。
返信する
Mad Scienceの訳者です。 (高橋信夫)
2010-08-04 08:53:38
Mad Scienceの訳者です。
すばらしいご紹介文、ありがとうございました。マッドで危なくてイカれてるけど、、、すてきですよね、グレイさん。

ある人はこの本を「オレに言わせりゃ『超正統派科学本』」と言っていましたが、その通りだと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。みなさんも是非!!
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>高橋信夫さん (鏑木保(ろぷ))
2010-08-04 21:28:52
>高橋信夫さん
 訳者さんにそう言っていただけると大変嬉しいです。本読み冥利に尽きます。こちらこそありがとうございます。

 正統派科学。
 まさにそうかもしれません。
 科学ってヤツの究極の目的は、人々の生活をよりよくすること。だから実験室でデータを取るだけで完結してちゃだめなのです。現実世界の、いやもっといえば日々の生活に密着していてこそまことの科学。
 そう、まさにグレイさんは真の科学者ですよ!

 ……でもやっぱ、奥さんの忍耐力はハンパ無いと思いますけどね(笑)。
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Twitterでもありがとうございました。 (高橋信夫)
2010-08-05 12:01:47
Twitterでもありがとうございました。
>「奥さんの忍耐力」
先日著者が来日したとき、3人の娘さんを連れてきたのですが、奥さんは来たくなかったのかなぁ。ひとりで羽根伸ばしていたかもしれません。

それはともかく、ろぷさんの書評は「目のつけどころがスゴイ」です。いづれ「書評リンク集」に入れさせていただきたいと思っています。(まだ作ってない)
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>高橋信夫さん (鏑木保(ろぷ))
2010-08-06 00:09:54
>高橋信夫さん
 訳者さん情報ありがとうございます。
 そうですか。やっぱり奥さんは……。
 あいや、これは冗談(笑)。

 そして。
 重ね重ねありがとうございます。
「スゴイ」かどうかはわかりませんが、目のつけどころが普通とはちょっとズレているのは自覚しています。実生活でもよく「ソコ、突っ込むかねフツー w」みたいな指摘をされますからねぇ。いいんだか悪いんだか、って思ってます。
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