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朝日新聞の自治労援護社説:大阪政治条例―基本的人権を制約する

2012年06月30日 11時05分01秒 | 雑記帳


◎大阪政治条例―基本的人権を制約する

政治活動をした職員はバンバン懲戒免職にする――。
橋下徹大阪市長はいう。言葉どおり、そうした職員を原則として免職などにする「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を市議会に提出する。

条例案では、制限する政治的行為を具体的にあげている。政治団体の機関紙の発行や配布をしてはならない。集会で拡声機を使って政治的意見をいうこともだめ。政治的目的をもって演劇を演出するのも禁止。勤務中か否か、公務員とわかる姿かどうかを問わず、すべての活動をしばりかねない。

集会や結社、表現の自由は、憲法が保障する民主主義の基本だ。だから政治活動の自由も保障される。行政の中立を損なわない範囲での公務員の活動も、自由であるべきだ。大阪市の条例案は、公務員の私的な生活領域にも踏み込むものであり、賛同できない。

国家公務員の特定の政治活動には法で刑事罰があり、地方公務員にはない。橋下氏は当初、条例に同じような規定を入れようとしたが、政府が「地方公務員法に違反する」との答弁書を閣議決定したため、断念した。しかし、この答弁書で政府は「地方公務員の地位から排除すれば足りる」と、地公法ができた時の経緯を示したため、免職までができる条例案にした。規制は最小限にとどめるという精神を取り違えている。

国家公務員法の罰則規定は、1948年、連合国軍総司令部(GHQ)が労組の活動を封じるために、当時の内閣につくらせた。今は、その規定の方が、時代にあわなくなっている。むろん、公務員は自分の政治的な信条で行政を左右してはならない。しかし休みのときに、一般の職員がデモや政治的集会に私服で出かける。それは、本人の判断ですることだ。

社会の情勢や国民の考えは、大きくかわった。先進国ではごく限られた行為だけが規制されている。今さら戦後の混乱期のような考えに戻ることはない。息苦しい制度によって社会の幅広さや活力をそぐ害が大きい。

橋下氏が代表である大阪維新の会は、次の衆院選で全国に候補者を立てるという。脱原発や大阪都構想に共感した職員が、休日に街頭署名や集会を企画したら免職にするのだろうか。大阪市では長年、役所と組合のもたれあいが言われてきた。昨年の市長選では前市長を職員労組が支援し、勤務中に職場を抜けて政治集会に出ていた職員もいた。このような問題は現行法で個別に正せばいい


(朝日新聞社説:2012年6月30日-下線はKABUによるもの)






【KABUコメント】
畢竟、朝日新聞の社説の言う「昨年の市長選では前市長を職員労組が支援し、勤務中に職場を抜けて政治集会に出ていた職員もいた。このような問題は現行法で個別に正せばいい」という主張は、現行の地方公務員法の実際の運用においては「懲罰処分もするな」ということと同値でしょう。他方、刑事罰と区別される人事的否定的評価(懲罰処分)には民間であれ公的組織であれ「懲戒免職」が含まれることは当然のことではないでしょうか。だからこそ、逆に、裁判官等々には特別に身分保障が認められているのでしょうから。

要は、この社説は「不当な政治行為を常套する自治労を擁護する社説」にすぎないの、鴨。しかし、国家公務員であると地方公務員であるとを問わず、公務員が個人として政治的活動をすることは可能な限り認められるべきと私も考えます。すなわち、憲法訴訟論の用語を使い敷衍すれば、

この意味での公務員個人の政治活動の制限の司法審査では、(イ)憲法訴訟の司法審査基準:どの程度の厳格さで人権侵害の有無是非を審査するか(および、この裏面としての「権利を制約する法規に合憲性が推定されるかどうか」あるいは「違憲性を立証する責任は誰に帰属するか」)においては政治的行為の制限には「違憲性が推定され/立法事実の合理性が推定されない」、所謂「厳格な審査基準」が適用される。

そして、(ロ)憲法訴訟の合憲性判断基準:何が満たされれば違憲とされるかの審査においては、その公務員の政治的行為を制約しなければ社会の安寧秩序に取り返しのつかない実害が生じることが明らかであるという「明白かつ現在の危険性」の存在の立証が条例制定者に求められると考えます。

而して、この点で、朝日新聞のこの社説の前半の主張は根拠薄弱/文学的で曖昧かつ情緒的な記述ではあるものの満更間違いではないと思います。

けれども、国家公務員であると地方公務員であるとを問わず、公務員が政党の幹部や公務員労組の一員として政治的活動を行うことは原則禁止されるべきでしょう。これもまた憲法訴訟論の用語を使い敷衍すれば、この場合には、

(イ)憲法訴訟の司法審査基準においては(政治的行為の制限について合憲性が推定され立法事実の合理性が推定される)緩やかな審査基準が適用され、そして、(ロ)憲法訴訟の合憲性判断基準においては(その条例が一見明らかに「常識あらへんわ」くらいに非合理である場合にのみ条例または条例の運用は違憲性を帯びるという)明白性の基準が適用されると考えます。

而して、大阪市の公務員労組が反日特定アジア勢力と極めて緊密な関係にあると噂される/というか関西では「そんなん常識ちゃうの」という状況であるか否かに関わらず、大阪政治条例が専ら労組に対する制約として運用される場合には、その運用はこの社説の根拠の射程外にあり、その条例も条例の運用も合憲であり、それは毫も個人の人権を不当に制約するものではない。否、それは国民・府民・市民の税金に寄生して政治活動を続けてきた自治労・日教組・全教に対する国民・府民・市民の憲法的にも認められるべき怨嗟の声に応える正当な条例であり条例の運用ということになろう。と、そう私は考えます。

蓋し、「先進国ではごく限られた行為だけが規制されている」などの物言いは、これだけでは唯物史観とまでは言わないが、間違いなく、「文化帝国主義=西欧中心主義」以外の何ものでもないでしょう。実際、アメリカの憲法訴訟を見る限り私は「先進国ではごく限られた行為だけが規制されている」というこの命題にはかなりの留保を付けざるを得ませんが、少なくとも、日本の社会には日本のやり方が認められるべきであろうと思います。

畢竟、この大阪政治条例を契機に、かつ、大阪政治条例を巡ってこれから繰り広げられるであろう憲法訴訟論議を槓杆として、この日本の社会が戦後民主主義の微睡みと左翼・リベラル派が垂れ流してきた欺瞞から「卒業」できることを私は期待しています。

б(≧◇≦)ノ ・・・敦ちゃん、「卒業」おめでとう!
б(≧◇≦)ノ ・・・日本の社会も敦ちゃんの潔さと勇気に続くからね!


尚、この私のコメントの理路については下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。

・公務員労組と公務員の政治活動を巡る憲法論(上)~(下)
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11145098802.html

・政党政治における国民主権原理と外国人の政治活動の自由の交錯
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11142603794.html





【資料】

▼国家公務員法
82条  
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一  この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合・・・

102条  
1 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

110条  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。・・・
十九  第百二条第一項に規定する政治的行為の制限に違反した者


☆国家公務員法が制限する「政治的行為」については、
人事院規則14-7(政治的行為)が詳細に定めています。


▼地方公務員法
36条  
職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
2  職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。
一  公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二  署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三  寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四  文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五  前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為
3  何人も前二項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前二項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。
4  職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。
5  本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。


☆地方公務員法にはこの36条違反に対する罰則は定められておらず、違反者に対する「法的制裁=サンクション」は、減給・降級等々の人事的な否定的評価(懲罰処分)によってのみ実施されることになります。しかし、現在、そのような懲罰処分はほとんど行われておらず、地方公務員の政治的行為が野放し状態であることは言うまでもないことでしょう。尚、上記のコメントの如く懲罰処分に「懲戒免職」が含まれることは当然のことと私は考えます。





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