今回紹介するのは、アメリカのプロ野球に飛び込んだ「ナックル姫」こと吉田えりさんを俎上に載せたNew York Timesの記事。昨年、2010年の海外報道ですが思うところあってアップロードします。
と言いますのも、昨年、ナックル姫は、結局、公式戦では通算、先発で8試合登板して、25回2/3を投げ0勝4敗、被安打34、四死球36、防御率が12.27という、正直、今一つの成績でした。しかし、これまたアメリカ仕込みの「負けん気」で頑張り、自分をアピールした。その結果、先日7月20日には、再度、Chico Outlaws に復帰(プロ契約)が認められたとのことですから。
б(≧◇≦)ノ ・・・ナックル姫、やったね!
ということで、最初に、野球の英単語の復習というか予習を少ししておきましょう。専門用語の壁は英語読解のモティベーションの最大級の障害でしょうから。そして、私の経験でも、野球の専門用語は法律用語に次いで難物です。
8試合登板:pitch 8 games / make 8 appearances
先発投手/中継ぎ投手:starter / setuper
被安打数34:to allow 34 hits
四球:base(s) on balls
死球:hit by pitches
防御率:earned run average
打率:batting average
ところで、実は、私は、ナックル姫の本拠地のあるChicoには仕事で何度か行ったことがあります。サンフランシスコから最寄の空港まで約45分、そして、空港から出張先でもあるカリフォルニア州立大学Chico校のキャンパスまで約6マイル、高速に乗ったり降りたりとあれこれ車で30分という所。この記事を目にしてChicoが大変おちついた美しい大学町だったことを思い出しました。
なんせ、Chicoからサンフランシスコに帰る、30人乗りくらいの飛行機の乗客が私だけの貸切状態も珍しくありませんでしたから。そう、乗客1名にパイロットとフライトアテンダントの方が合計3-4名!
懐かしいー♪
Japan’s ‘Knuckle Princess’ Arrives in U.S.
When the former major leaguer Ivan Ochoa laid a well-placed bunt down the third-base line for a single to lead off the game, it drew boos from the home crowd and a loud rejoinder from one fan: “Hit like a man.”
But rather than an insult, Ochoa’s bunt served as the ultimate compliment. It was a sign that the pitcher, Eri Yoshida, a diminutive 18-year-old woman who arrived from Japan with dimples and a sidearm knuckleball, was just one of the guys.
Yoshida made her debut for the Chico Outlaws of the independent Golden League on Saturday night, the first appearance by a woman in American professional baseball since Ila Borders in 2000.
Yoshida allowed four runs in three innings against Los Cimarrones de Tijuana, and she was hit hard at times; one 70-mile-per-hour fastball was crushed for a two-run homer. But she retired 7 of the first 10 batters she faced before tiring. And in her one plate appearance, she drove in a run by bouncing a bases-loaded single to right field. ・・・
Yoshida seemed to have won the admiration of her manager, the crowd and many of her teammates for her perseverance. ・・・
As she stands 5 feet 1 and weighs 115 pounds, her margin for error is slight, and it might be hard to shake the notion that her presence here is little more than a promotional gimmick. ・・・
She lives with a host family, as do many players in independent leagues, that includes two other exchange students from Japan. She has enrolled in an English class at Chico State. She rides the local buses and is working on trying the three Japanese restaurants in the city. In the meantime, she gives a thumbs-up to burritos and Subway. ・・・
The first inning could not have stuck more neatly to script. After Ochoa’s bunt, Yoshida retired Erold Andrus, the brother of Rangers shortstop Elvis Andrus, on a pop-up. Then she induced Jackson Melian, who once received a $1.6 million signing bonus from the Yankees, into a 6-4-3 double play.
After retiring the first two batters to begin the second, Yoshida hit the next batter with a two-strike knuckleball and allowed the homer. She retired the next three batters, but then three singles and a walk evened the score in the third, as fans urged her on with chants of “Go Yo-Shida.” ・・・
Yoshida said the experience was good, but she was aware that she will have to do better. Her knuckleball, rather than fluttering, tumbled. And her fastball and slider must be more precise. ・・・
But she is determined to improve, no matter how daunting the task may be. One thing, though, will be the same. As she stands atop the mound, no matter how many people she has pulling for her, it will not be hard to see the bigger picture: a young, adventurous teenager in a foreign land, by herself on an island.
(481 words)
【出典:New York Times, May 30, 2010】
【語彙】
knuckle:(野球)ナックルボール/拳骨/こぶし, lay a bunt down the third-base line:三塁線にバントする, single:単打/シングルヒット, lead off:攻撃の口火を切る, boo:ブーイングの声, rejoinder:返答/やじ(ある具体的な行為や言動に対するやじ、それに対して、heckling/hecklerはのべつくまなく投げかけられるやじ), insult:侮辱, ultimate:究極の/最大級の, compliment:賛辞/丁寧な挨拶, diminutive:小柄な, dimple:えくぼ, sidearm knuckleball:横手投げのナックルボール, guys:やつ/対等の仲間や競争相手(ちなみに、米語ではguyは「女性をも含む仲間/競争相手」の意味です。極論すれば、大学の女子寮である寮生が同級生の他の寮生達に対して「Hey, you guys!:ちょっと、皆聞いてよ!」と呼びかけるのは奇異ではないのです),
the independent Golden League:(アメリカンリーグやナショナルリーグのMLB球団、および、その系列の下位球団とは無関係な、MLBから独立した球団が所属する)ゴールデンリーグ, appearance:登場/出場/投手の登板, four runs:4得点(ちなみに、「打点」は「run(s) batted in:RBI」), at times:何度か, a two-run homer:ツーランホームラン, retire:攻守交替(チェンジ)にする/アウトにする/(投手の場合)打者を打ち取る(一般には受動態の「be retired」の形でしばしば使われます ), in plate appearance:本塁に登場した場面/打席に入った場面(ちなみに「何打席何安打」とかの成績としての「打席」は「at bat(s)」), drive in:走者をホームに迎え入れる, bases-loaded:満塁の,
admiration:称賛, perseverance:忍耐強さ, stand:~の身長である, weigh:~の体重である, a margin for error:間違いが許される余裕, shake the notion that:~という意見, promotional gimmick:販売促進のための企画や策略, Chico State(California State University, Chico):カリフォルニア州立大学Chico校(全部で23大学あるCalifornia State Universityの一つ), work on:取り組む, in the meantime:その合間に/そういう日々の中で頃合を見て, thumbs-up:合格!/いいんじゃないすか!,
shortstop:遊撃手, pop-up:凡フライ, induce A into:Aを~に誘う/誘導する, a 6-4-3 double play:6-4-3のダブルプレー/遊撃手→二塁手→一塁手と打球が移動しての併殺打, three singles and a walk:3本の単打と1四球, even:同点になる/同点にする, urge:強く促す/自説を主張する, chant:シュプレヒコール/同じフレーズを繰り返す大合唱, flutter:蝶のようにパタパタと舞う, tumble:転落する/失敗する, fastball and slider:直球とスライダー,
be determined to-V:~することを固く決意している, daunting:気の滅入るくらいしんどい, atop:~の頂上に/上に, pull for:~を応援してくれるべく惹きつける, adventurous:冒険好きな, on an island:孤高の挑戦の舞台に
【読解躓きの石】
第2段冒頭のセンテンス、
But rather than an insult, Ochoa’s bunt served as the ultimate compliment.
(Ochoaのバントは侮辱したというよりも、最大級の敬意が込められた挨拶だった)
短いですから意味は分かるのでしょうが、何が省略されているのか、
きちんと確認してみましょう。それが、苦手な比較表現や否定表現を
正確に読み取るスキルアップの「王道なき世界の王道」です。
これは、
But Ochoa’s bunt served as the ultimate compliment,
Ochoa’s bunt served rather than an insult.
同じく第2段、同格の名詞節を導くthatの確認です。
It was a sign that the pitcher, ・・・, was just one of the guys.
(Ochoaのバントは、この投手が一角の対戦相手であることを表しているものだった)
第4段、TOEICの頻出表現の確認。
70-mile-per-hour fastball (時速70マイルの速球)
はい、「数詞+ハイフン+名詞」の形の形容詞句では、
ハイフンの後ろの名詞類は100%単数形になります。
ですから、「70-miles-per-hour fastball」は間違い。
第6段には日本人にとっての、躓きの石、比較表現がありましたね。
これです。
it might be hard to shake the notion that her presence here is little more than a promotional gimmick.
ちなみに、thatはnotionと同内容の名詞節を導く接続詞です。
要は、「a promotional gimmick:営業上の話題づくり」を、
「little more than:ほとんど越えることはない」と言っているのですから、
このセンテンス全体の意味内容は、
(彼女がここにいることは営業上の話題づくりであるという考えを払拭する
ことは難しいに違いないけれども)
第8段の次の表現も日本人にとっての躓きの石、鴨。
比較表現と否定表現の合体です。
The first inning could not have stuck more neatly to script.
省略されている箇所をすべて明記すると、
If you had wanted to do so,
the first inning could not have stuck more neatly to script.
(もしそうしようと思ったって、初回ほどきちんと台本通りにことが
運ぶことなどはまずないですよ)
尚、本ブログ記事で使う準動詞用の記号ももう一度掲げておきますね。
◎準動詞のKABU式表記
・原形不定詞:ba-V
・to不定詞:to-V
・動名詞:V-ing(g)またはVg-ing
・現在分詞:V-ing(p)またはVp-ing
・過去分詞:V-pp
【和訳】
日本の「ナックル姫」アメリカに到着
元メジャーリーガーのIvan Ochoaが試合の口火を切る注文通りのバントヒットを三塁線に転がした時、地元の観衆のブーイングを捲き起こしただけでなく、「男らしくちゃんと勝負しろ」という痛烈な野次が発せられた。
しかし、Ochoaのバントは侮辱したというよりも、最大級の敬意が込められた挨拶だった。つまり、Ochoaのバントは、この投手が、日本から来た、えくぼが可愛い横手投げのナックルボールが持ち味の18歳の吉田えりが一角の対戦相手であることを表していたのだ。
吉田は、土曜日のナイトゲームで、独立リーグのゴールデンリーグに加盟するChico Outlawsの選手としてデビューした。アメリカのプロ野球の試合で女性が登板するのはIla Borders が2000年のシーズンに登板して以来のこと。
Los Cimarrones de Tijuanaとのこの試合で、吉田は3回投げて4失点の成績。実際、時速70マイルの速球を叩くツーランホームランを喫する等、何度か吉田は痛烈に打ち込まれはした。しかし、疲労が見え始める前に対戦した最初の10人のバッターの内7人を彼女は討ち取ったのである。そして、バッターとしては、満塁の場面で彼女が叩きつけた打球は右翼に抜ける適時打となり、彼女自身1打点を記録した。(中略)
自分のチームの監督と地元の観衆、そして、チームメートの多くも彼女の忍耐強さを称賛していたように思われる。(中略)
吉田は身長が5フィート1インチ、体重が115ポンド。そういうこともあり、彼女には甘い球を投げるような間違いが許される余裕はほとんどない。そして、何より、Chico Outlawsが彼女と選手契約を結んだについては、それは営業上の話題づくりにすぎないというのも偽らざる事実ではあろう。(中略)
独立リーグの選手の多くと同様に、日本からの二人の交換留学生と一緒に吉田はホームスティしている。彼女は、カリフォルニア州立大学Chico校の英語が母語ではない学生対象の英語クラスにも在籍していて、地元の路線バスを使い、Chicoの町に3軒ある日本食レストランの味を吟味している所とか。ただ、その他、burritosの料理とSubwayの店はもう気に入ったそうだ。(中略)
初回は絵に描いたような上出来の立ち上がりだった。先頭打者のOchoaにバントヒットは許したものの、メジャーリーグのRangers の遊撃手Elvis Andrusの兄弟Erold Andrusを凡フライに討ち取り、Yankeesから160万ドルもの契約金を得たこともあるJackson Melianを誘い込み6-4-3のダブルプレーに切って取ったのだから。
2回も先頭の二人のバッターを討ち取る。しかし、次の三人目のバッターに対して吉田は、ナックルボールで2ストライクを取っていながら死球を与えてしまい、そのランナーを塁に置いた場面でツーランホームランを浴びた。その後、連続3人のバッターを討ち取るものの、それ以降、吉田は3本の単打と1四球を喫して試合は3回に同点の振り出しに戻る。観衆の「吉田頑張れ!」の大合唱が起きたのはこの時のことである。(中略)
良い経験ができましたね。と、吉田は述べてくれた。しかし、もっと上手にやる必要があると彼女は感じてもいる。ナックルボールも蝶のように舞うのではなく、打者の手許で失速してしまった。加之、速球とスライダーの制球にはもう一段の精確さが不可欠だ。(中略)
しかし、ナックル姫は、たとえそれがどんなに大変なことであろうと実力をアップをしようと決心している。ピッチャーマウンドに今後も上がり続ける限り、ある一つの現実だけは変わりようがないのだから。マウンドに上がった際に、観衆からの声援がどんなに大きかろうが、一つの現実だけは変わらないからだ。その唯一かつ不変の現実、要は、その一つの本質的な状況認識から目を逸らすことはできない。それは、若い冒険心に富んだ10代の少女が、異国の地で、孤独な戦いに臨むべくマウンドに上がっているという現実である。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
かなり真面目にブログランキングに挑戦中です。
よろしければ下記(↓)のボタンのクリックをお願いします。
海外ニュース部門エントリー中です♪
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★