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アメリカ、自国民への福島原発80キロ圏外退避勧告を延長

2011年06月14日 19時57分56秒 | Weblog


流石はアメリカ、これこそ「国民の国民による国民のための政府」だ!


この報道に接してそう感じました。

史上最大級の原子力発電所の事故であろうが、北朝鮮が核武装しようが、支那が空母を保有しようが、あるいは、左翼リベラル派の性格異常者が同盟国の首相になろうが、「山より大きな猪は出ない」ということ。而して、政府の使命とは、情報収集を行い現実を見つめ、自国にとっての最適な施策を合理的に選択して、それを粘り強く実行するのみということでしょうか。

加之、重要なことは「最善手」は各々の国によって非対称的ということ、鴨。つまり、同じ福島原発事故の危機を睨んでする、各々の自国民に対するアメリカと日本の最適な指示は異なり得る。まして況や、原発推進の是非を巡るドイツやイタリアと日本との非対称性においておや。と、アメリカ国務省が在日アメリカ国民に出した警告に接して私はこのようなことを思いました。





=== Travel Alert ===
=== 旅行・移動に関するご注意 ===


U.S. DEPARTMENT OF STATE
Bureau of Consular Affairs
June 09, 2011

This Travel Alert updates the Travel Alert for Japan dated May 16, 2011. This Travel Alert expires on August 15, 2011.

Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant

While the situation at the Fukushima Daiichi plant remains serious and dynamic, the health and safety risks to land areas which are outside a 50-mile radius of the Fukushima Daiichi nuclear power plant are low and do not pose significant risks to U.S. citizens.    


アメリカ国務省
領事部
2011年6月9日

この警告は、5月16日付けの日本国における旅行・移動に関する警告の改訂版です。而して、本警告の有効期限は来る2011年8月15日とします。

福島第一原子力発電所

同発電所を巡る事態は引き続き深刻なままであり、また、今後それがどう変化するかも予断を許さない状態です。しかし、同発電所から半径50マイル【80.45キロ】圏外の陸上エリアに関しては、同発電所の事故が原因となってアメリカ国民が傷病等の健康被害を受ける危険性は問題にならないほど低いと言えます(★)。    

★訳註:
放射線被曝の危険性について本テクストは、危険性を、すなわち、「福島第一原子力発電所の近傍80キロ圏内は危険/80キロ圏外は安全」とかの認識を、自然科学的な、つまり、普遍的な真理として述べているのではありません。あくまでも、この警告が俎上に上げている危険性とはアメリカ政府が認識する「アメリカ市民、すなわち、アメリカ国民」にとっての危険性。而して、国際法上も当然ながら、警告はこの箇所を受けた次のパラグラフで「アメリカ国民に対してのみ避難地帯に立ち入らないことを推奨」しています。     




Out of an abundance of caution, we continue to recommend that U.S. citizens avoid travel to destinations within the 50-mile evacuation zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Plant. U.S. citizens who are still within this zone should evacuate or shelter in place.

On May 16, the U.S. Government updated its recommendation for the principal transport routes between Tokyo and Sendai that run through the 50-mile evacuation zone. These transport routes are currently open to public use. The U.S. Government believes the health and safety risks associated with using these transport routes are low, and that it is safe for U.S. citizens to use the Tohoku Shinkansen railway and Tohoku Expressway to transit through the area. ・・・ 


畢竟、何事も用心するに越したことはありますまい。而して、アメリカ政府は、引き続きアメリカ国民の皆様に対して、同発電所から半径50マイル圏内の避難地帯への立ち入りを控えるようお勧めいたします。

去る5月16日にアメリカ政府は、最新の情報を加味して、この半径50マイル圏内を通って東京と仙台を結ぶ、主要な交通路の利用に関するご注意の内容を改定いたしました。これらの交通路は一般利用者が普通に利用しており、アメリカ政府もまたこれらの交通路を用いることによって傷病等の健康被害が生じることはまずないと考えています。要は、他のエリアに移動すべく東北新幹線や東北自動車道を利用した結果、この半径50マイル圏内をアメリカ国民が通ってしまったとしても安全に問題はないということです。(後略)   


http://travel.state.gov/travel/cis_pa_tw/pa/pa_5454.html





このアメリカ政府の警告に関しては、警告延長発表の翌日、在日米軍機関紙『Stars and Stripes』が解説記事を掲載しました「U.S. extends travel alert around Fukushima power plant till Aug. 15:アメリカ政府、福島原子力発電所方面への旅行・移動の警告を8月15日まで延長」(2011年6月10日)。而して、この『Stars and Stripes』の記事を兵頭二十八氏がご自分のブログで俎上に載せておられた。実は、私は(例えば、捕鯨問題に関して)兵頭氏の国際法理解の水準には些か疑問を持っています。しかし、流石、軍事と関連する技術的なマターに関する彼のコメントはそう極端なものではなく、今回の福島原発事故を巡るアメリカの認識に関する彼の以下の分析は大変参考になりました。

これは沃素【ヨウ素】131の有害性が半減に半減を重ねてほぼ消滅する期間(2か月くらい)を計算しているものと思われる。つまり6月の今の時点でも沃素【ヨウ素】131ガスの新しい漏出があると米政府は疑っているのだ。ちなみに沃素【ヨウ素】131は英国ウインズケール事故では70km以上飛散するとそれだけで稀釈されて無害になっていた(チェルノブイリでも欧州諸国はどこも沃素【ヨウ素】131を気にしなかったのは、その裏づけ)。よって今回は、70kmに、プラス10kmの安全距離を追加して、50マイルとなっているのであろうと、兵頭は推理する。沃素【ヨウ素】131以外の原発事故漏出物質と住民発癌の因果関係は、チェルノブイリのセシウム137ですら、立証されていない。よって責任ある政府が気にするべき物質は、沃素【ヨウ素】131だけであり、その対策は、初動での80kmエバキュエーションが正解となるのである。そして最後の漏出から2か月以上が経過したら、立ち入りは緩和しても可【よろし】い。   


http://podcast28.blogzine.jp/milnewsblog/2011/06/2011613_8b14.html


なるほど。

責任ある政府が気にするべき物質はヨウ素131だけであり、
その対策は初動での80キロ圏外退避が正解となる。
そして、最後の漏出から2ヵ月以上が経過したら、
立ち入りは緩和しても問題ない、と。    


山より大きな猪はでない


責任ある政府は、楽観も悲観もすることなく、国民、就中、被災地住民の利益と気持ちを考えて合理的に自国にとっての最適な施策を繰り出すのみ、と。そうですよね。それしかないじゃないですか。納得。





而して、ならば、民主党政権は、自分達がこの福島原発事故の解決ができないと分かった段階で、潔くそれができるプレーヤーに「権限を丸投げ」すべきだったのではないでしょうか。

それなのに、事故発生から3ヵ月が経過したというのに、
情報隠しと情報操作以外には何もできていない現実。
無能な政府と機能しない政治。

四半世紀前にあの旧ソ連だってチェルノブィリを止めたというのに・・・。
全くもって慄然とするこの国の政治の風景。

而して、繰り返しになりますが、敷衍すれば、
福島原発事故解決の指針はシンプル、すなわち、

(1)例えば、半径80キロ圏の放射線被曝許容値を年間積算ベース200ミリシーベルト程度に引き上げ、同時に作業員の方の許容値は2500ミリシーベルト程度に引き上げる。この構えで補給と現地活動の自由を確保した上で、要は、装備も人員も万全の体勢で事故の短期決戦的な収拾に臨む

あるいは、事故解決が自分の政権ではできないと判断した場合は、

(2)事故対応の指揮権をアメリカに全面委託する
(3)事故対応の指揮権を自民党に全面的に委任する   


これら選択肢のどれも選ばず、結局は、ベトナム戦争時のアメリカの如く、「戦力の逐次投入」「情報の操作と後出し」「政府と関係官庁と東電の間での責任の押し付け合い」の繰り返しでは失敗は目に見えていた。実際、民主党政権が、20キロ圏外で一番放射線量の強い飯館村に20キロ圏内の、例えば、浪江町や南相馬市原町エリアから避難する住民の流れを等閑視していた事実は、比喩ではなく、傷害罪か業務上過失傷害罪の構成要件に該当する犯罪行為、鴨。

蓋し、上で紹介したアメリカ政府の警告を反芻するに、アメリカは自分が置かれた立場で自国民のために最適の行動を取っている。而して、他方、究極、この列島を、否、郷里の福島県浜通りを捨ててどこかに逃げることなど本質的にはできない日本人の「国民の国民による国民のための政府」であれば、その国民に対する指示はアメリカ政府のそれとは異なってしかるべきでわないか。と、そう私は考えます。

尚、本稿に関する私の原発問題に関する基本的な認識については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。
  

・放射線被曝の危険性論は霊感商法?
 -生き物たちも、そしてリスクたちも、できれば公正に扱ってあげたい
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60504829.html

・事故を乗り越え福島とともに進む☆原発推進は日本の<天命>である
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60450789.html

・News Week 「ドイツの「脱原発」実験は成功するか」-海馬之玄関は「No」に80点!
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60521378.html

・ドイツの大腸菌騒動-脱原発の<夢物語>は足元の安心安全を確保してからにしたらどうだ
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60533639.html






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