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太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#504 バイオレンス

2018年08月05日 | 太陽にほえろ!


深夜、喫茶店のレジから売上金を奪った男が、翌朝撲殺体で発見された。
目撃者を捜す中で、態度に不審な点がみられた坂口というチンピラをマークしたゴリさん(竜雷太)。
しかし、刑事たちの裏をかいて姿を消した坂口もまた、翌朝撲殺されてしまった。

レジ強盗を殺したところを目撃し、それをネタに金をゆすろうとして返り討ちにあったと推理された。
容疑者は、前日坂口を乗せたタクシーの運転手・加納(小野進也)。
彼は、元埼玉県警の警官だった。



警官時代、容疑者を捕らえる際に発砲したことが問題視され、今度は拳銃を使わず格闘した末に
容疑者を死なせてしまい謹慎処分を受けた加納。
「警官は自分を守っちゃいけないのか。死ななきゃ同情されないのか」と叫んで辞職し、
タクシー運転手として再出発していた。

最初にレジ強盗の撲殺体を発見した吉野巡査(横谷雄二)は、加納が元警官と知り、
よけいに許せず捜査に協力したいと意気込むが、ドック(神田正輝)たちに止められる。


なんか危ない空気が…と思ったら、案の定自分を囮にして加納の化けの皮をはがそうとし、
加納にぼこぼこに倒されてしまう。
幸い命は助かったものの、吉野は心身ともに傷ついてしまった。

ゴリさんはある朝署への連絡を絶ち、単独で加納に接触した。
加納がヤクザ者を襲うのは正義のためなどではなく、もともと人を殺すのが好きな殺人マニアだからだ。
その推理を本人にぶつけ、一生かけてもつきまとい正体を暴くと宣言する。
冷静を保ってきた加納が、ついにゴリさんに牙をむき襲いかかった!





かつてスコッチ(沖雅也)が、「拳銃は、持てば必ず人を撃ちたくなる」という持論を語っていましたが、
拳銃にしても武術にしても、あるいはお金や名誉なども、持っている人が使い方を誤るととんでもない結果を招きます。

正義の反対は悪ではなく別の正義だと思いますが、加納の場合も自分なりの正義を信じていたのか、
それとも自分の暴力性を自覚しつつ正義の名を借りて正当化していたのか。

そして、加納は行き過ぎた例だとして、はたして内なる暴力性というのは特別なものなのか。
ボス(石原裕次郎)がゴリさんに、
「今度の事件で闘争本能をかきたてられたんじゃないの?」とからかっていましたが、
ゴリさんに限らず、そうした本能のスイッチが入ってしまうことは全くないと言い切れるか。


アクションものを好んで観ている自分自身にも問い直すきっかけとなったエピソードでした。


【本日の因縁】
一係の刑事たちと対決する役どころが印象的な小野進也さん。
いかにも悪そう…には見えないのに、ひとりよがりな理由で罪を犯す役が多い気がします。

今回は、空手の有段者である吉野巡査を半殺しにし、一係随一の武闘派ゴリさんを苦しめる姿が
恐ろしかったです。

そして、のちにカナダでロッキー(木之元亮)を射殺。その数年後にはドックにこれまた理不尽な理由で
決闘を申し込みます。
ドックとの決闘、拳銃でよかったですよ。殴り合いだったら殉職してましたよ、きっと。

#417 ボスの誕生日

2018年07月22日 | 太陽にほえろ!


46年前の7月21日、「太陽にほえろ!」の放送が始まりました。
その記念日に観たのが1980年8月放送の「ボスの誕生日」。
ナーコもふくめ、一係総出動のエピソードです。


ボス(石原裕次郎)の誕生日に一係みんなでプレゼントを贈ろうと、ナーコ(友直子)がお金を集めています。
全員割り勘ではなくて、先輩たちが多く出すスタイルです。
「すこっち(少し)だけど」とダジャレを添えて差し出すスコッチ(沖雅也)。
和やかな空気は、このあと起こる事件をまったく予測させません。

プレゼントを買いに行ったナーコが夜中になっても帰宅しないと、両親からの電話で知る一係。
ふだんスーツをビシッと着こなしているボスが、ネクタイを上着のポケットにねじ込んで署に戻ってくる姿が緊張感を一気に高めます。
帰宅後呼び出され、駆けつける面々。
スニーカー(山下真司)の部屋で、手帳や財布、手錠などが棚の上にきれいに並べてあったのが意外でした。

やがて男の声で、ナーコを返してほしければ3000万円用意しろという脅迫電話が一係に。
一係の全員に恨みのあるような口ぶりながら、誰も心当たりがない。
それぞれに過去の事件を回想する場面で、モノクロで懐かしい初期のころの写真が挿入される演出がすばらしい。

朝になり、身代金の運び役に指名されたドック(神田正輝)とロッキー(木之元亮)は、炎天下3時間以上歩かされてヘトヘトです。
しかし、ずっとロッキーに鞄を持たせているドックの方がぼやきが多いのはどういうことでしょう。

珍しく現場に出たボスを含めた聞き込みの成果で、沢木(堀内正美)という若い男が浮かび、
彼が一方的に好意を寄せていた女性に贈るつもりで作ったプレゼントを、犯人追跡中のスニーカーがぶつかって壊してしまったのが
今回の事件の原因だとわかる。

まだなんにもなかったお台場海浜公園にスニーカーを呼び出した沢木。
しかし、代わりに姿を現したのはボスでした。


物陰から見守る仲間たち。



ドック、やけにカッコいいんじゃないかい?

沢木に挑発され飛び出したスニーカー。
ボスは、そんなに五代が憎いなら殺せと、ゴリさん(竜雷太)に拳銃を渡すよう指示する。
一同に緊張感が走りますが、ひときわ緊張しひそかに銃を構えようとするのがドック。

黙って沢木の前に歩み寄り、弁解も謝罪も一切せずじっと銃口に身をさらすスニーカー。

しかし、けっきょく沢木は引金を引けませんでした。

張りつめた空気をほぐすように、スコッチがスニーカーのお腹を叩く。
一係には、先輩が後輩の胸やお腹を叩いて愛情を示す伝統があるんでしょうか。わりと代々見かける光景です。


「いくらボスの指示だからって拳銃を渡すなんて信じらんない。また他に移りたくなった」と非難するドックに、
「止めやしないよ」と笑って空のシリンダーを見せるゴリさん。

そう、入って間もないドック以外は、みんなゴリさんが拳銃に弾を込めていないことを知っていたのです。
それでもあの緊迫した空気。
ゴリさんが今日に限って弾を込めてた…なんてことがないとは言い切れませんからね。

沢木にずたずたに切り裂かれながらも、ナーコが大切に抱えつづけたボスへのプレゼント。
形は失われてもみんなからの気持ちをボスはしっかり受け止めてくれたし、
そのボスからの感謝の言葉が、みんなにとっての贈りものになりました。

われらがボス

2018年07月17日 | 太陽にほえろ!


#490のタイトルですが、今日はそのレビューではありません。

早いもので、今年もまたわれらがボス・石原裕次郎さんの命日がめぐってきました。


昭和世代の多くの人にとって、裕次郎さんといえばボス、ボスといえば裕次郎さんではないでしょうか。
優しさと厳しさ、茶目っ気と威厳、あの大きな体にたくさんの魅力がつまっていて、大人から子供まで、
みんなボスが大好きでした。

長さん、トシさん、ジーパン、スコッチ、ブルース…
演じた役者さんたちが、いままたボスの周りに集っているのかなと想像します。

ボス、「太陽にほえろ!」を14年という長い間引っ張ってくださってありがとうございました。
太陽を観て育った私は、これからも太陽を浴びて生きていきます。


#522 ドックとボギー

2018年07月07日 | 太陽にほえろ!
医大生が相次いで殺される事件が発生。
被害者には同じ大学の遊び仲間で裏口入学しているという共通点があった。

高校の修学旅行でビールを飲んでいたのを、のちに医大に進んだ同級生にみつかり、
先生に告げ口されたのをきっかけに医大生嫌いになったというボギー(世良公則)と、
数年前まで遊び人の医大生だったドック(神田正輝)がコンビを組んで捜査に当たる。




ドックとボギーの上着の色味が被っていてコンビ感が強調されています。
でも、お互い逆の恰好はしないだろうなと。それぞれに合ったスタイルを選んでますね。

被害者と仲の良かった2人の学生たちも狙われる可能性があり、ドックとボギー、
ジプシー(三田村邦彦)とラガー(渡辺徹)のコンビがそれぞれガードする。

学生の身で分不相応に派手な生活を送る彼らに反発を隠せないボギーとラガー。
とくにボギーは、同級生のせいで医大生嫌いになっているため、まったく仕事に身が入らないw
元医大生と知るや、ドックにまで反発する始末。

ガードしていた学生に街中で撒かれ、持久力のなさで逃がしてしまったことをドックに報告され、
それを告げ口だとふてくされるボギー。
入って間もないボギーに、兄貴分のドックを悪く言われてムカつくラガー。
そんなふたりをなだめつつリードするドックとジプシーのお兄さん味がほほえましいです。


捜査していくうちに、被害者を含めた4人グループが、ギャンブルのためにボウガンでウサギ狩りをしていたことが判明。
実験用だと思い、泣く泣く渡したウサギを無残に殺された飼育員の男が彼らに復讐をしたのだった。

普段は医学の進歩のためと割り切って、実験用の動物を育て提供している飼育担当の職員たちが、
年に一度、動物たちへの感謝の祈りを捧げる姿に感銘を受けるボギー。
そんな彼らのプロ意識に接し、ボギーもまた刑事として、私情を抑えて容疑者である飼育員に会いに行く。

とはいうものの、ボギーに計算やテクニックという武器はない。動物を、生き物を愛する者に対し、
ストレートに思いをぶつけるのみ。
子どものころ、飼っていたウサギを炎天下に放置して死なせてしまった自分を今でも許していない、
そういって大粒の涙を流すボギーに、飼育員は「あなたになら捕まってもいい」と自分の罪を告白する。

手錠をかけられ出てきた飼育員を見て、嘲笑するこのふたり…

「太陽」史上、もっとも憎ったらしい被害者といえるでしょう。何度見ても腹立たしい。ぬぅぅぅ!!

ボギーをはじめ一係の刑事たち、そして視聴者の多くが彼らに怒りの拳を振り上げようとした瞬間、
彼らに歩み寄り、胸ぐらをつかんで怒りの言葉を投げつけたのはドックでした。

軟派なだけじゃない、命を大切に思うドックの心情にふれ、今までの非礼を素直に詫びるボギー。
一係に新しいコンビがうまれました。


【アニキといっちゃん】
当時、神田さんと世良さんはラジオのパーソナリティーもやっていました。
(徹さんも番組をもっていて、神田さんと世良さんが揃ってゲスト出演したという
夢のような回もあったようですが、私は残念ながら聴けませんでした)

おふたりがそれぞれの番組にゲスト出演している回のカセットテープを何十年ぶりかで聴いてみました。
「アニキ」「いっちゃん」と呼び合い、お互いはもちろん、太陽の共演者への親愛の情が伝わってきて、
本当にいい現場だったんだなとほほえましいです。

ボギー亡き後にもゲストで出てきた世良さんが、
「アニキにラケットをもらってテニスはじめたんですよね」と楽しそうに語っていて、
アニキの影響力wwと、いっちゃんの柔軟性がちょっと意外でした。

甘やかで柔らかな語り口ながら、案外男っぽさが垣間見えるアニキと、
少ししゃがれ声でぶっきらぼうを装いつつも、優しさと繊細さがにじみ出るいっちゃん。
ドックとボギーに重なる部分と、ご本人の素顔が出る部分と…。
声だけだからこそ感じられる魅力が、ラジオにはあったと思います。



#521 ボギー刑事登場!

2018年06月30日 | 太陽にほえろ!


ロッキーと長さんが去って寂しくなった一係に、ボス(石原裕次郎)がまた変な刑事を連れてきた。

広島出身の春日部一(世良公則)は、赴任の日に愛車で七曲署に向かう途中、ラジオから流れる迷い犬と飼い主の美談に感動するあまり、
信号で停車中の車に追突。前の車の若者たちと乱闘騒ぎを起こし、駆けつけたドック(神田正輝)とラガー(渡辺徹)と奇妙な初対面を遂げる。



免許証の名前の読みが「ハルヒヘイチ」になっていることをドックたちに突っ込まれるカスカベハジメ。
愛車のナンバーが『へ・・・1』というのも徹底しています。



改めて一係で自己紹介。
「ゴリと呼んでくれ」というゴリさん(竜雷太)に、「ゴリラですか?」と直球質問。
後ろの3人、そんなにくっついてるから“ミワカントリオ”とか言われちゃうんですよ。

警察学校の期を訊ね、先輩後輩が明らかになると、あからさまに態度を変えるヘイチ。体育会気質です。

管内をぐるっと回ってみるというヘイチに付き合うのはドック。
ボスとしては、長らくゴリさんの役目だった新人教育係を、そろそろドックにもさせようということなんでしょうが、
警察無線の盗聴できるヘイチの車を面白がったり、張り込み中に野球中継を聴いていたりと、
新人にとってはそれほど緊張しない先輩のようです。

ただ、ヘイチさん。気をつけてください。
ドックと組んで張り込み中に先に寝られてしまうと、ほぼ確実に朝まで寝られません。(先輩のゴリさんであっても!)


管内で起きた銀行強盗が、実は先日トラブルになった3人組の1人だと判明。
男の恋人をマークし、現れた男を追跡するも取り逃がすヘイチ。
がむしゃらに、ひとりで解決しようとするヘイチに、山さん(露口茂)はチームワークの大切さを説く。

広島から上京するときに姉から送られたネクタイで、汗も涙も拭きながら夢中で犯人を追いかけ、
泥だらけの格闘の末、ついに手錠を打つ。

憧れのハンフリー・ボガートから「ボギー」と呼んでくれと名乗るヘイチだが、
ボスからは一打余分なゴルフのボギーだと言われる。

沈んでいた一係に久しぶりに笑い声が響きました。


【本日の心変わり】
ロッキーと長さんの代わりに入る刑事役に世良公則、と聞いた時は正直ものすごく抵抗がありました。
ツイストのころから人気があるのはもちろん知っていたものの、当時の私は世良さんが苦手だったのです。

今となってはなんで嫌いだったのか思い出せませんが、たぶん、若いのに皺っぽい顔と、
ロックンローラーとしての気迫が、なんだか圧が強い感じで引いちゃっていたんだと思います。
小さい子が獅子舞を怖がる感じでしょうか。

ところが、ボギーが出てきたとたん、その愛すべきキャラクターに夢中になりました。

世良さんがボギーを演じなかったら、ボギーはボギーでなかっただろうし、
世良さんのことも苦手なままだったかもしれない。

こんなに一人の人の印象が鮮やかに変わったのは、私の中では後にも先にも世良さんぐらいかもしれません。