太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#437 ニセモノ・ほんもの

2020年05月14日 | 太陽にほえろ!


3年前に出回ったのと酷似する偽1万円札が発見された。
スコッチは当時の容疑者若林(佐野浅夫)に会いに行く。
高度な印刷技術をもつ若林に容疑を絞ったスコッチだったが、3年前には偽札の原版も印刷機も発見できず起訴できなかった。

今回の偽札も若林の仕業だと睨んで張り込むが、札から検出されたのは公文書偽造の前科がある菊田(井上博一)の指紋だった。
場外馬券売り場で菊田を取り押さえたドック(神田正輝)とスニーカー(山下真司)。
しかし菊田は偽札を使った覚えはないと否定する。



やけに興奮して菊田を問いつめるドックをなだめるゴリさん(竜雷太)。
実は、競馬マニアの気持ちを知るには自分でもやってみることだ・・・と馬券を買ったものの、大負けしてカッカしていたらしいことが判明。途中から菊田そっちのけでドックの取り調べになってますw

3年前の事件を洗い直すうちに、最初の偽札事件と今回の事件の関係者のつながりが明らかになった。
たまたま小料理屋で若林の原版のことを立ち聞きした菊田が原版を盗んで偽札を作ったのが3年前。
今回はその菊田に復讐すべく、菊田の指紋を偽札に印刷してわざと彼が捕まるよう若林が仕組んだものだった。

菊田が“仕事”に使っている廃業寸前の印刷所もつかんだ。しかし、証拠はない。
菊田とともに免許証偽造で稼いでいるスナックのマスターに協力させて菊田を泳がせたスコッチは、一発勝負の賭けに出る・・・。

そして、冒頭の鬼気迫る表情。
印刷所をガサ入れし、ついに証拠の偽札を発見!
すべて処分したはずなのに・・・とがっくりする菊田を無事逮捕。
さらにその証言から、若林に3年越しでようやく手錠をかけるスコッチ。

って、スコッチ、証拠のでっちあげ多くないですか。
まあ、ボスも公認ということで。





【本日の発見】
今回の相棒はロッキー(木之元亮)。
菊田犯人説が有力な状況で、ひとり若林を追うスコッチと一係をつなぐ役割を果たしています。
当時の一係で特に背の高かったこのコンビが、公園でパンをかじりながら事件を整理する姿はちょっとユーモラスですらあります。

で、今さらなんですが、もしかしてこのふたり似てます?
ロッキーも年々洗練されてきて、このころは登場時よりヒゲもすっきりしてカッコよくなりました。
沖雅也に似ている人がいるなんて思いもよらなかったのですが、意外に近くに・・・?

第一印象が違うけど、顔の造りとしては系統が同じだと思うんですが、いかがでしょう。


#431 誰が彼を殺したか

2020年05月06日 | 太陽にほえろ!


関東薬品・開発部恒例のボウリング大会のさなか、雑賀社長の息子俊夫が急死した。
微量の毒物を長期間服毒していたために引き起こされた心臓麻痺が死因とわかり、病院から七曲署に通報があった。

関東薬品では、研究用にその毒物を扱っており、開発部の人間しか立ち入ることのできない部屋から薬品が盗まれていたことが判明する。

また、俊夫の部屋からトランプのカードが貼られた意味深な手紙がみつかり、スコッチ(沖雅也)が調べると、そのカードには「愛の終わり」「死」という意味があることがわかり、俊夫が脅迫されていたと推測された。

ボウリングに参加していた同僚、雑賀家のお手伝いの女性など、俊夫に毒を飲ませる機会のあった者をしらみつぶしに調べ、そのなかで婚約者の澄子と、それ以前に付き合っていた泰子(片桐夕子)というふたりの女性に容疑が絞られた。

澄子の部屋で現像したまま未開封の写真の袋をみつけ、中から出てきた俊夫との写真を見ようともしていなかった彼女に不審を抱くスコッチ。
彼女の父親の会社が、この婚約を機に経営が持ち直したと知り、意にそわぬ婚約だったのではないかと睨む。



休暇をとり、旅に出ようとしていた澄子に任意同行を求めたスコッチは、取調室で淡々と彼女に問いかける。
「会社にはバスで通ってるんですって?」
「バスは好きですか?電車よりも好きですか?」

・・・不気味です。案の定、澄子も取調室で急に関係ないことを問われて戸惑う。
「答えてください。リンゴは好きですか?」
ミカンは? 犬は? 猫は? ネズミは?
しだいにせりあがる恐怖。
ゴキブリは?の問いに、大っ嫌いですと突っ伏し泣き出す澄子。

「そのゴキブリを手で握りつぶす男がいた」
そう、俊夫は人当たりも良く評判もいい男だったが、虫を素手で平気で殺すのだった。
澄子にはどうしてもそれが受け入れられなかった。
「いなくなればいいのに」そう思うほどになっていた。

澄子を追いつめるスコッチにそこはかとない狂気を感じて、自分が追及されているかのような怖さを感じました。
しかし、澄子は殺してはいなかった。それが分かった瞬間、スコッチの表情が急に憑き物が落ちたように弱々しくすら見え、「良い旅行をしてください」と時刻表を返す姿は、容疑者を追いつめる刑事の顔ではなく、ひとりの女性を傷つけたことに自分も傷ついてしまった男の顔でした。

澄子がシロだったことから、泰子に捜査の的が絞られる。
スコッチとドック(神田正輝)が泰子の隣人に聞き込みをしていると本人が帰ってきて、疑っているなら私に直接聞けばいいと部屋に通す。

本のあいだからトランプを見つけたスコッチに、手紙を送った証拠にはなるが、殺人の証拠にはならないと自信たっぷりに言い放つ泰子。
山さん(露口茂)は、泰子の同僚から、彼女が研究室の薬を盗む機会があったことを聞き出してきた。
あとは俊夫に毒をもった手口さえわかれば・・・。

スコッチは、ゴリさん(竜雷太)、ドック、スニーカーに協力をしてもらい、死亡当日の様子を再現。
ついに俊夫が投球前に指を舐める癖を利用し、ボールの穴に毒を仕込んでいたという推理にいきつく。
しかし証拠はない。スコッチは、ある仕掛けを用意しボウリング場で泰子に勝負を挑む。


婚約者の澄子と違って、泰子は自信満々で警察との駆け引きを楽しんですらいる印象。
そんな泰子もスコッチの巧みな揺さぶりに動揺し、とうとう自白に追い込まれる。
ボウリングのゲームと、捜査上の駆け引きがうまくリンクして、澄子の取り調べとはまた違った緊張感がありました。

いずれの勝負も、終わった後のスコッチはなんだか悲しそう。
冷静さ、激しさ、優しさ、悲しさ・・・スコッチがもっている複雑な要素がそれぞれ丁寧に描かれ、あらためて沖雅也の演技の懐の深さを堪能しました。

そんなお疲れ気味のスコッチを元気づけるため・・・では絶対ないと思うんですが、ドックがさきほどからやけに集中して何かを仕込んでます。



いや、あかんやろw しかもボスの机で!

生真面目なスニーカーがすかさずたしなめる。
スコッチは案外ノリノリで時計を玉に見立ててボウリング。
うしろで長さん(下川辰平)は楽しそうに笑ってる。

あれですね、俺天組はふざけてますねw

今ならネットで叩かれちゃったりするんでしょうか。
当時も眉を顰める人はいたんでしょう。
でも、ボス(石原裕次郎)が「バカもん!」と一喝することでそれらの批判を収められたんじゃないでしょうか。



やっぱりいろんな意味でボスは大きかったと思います。




#418 ルポライター

2020年05月04日 | 太陽にほえろ!


朝のひととき。
セミの声がうるさくて目が覚めちゃうというスニーカー(山下真司)のぼやきを受けての
ドック(神田正輝)のダジャレ連発にキレるゴリさん(竜雷太)、
けっこうウケてる長さん(下川辰平)というおなじみの構図がすでにこの回で確立されている感じです。
「セミプロだよ」は、ドックにしては気の利いた返しだと思うんですがね。

ある出版社から相談を受け、メインテーマまるまる使ってスコッチ(沖雅也)とスニーカーが
建物に入っていくところを映す演出がかっこいい。
カメラの前を二人が歩いてるだけなんですけどね。
音楽と演者がかっこいいと、ただ歩くシーンも絵になりますよね。


以前より噂のあった土木省の入札に関する東郷建設・岩田社長との関係を暴いたルポが無記名で送られてきて、扱いに困った編集長が相談してきたのだった。
東郷建設のバックには響組がついており、黒い噂が流れると関係者が不審な死を遂げているのため、このルポを書いた人物にも危険がおよぶ心配があった。

岩田や土木省の三浦らが会合に使っているスナックに客を装って入ったスコッチは、
担当のホステス博子(田島令子)に近づき、その後も彼女に張りつく。



スコッチ、お紅茶しか飲まないのかと思いきや、これは当時のスポンサー提供のコーヒー牛乳では?w
このあと、窓越しに倒れる彼女を目撃し、車のドアをジャンプして飛び越え、さらに後ろ足で閉めるという美技を見せてくれます。

博子の様子から、ルポを書いたのは彼女だとひらめくスコッチ。
しかし、目を離したすきに逃げられ、翌日彼女は遺体で発見される。

博子が白血病で余命半年だったこと、本当は雑誌の記者になりたかったらしいことを知り、
彼女が命を懸けて不正を暴こうとした思いを無駄にするまいと一丸となる一係。



さらにスコッチは、博子が真相究明のために近づいた三浦に対し、しだいに本当の愛情を感じていて、彼に罪を償ってもらいたくてルポを書いたと思い至る。
しかし、その思いは届かず三浦は博子を殺した。

不正で利権をむさぼろうとする者、それを搾取する暴力団、保身のために恋人を手にかける役人。
それを追いつめる刑事たち。

証拠のイヤリングを、夜中の駐車場で地面にはいつくばって探すスコッチ、ドック、ロッキー、スニーカー。
みんな絶対自分が見つけてやる!と思っていそうな真剣な様子で、捕り物だけじゃなく、こういう地道な捜査もやっぱりかっこいい。
真剣さというのは、無条件に人の心を打つんだなと思いました。



【スコッチとドック】
ふたりのやりとりで私が愛してやまないのが、ドック登場編の
「冗談じゃないよ!ひとつ間違えば僕が死ぬとこだったじゃないっすか」
「俺が死ぬよりましだ」
というシーンなんですが、さくっとひどいこと言われているのに
「ハードボイルドだ。たしかブランデーとかいったな」と感心しているドックもなかなかです。

今回、ひとりで響組に乗りこみ、組員たちにむりやり握手しながら快活に挨拶をしつつ強引にガサ入れをする案外無鉄砲なドック。
「まったく前後の見境がないな、お前ってやつは」とぼやくスコッチに対し、
「滝さん、あんたも相当ね」
と先輩に対して無礼なドックの物言いを気にするでもなく笑うスコッチ。

両者ともマイペースなせいか、組むことは多くてもあまり“コンビ”感はないのですが、
やりとりは息が合っていて、実はかなり好きな組み合わせです。

動けない二枚目が刑事役をやるほどの悲劇はないと思っているのですが、その点沖さんも神田さんもアクションシーンに限らずちょっとした動きにも自分のカラーがちゃんとあり、かっこよさもコミカルさも表現できて、なおかつこの容姿なのでいうことなしです。

この組み合わせで、逆に隙のないハードな話も観てみたかった気がします。