「さすが良い耳をしているな。石塚刑事…通称ゴリ。
逃げようと思っても無駄だよ。走っているカモシカだって、俺の拳銃からは逃れられない」
夜の歩道橋の上で、ゴリさん(竜雷太)に突然銃を向けて挑戦してきたガンマニアの男のセリフが
あまりに破壊力が強くて冒頭にもってきてしまいました。
事の発端は、新宿で拳銃を持った男を見たという通報を受けて現場に向かったゴリさんとドック(神田正輝)が
銃声のした方へ駆けつけると、三人のチンピラがそれぞれ一発で撃ち殺されていて、その後街中で発砲した男を
地下街で追いつめ射殺したこと。
得体のしれない殺人者を前後から同時に挟み撃ちしたわけですが、一発ずつしか撃たないのが七曲署クオリティ。
二人の弾丸は、正確に心臓をとらえている。
射殺されたのは、ガンマニアの大学生古川。海外の射撃場で腕を上げ、非合法な手段で日本に拳銃を持ちこんだらしい。
おそらく初めて犯人を射殺して動揺するドック。ゴリさんは自分の弾丸が致命傷だったと報告します。
ゴリさんもドックも、死なせてしまったことは不本意だったでしょう。
重たい空気が流れます。
余談ですが、先日新宿に寄った際、この射殺現場に行ってきました。劇中、新宿の地下街にしては人通りが少ないから、
早朝か深夜の撮影かなと思ったのですが、休日の昼間訪れた時も同じように人がまばらで、このシーンが蘇ってちょっと鳥肌が立ちました。
歩道橋で、モーゼル712という銃を突き付けられ、古川を撃ったもう一人の刑事の名前を聞かれたゴリさん。
相手の隙をついて歩道橋から下を走るトラックの荷台に飛び移ったものの、右肩に被弾してしまいます。
公表されていない自分の名前を調べ上げている相手の本気度を感じ、ドックにも危険が迫ることを察したゴリさんは、
海外の射撃場の捜査にドックを回すよう山さん(露口茂)に頼みます。
病院を抜け出し、男を誘い出そうとするゴリさんの前に現れたスコッチ(沖雅也)。
ボス(石原裕次郎)もゴリさんの行動を予期し、スコッチにガードを頼んでいる。
かつて反目していたゴリさんとスコッチが、今は固い信頼で結ばれていて感慨深いですね。
海外の射撃ツアーが若者に人気と聞き、古川の参加したツアーの客をあたる刑事たち。
「親のすねかじりがそんなところに入り浸って、拳銃の化け物になって帰ってくる」という現実に慄然とするゴリさんですが、
紙一重だった人が一係にも…!
捜査の中で、同じツアーに参加していた有田という自動車セールスマンが浮上します。
大学生、セールスマン…拳銃がそんなに身近なものになっていたのでしょうか。
有田の射撃の腕を身をもって知っているゴリさんは、左手で射撃訓練を重ねるもののどうしても右手には劣る。
めずらしく射撃訓練場に現れたボスが、有田と同じ銃で的に命中させて見せ、左手では勝てんぞと現実を突きつける。
(ボスかっこいい)
ゴリさんが選んだのは、ヘンメリーという一発しか撃てない競技用のライフル銃。
有田の立ちまわりそうな場所をめぐるゴリさんとスコッチ。
特にスコッチの緊張感がハンパなく、なにがなんでもゴリさんを守るという覚悟が表情や動作の端々にあふれています。
それだけに、有田がゴリさんを狙撃し姿をくらましたことをボスに報告している矢先、その有田に車で襲われて動けなくなり、
有田を追うゴリさんを見送ることしかできなかったのは無念だったでしょう。
ゴリさんを引き留めようとするスコッチの必死な姿に胸を打たれます。
単身有田を追うゴリさん。
帰国したドックは、自分がゴリさんやみんなに守られていたこと、ゴリさんが危機に直面していることを知り、
有田がゴリさんと勝負するのに選びそうな場所を探し、間一髪駆けつけます。
しかし、ゴリさんはドックを制し、有田と一対一の勝負に挑む。
「まあ、そうまで言うなら、俺の殺し屋としての値段も、ちょっぴり上がるかもしれないからな」
(ちょいちょい笑わせてくるのは何故?)
見事一発で自称殺し屋との勝負に勝ったゴリさん。
緊迫した事態の続いた一係に、久しぶりにほっとした空気が流れます。
ゴリさんの活躍を得意げに語るドックに対し、「(あんたは)何をしてたの?」と尋ねるスニーカー。
「もしゴリさんが撃たれてごらんなさい、次に勝負するのは誰? 僕しかいないでしょう」というドックに
「そうなったら一係も6人になったというわけだな」スコッチの一言が冴えます。
横で聞いている山さんの表情もいつもながら秀逸です。
なおもゴリさんの対決を実演しているドックを見ながら、
「あれはね、ドック演会(独演会)っていうんですよ」とゴリさんまでダジャレ。
「アホか、おまえ」と突っ込むボス。(思いっきりゴリさんの右腕をはたいてますけど…)
緩急のついた見ごたえのあるエピソードです。