太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#451 ゴリ、勝負一発!

2017年10月29日 | 太陽にほえろ!


「さすが良い耳をしているな。石塚刑事…通称ゴリ。
逃げようと思っても無駄だよ。走っているカモシカだって、俺の拳銃からは逃れられない」



夜の歩道橋の上で、ゴリさん(竜雷太)に突然銃を向けて挑戦してきたガンマニアの男のセリフが
あまりに破壊力が強くて冒頭にもってきてしまいました。

事の発端は、新宿で拳銃を持った男を見たという通報を受けて現場に向かったゴリさんとドック(神田正輝)が
銃声のした方へ駆けつけると、三人のチンピラがそれぞれ一発で撃ち殺されていて、その後街中で発砲した男を
地下街で追いつめ射殺したこと。

得体のしれない殺人者を前後から同時に挟み撃ちしたわけですが、一発ずつしか撃たないのが七曲署クオリティ。
二人の弾丸は、正確に心臓をとらえている。
射殺されたのは、ガンマニアの大学生古川。海外の射撃場で腕を上げ、非合法な手段で日本に拳銃を持ちこんだらしい。

おそらく初めて犯人を射殺して動揺するドック。ゴリさんは自分の弾丸が致命傷だったと報告します。
ゴリさんもドックも、死なせてしまったことは不本意だったでしょう。
重たい空気が流れます。

余談ですが、先日新宿に寄った際、この射殺現場に行ってきました。劇中、新宿の地下街にしては人通りが少ないから、
早朝か深夜の撮影かなと思ったのですが、休日の昼間訪れた時も同じように人がまばらで、このシーンが蘇ってちょっと鳥肌が立ちました。


歩道橋で、モーゼル712という銃を突き付けられ、古川を撃ったもう一人の刑事の名前を聞かれたゴリさん。
相手の隙をついて歩道橋から下を走るトラックの荷台に飛び移ったものの、右肩に被弾してしまいます。

公表されていない自分の名前を調べ上げている相手の本気度を感じ、ドックにも危険が迫ることを察したゴリさんは、
海外の射撃場の捜査にドックを回すよう山さん(露口茂)に頼みます。

病院を抜け出し、男を誘い出そうとするゴリさんの前に現れたスコッチ(沖雅也)。
ボス(石原裕次郎)もゴリさんの行動を予期し、スコッチにガードを頼んでいる。
かつて反目していたゴリさんとスコッチが、今は固い信頼で結ばれていて感慨深いですね。

海外の射撃ツアーが若者に人気と聞き、古川の参加したツアーの客をあたる刑事たち。
「親のすねかじりがそんなところに入り浸って、拳銃の化け物になって帰ってくる」という現実に慄然とするゴリさんですが、
紙一重だった人が一係にも…!

捜査の中で、同じツアーに参加していた有田という自動車セールスマンが浮上します。
大学生、セールスマン…拳銃がそんなに身近なものになっていたのでしょうか。

有田の射撃の腕を身をもって知っているゴリさんは、左手で射撃訓練を重ねるもののどうしても右手には劣る。
めずらしく射撃訓練場に現れたボスが、有田と同じ銃で的に命中させて見せ、左手では勝てんぞと現実を突きつける。


(ボスかっこいい)

ゴリさんが選んだのは、ヘンメリーという一発しか撃てない競技用のライフル銃。
有田の立ちまわりそうな場所をめぐるゴリさんとスコッチ。
特にスコッチの緊張感がハンパなく、なにがなんでもゴリさんを守るという覚悟が表情や動作の端々にあふれています。

それだけに、有田がゴリさんを狙撃し姿をくらましたことをボスに報告している矢先、その有田に車で襲われて動けなくなり、
有田を追うゴリさんを見送ることしかできなかったのは無念だったでしょう。
ゴリさんを引き留めようとするスコッチの必死な姿に胸を打たれます。

単身有田を追うゴリさん。
帰国したドックは、自分がゴリさんやみんなに守られていたこと、ゴリさんが危機に直面していることを知り、
有田がゴリさんと勝負するのに選びそうな場所を探し、間一髪駆けつけます。

しかし、ゴリさんはドックを制し、有田と一対一の勝負に挑む。

「まあ、そうまで言うなら、俺の殺し屋としての値段も、ちょっぴり上がるかもしれないからな」
(ちょいちょい笑わせてくるのは何故?)

見事一発で自称殺し屋との勝負に勝ったゴリさん。
緊迫した事態の続いた一係に、久しぶりにほっとした空気が流れます。

ゴリさんの活躍を得意げに語るドックに対し、「(あんたは)何をしてたの?」と尋ねるスニーカー。
「もしゴリさんが撃たれてごらんなさい、次に勝負するのは誰? 僕しかいないでしょう」というドックに
「そうなったら一係も6人になったというわけだな」スコッチの一言が冴えます。
横で聞いている山さんの表情もいつもながら秀逸です。

なおもゴリさんの対決を実演しているドックを見ながら、
「あれはね、ドック演会(独演会)っていうんですよ」とゴリさんまでダジャレ。
「アホか、おまえ」と突っ込むボス。(思いっきりゴリさんの右腕をはたいてますけど…)

緩急のついた見ごたえのあるエピソードです。





#422 令子、俺を思い出せ!

2017年10月22日 | 太陽にほえろ!
新婚ほやほやのロッキー(木之元亮)・令子(長谷直美)夫妻に訪れたピンチ。
ヘロイン中毒患者による銃の乱射事件や、患者のショック死などが相次ぐなか、
売人の高岡を警ら中に偶然見つけて追跡した令子が、高岡の反撃で車にはねられ記憶喪失に。


令子を囮にして高岡をおびきだそうとして危険な目に遭わせてしまい、
恐怖感からますます心を閉ざしてしまう令子に対し、必死に記憶を取り戻そうとするロッキー。



でも、自分のことも思い出せない状態で、ひげ面の大きな男が夫だと名乗り、
挙句に自分を囮に事件を解決しようとするって、令子にしてみたら恐怖以外のなにものでもないでしょう。

案の定、「出てって!!」と病室を追い出されてしまう。
廊下で待機していたドックとスニーカーも心配顔。

落ち込むロッキーを呼び止め、
「記憶なんて戻らなくてもいいじゃないか。もう一度二人で惚れ直せ!」と励ますドック。
いつもふざけてばかりのドックの、意外にシンプルで力強い言葉に、ロッキーだけでなく私も
(うん、そうだね)と妙に納得しました。

一方、スニーカーは、岩城夫妻が撮った結婚写真をわざわざ写真館に引き取りに行き、
交通課と一係の親善旅行(!)のアルバムといっしょに令子に見せます。

なんでそんなに一所懸命なのと問われ、
「先輩が好きだから、先輩が選んだ君も好きだから。一係の仲間もみんなそうだ」と
これまた直球。このひたむきさが令子に届き、彼女は記憶を取り戻すために事件現場に
連れて行ってほしいとロッキーに申し出ます。

「あなたが守ってくれるわ」
令子の言葉どおり、ロッキーと一係のメンバーがガードしてあの日の行動をなぞり、
事件現場で高岡の仲間に襲われながらも結局そこでは何も思い出せず。
しかし、事件後初めて帰ったアパートの食卓で、令子の記憶はよみがえるのでした。



スコッチが当たり前にいるのがうれしいし、ゴリさんの“こういう人職場にいそう感”がさすがだし、
なにより長さんがかわいい。

#421 ドックとスニーカー

2017年10月22日 | 太陽にほえろ!


非番の日、街を歩いていてふとしたことから医者と間違えられ、若い女にアパートに誘われるドック(神田正輝)とスニーカー(山下真司)。
逆ナンパにニヤニヤしている二人だが、そこには腹を怪我した男と、拳銃を持った男が待っていた。
管内で銀行を襲った際に拳銃が暴発して怪我をしたが、病院には行けず治療してくれる医者を探していたのだ。


8人体制の一係で、若手二人を同じ日に休ませてくれるというのはなかなか太っ腹なボス(石原裕次郎)ではないでしょうか。

非番でも呼び出しに備えてポケベルを持ち歩くスニーカーと、そんなもん持ってんのかと驚くドック。
ガールハント(死語)しようというドックを、刑事なのにと責めつつ、自分も眼医者だと偽って女の誘いに着いていくスニーカー。
わちゃわちゃとしたやりとりが、ふつうの20代男子です。

真面目なスニーカーは、ドックみたいなタイプに反発するかと思いきや、一係の中ではもっとも早くからドックのキャラクターを
受け入れていた気がします。まあ、タイプが違うからこそ仲良しというのはよくあることです。

ドックは実家の西條外科医院に忍び込んで薬や治療器具を失敬し、ついでに手がかりを残していくのですが、
ここで重箱の隅をつつくような疑問を…。

1. ドックのお父さんは勝さんのはずだが、病院の看板には「西條恒男」と。おじいちゃんか?
2. 西條外科医院はこのあとも、「父親」「ドック刑事のシアワセな日」等に出てくるが、
  毎回外観および診察室が違う。ドック本人はともかく、開業医の実家がそうそう引っ越さないと思うんだけど。


怪我人の治療と保護を最優先し、冷静に時機を待つドックと、そんな彼の態度に不信感を抱きつつも、
機転を利かせてボスに居場所の手がかりを伝え、犯人逮捕のタイミングをうかがうスニーカー。
ピンチを乗り越え、みごと犯人を逮捕した二人は、このあとさらに名コンビになっていきます。


おなじみの一係、ボスの机を囲んでの一コマ。

「ちょいと見直したね。手術をやりなおした執刀医が、『たいへん見事な処置だった』と感心しておりました」と、
嬉しそうにボスに報告するゴリさん(竜雷太)。ドックの調子の良さに辟易していたはずなのに、良いところはちゃんと認めて褒めてくれる。

「さすが、医学部」というロッキーに、「でも中退」とスニーカー。すかさずファイティングポーズをとるドック。
「実はですね、腹の傷だけにハラハラでした」というジョークで乾いた笑いを引き起こし、
「車に戻ってから二人で逮捕した方が確実だった」と疑問を投げかけるスニーカーに、「それじゃ俺が撃たれていたかもしれない」とドック。
二人の追いかけっこを、心底(うるっせーなー)という顔で見ているボス。

みんなの息の合った掛け合い、間合いが心地よく、自分もその場にいていっしょに笑っているような感じがします。




「大都会 PARTⅡ」トクさんとジン

2017年10月18日 | 刑事・探偵モノ
子どものころ、再放送していたのは「PARTⅢ」が多かった気がします。テーマ曲は好きでカセットに録ったりしていましたが、
「太陽っ子」だったため、どちらかというとライバル視してたのか、さほど熱心に見てはいませんでした。

最近になって、ネットで「闘いの日々」「PARTⅡ」のDVD発売のPVを観て、「うわ、なんだこれ、かっこいいー!」と興奮し、
某ビデオ・オンデマンドの無料視聴期間を利用して、観倒しました。
今は、太陽のDVDを集めたいと思っているので我慢していますが、早晩「大都会」にも手を伸ばしそうで怖いです。

「闘いの日々」の豪華すぎるキャストによる渋すぎる作劇については、またの機会にと思いますが、
「PARTⅡ」で印象に残ったコンビについて、今日は書いてみたいと思います。


松田優作さんと神田正輝さん。私にとっては、七曲署のジーパンとドックですが、ここでは城西署のトクとジンです。
太陽でもまったく時期が違うし、役者のタイプも違うので、「PARTⅡ」を観るまで接点があるとは知りませんでした。

松田さんに対して、私が観てきた作品の役柄からか、周りとつるまず、ピンで活躍している超人的なイメージを持っていたのですが、
トクさんは、城西署捜査一課において、黒さん(渡哲也さん)の右腕であると同時に若手のまとめ役も担っていて、
口は悪いし乱暴だけど、思いのほか後輩の面倒もいとわない頼れる兄貴なのでした。

そして、ジンは見るからにピヨピヨな新米刑事で、黒さんに指示されることといえば、
逃走する車両のナンバーを控えたり、発煙筒の弾交換だったり。
経験が浅いので、ベテランの丸さん(高品格さん)や坊さん(小野武彦さん)と組むことも多いですが、
トクさんとのコンビでは、心なしかジンが調子に乗ってふざけていて、トクさんに頭をはたかれたりする場面が何度も見られます。

ライフルを乱射して立てこもる犯人に、トクさんが「金森(キンモリ)!!」と呼びかけ、横にいたジンが律儀に
「カナモリですよ」と訂正するシーンがあるのですが、松田さんと神田さんのそれぞれがもつ可笑しみがにじみ出ていて
ベタなんだけど笑ってしまいます。


圧倒的な華がありながらも、一刑事として集団の中に収まってもいるトクと、演じる松田優作。
彼の存在が「大都会」シリーズの中でも「PARTⅡ」を特別なものにしています。
今までちょっと遠い存在でしたが、トクさんを観て、松田優作が好きになりました。

一方、役柄同様まだまだ未知数なジンと、演じる神田正輝。
リボルバーの拳銃を構える姿が新鮮ですが、銃撃戦ではほとんど活躍していません。
ただ、新人のため車を運転することが多く、控えめなジンのキャラクターからすると
驚くほど果敢な走りを見せています。
#35「危機迫る賭け」、#48「狙われた刑事」などのカーアクションが見応えありました。


パッと見、どちらかというと合いそうにない二人が、プライベートでも当時いっしょにご飯やサウナに行ったりしていたと知り、
意外だけどなんだか嬉しいです。(実年齢が一つしか違わないというのも意外でした)
松田さんが元気だったら、また共演する機会もあったんでしょうか。





#424 拳銃を追え!

2017年10月13日 | 太陽にほえろ!


拳銃ってものはね、遊びや道楽で済むもんじゃないんですよ。
持てばいつかは必ず撃ちたくなる。
人を殺したくなるんです。



かつて、自分が撃つのをためらったばかりに先輩刑事を死なせてしまった過去をもつスコッチ(沖雅也)。
そんな彼が、街に出回っている45口径の拳銃3丁のゆくえを追います。

今回の相棒は、登場回で「学生時代に海外の射撃場でバンバン撃ちまくってシビれた」とぶっちゃけたドック。
そんな彼も、もうすこし後になって、初めて犯人を射殺して動揺し、自身も撃たれたり、仲間を失ったり…という
経験を重ねて、拳銃に対する向き合い方も変わっていきますが、今はまだ怖さを知らないようす。
事件が解決したら音大生を紹介してもらえると信じて、スコッチを手伝います。

孤高の人だったスコッチが、このころには若手を率いて現場を回すようになっていました。
実際の年齢は沖さんが一番下だったそうですが、ドラマの中ではスコッチが長兄、
次いでロッキー、さらにドックとスニーカー…という印象です。


「太陽」の中で、私が本当に射撃が上手そうだなと思ったのは、沖さん、竜さん、神田さんです。
役の設定のままといえばそうですが、みなさん拳銃が手になじんでいるというか、動きに無駄がなく、
構えた時にピタッと止まるし、ちゃんと銃の重みを感じます。

かっこいいなーと思うと真似をしたくなるのが人情というもの。興味のあるものはとりあえずやってみるタチですが、
ここで射撃に手を出さなかったのは、冒頭のスコッチの言葉があったから。

実際にはそうそう簡単に当たるものではないでしょうが、根拠のない自信があって、やれば上手くなってしまう気がしていましたw
そして、的では満足できず人を殺したくなったらどうしようと…。

「太陽」の長い歴史の中でも、私の中にしっかりと刻み込まれたセリフのひとつです。