太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#518 忘れていたもの

2018年03月29日 | 太陽にほえろ!
冒頭から、「太陽にほえろ!序曲」をバックに、ロッキー(木之元亮)とドック(神田正輝)が犯人を追って
工場のような場所へ。銃撃戦の末、ロッキーが犯人・水原に手錠を打って事件解決。
久しぶりに躍動感のある幕開けです。

水原の撃った弾丸の数でもめたふたり。結局ロッキーの方が正しかったのですが、
「大きいんだからね、ちっちゃいことこだわらないの」
ドックにはぐらかされ、その後も折にふれ責めるロッキー。案外こまかいですw

その夜、ロッキーのおごりでご飯を食べに行った若手4人。
そこで、ラガー(渡辺徹)に言われるまでマッターホルンのポスターに気づかなかったロッキーは、
そんな自分にショックを受ける。




翌日、5歳の女の子が誘拐された。犯人は水原の釈放を要求。
取引現場から逃げた水原をロッキーが車で追うが、逃げようと強引な走行をした水原が一般人の車両を巻き込み
そのまま逃走してしまう。

犯人逮捕しか頭になかった自分、関係ない市民に重傷を負わせてしまったこと、
被害者の妻の激しい非難…ロッキーは、激しく落ち込み仕事もうわの空に。

ドックは軽口を言って元気を出させようとするも、ロッキーは力なく返事するだけ。
見ていた山さん(露口茂)も、そんなロッキーを気遣っているのがわかる。



家に帰ると、赤ん坊が破ってしまったカナディアンロッキーのポスターを、令子(長谷直美)がつなぎ合わせて
貼っていてくれた。
刑事になる動機になった登山仲間の死を思い出し、ロッキーは日々の忙しさの中で、大切なものを忘れていたことに
思い至る。



気力をとりもどしたロッキーは、精力的に聞き込み捜査。水原と共犯者の行方を追う。
「お腹空いたよぅ、俺」と休みたがるドックですが、さっきひとりでリンゴ食べてましたがな。



生真面目なロッキーと、マイペースなドックのコンビも好きです。
警察学校の期としてはドックが先輩ですが、年はほぼ変わらないんでしたよね。
そのせいか、スニーカー(山下真司)がいたころから同期っぽい気安さがお互いにあった気がします。

あんなに怒っていた被害者の奥さんが態度を軟化させ許してくれたのは、
実はドックが病院に行って被害者に謝ってくれたからだと知ったロッキー。

気にしていないようで、ちゃんと自分を気にかけ行動に移してくれたドックの友情に、
ロッキーも力を得る。しみじみといいコンビです。

そんなふたりが水原を発見、追いつめる。
ロッキーは、現場にいた子供たちに気づき、水原の発砲にも恐れず飛び出していく。
拳銃恐怖症だったロッキーですが、父となったいま、刑事としても一段と強くたくましくなりました。

それにしても、ドックはどうしていつも子供に気づかないんでしょう。
#491でもロッキーに指摘されるまで気づかず、反省していたはずなのにw



【最後の?乾杯】
事件解決後、ロッキーは、ボス(石原裕次郎)に休暇をもらいロッキー山脈へ。
あの晩、ロッキー、ドック、ジプシー(三田村邦彦)、ラガーで交わしたのが最後の乾杯になるのでしょうか。
弾丸の数やら、映画の話やら、なにげない日常のひとこまが、あとから考えるとかけがえのない時間だったと思う。

危険と隣り合わせの彼らだけではなく、私たち誰もが明日をも知れぬ身。
それだけに、誰かと過ごす時間というものをもう少し意識して大事にしなきゃなと思います。




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#493 スコッチよ静かに眠れ

2018年03月20日 | 太陽にほえろ!

「刑事はもうすぐ廃業だ」

古傷が悪化して病床に臥していたスコッチ(沖雅也)が、命を懸けて最後の事件に挑む。


1982年怒涛のメンバーチェンジ。前年のスニーカー(山下真司)退職、ラガー(渡辺徹)の加入につづき、
年が明けてまもなくついにスコッチが去ります。

このあと、ロッキー(木之元亮)殉職、長さん(下川辰平)転勤、ゴリさん(竜雷太)殉職と別れがつづく一係ですが、
スコッチの場合は、切り離して観ようとしてもどうしても沖雅也さん自身とだぶってしまってつらいです。

それでも、病をおして戦うスコッチを、同じように病と闘いながら演じきった沖さんを見送らなければ次に進めないなと思います。

一匹狼で一係のチームワークをかき乱す存在だったスコッチが、しだいに心を開き
いつのまにかベテランと若手の橋渡しのような、なくてはならない存在になっていました。

私自身、出てきたころのスコッチは人を寄せ付けない感じで正直ちょっと苦手でしたが(たぶん今見たら違う印象をもつと思う)、
後半のかっこよさとユーモアを併せ持ったキャラクターは好きでした。




病院を抜け出し、ボス(石原裕次郎)に電話をかけて最後のわがままに許しを請うスコッチ。
「私は最後まで刑事でいたいんです。ボスの部下でいたいんです」
ボスに怒鳴られ嬉しそうなスコッチに、ボスも「わかった」というしかない。

自分に復讐をしようとしている男から改造拳銃の製造基地の場所を聞き出すため、ロシアンルーレットで脅す。
もはや自分の命も短いことは覚悟しているので、引き金を引くのに躊躇しません。

ようやく聞き出したのに無理が祟って吐血、その場に倒れてしまう。
病院に運ばれたスコッチが最期のときを迎えるとき、そばにいたのは最初にあんなに反目していたゴリさんでした。
駆けつけた山さん(露口茂)は、「ボスももうすぐ来るぞ」と励ます。

最近は若手を率いてリーダーシップをとることが多かったスコッチですが、
最後のエピソードでは、ボス、山さん、長さん、ゴリさんと、先輩たちとの絡みが多く、
「死にたくない」という本音をもらせたのが観ていて少しホッとしました。

必死に笑顔を作りながらポロポロ涙がこぼれてしまうゴリさんには、私も泣かされました。

殉職編というのは本人も周りも格別な思いで演じるのだと思います、
命が消えてゆくさまを繊細に演じた沖さん。
必死にこちらにつなぎとめようとする竜さん。見守る露口さん。
演技をこえたものが伝わってきて、凄みすら感じます。

新しい沖雅也には会えないけれど、こうして作品を何度も見返すことができるのだから、
これからも彼は私たちのなかに生きつづけていくのでしょう。
殉職編のレビューはしましたが、行きつ戻りつしながら、また元気なスコッチやキャプテンにふれたいと思います。



コメント (2)
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#505 ジプシーの涙

2018年03月04日 | 太陽にほえろ!
矢島という男が自宅マンションで殺された。
部屋にあった写真から、恋人と思われる女性・弘美を訪ねるジプシー(三田村邦彦)とドック(神田正輝)。弘美は姉の景子と同居しているが、姉の態度に何かひっかかるジプシーたち。

弘美は、ここ1週間ほど矢島と会っていないと言ったが、その後事件の数日前に、矢島と口論している弘美を見たという
目撃者が現れた。

弘美を追及すると、あっさりと犯行を認めた。
しかし、犯行現場の状況と自白に食い違う点がありひっかかる。

ジプシーは、姉妹の故郷を訪ね、幼いころ火事で両親を亡くし、景子が弘美の母親代わりになって
ふたりで寄り添って生きてきたという過去を知る。



突然のサービスショットw 捨てられた子犬とジプシー

親戚に預けられて虐待されながらも姉が妹をかばい、逆境を乗り越えてきた。
ふたりの境遇を近所の主婦から聞いたジプシーは、自分の境遇と重ね、自分には庇ってくれる人はいなかったと
孤独だった少年時代を振り返り静かに涙を流します。

顔を洗っていると、どこからともなく子犬がw
あまりにいかにもなシーンで、申し訳ないがちょっと笑ってしまいました。
いや、原少年の過去は同情しますが。

そして、姉妹の境遇を語ってくれた近所のおばさんが上手くて(もちろん俳優さんなんでしょうが)、
ナイスキャスティング。



一係では、姉の景子が矢島から妹を守るために殺したのではないかと推理。
姉には婚約者がいることから、ずっと助けられてきた妹が姉の身代わりを買って出たのではないかと。

景子が自白し、拘留された。しかし、そのときにふと見せた微笑にジプシーは疑問を抱く。

二転三転する姉妹の告白。ジプシーはそれぞれの表情や言葉を丁寧に分析し、真実に迫っていく。
けっきょく、矢島を殺したのは妹の弘美だった。
いくら姉妹だからといって殺人の罪を被るだろうか。
ふつうはそう考えるけれど、この姉妹にとってお互いのために犠牲になることは自然なことだった。

「どうして私が犯人じゃいけないの」
釈放された姉に問われ、ジプシーは自分も似たような境遇であると、嘘は許せないと、
昔のような嘘や打算のないふたりでいてほしいと語りかける。

自分たちと同じようなつらさを味わってきたであろうジプシーの言葉だからこそ、
景子の心にまっすぐに届き、自然に涙がこぼれたのでしょう。
妹を守るために演技しつづけてきた姉が、やっと自分の感情を素直に出せた瞬間だったと思います。


【本日のなごみ】
ジプシーが真実にたどり着く前、姉の景子の犯行だと思われていたときに、
一係では、景子の正当防衛が認められるだろうし、婚約者の気持ちも変わらないし、弘美も一流企業を
辞めずにすむし、一同(除く山さん)にほっとした空気が流れる。

「遅いな、カルメンちゃん」
「事件は解決したってのに、めずらしいですね遅刻なんて。ねえ、ドック」
時計を見たまま肘でドックをつんつんするラガー(渡辺徹)。


ふたりともかわいいですが、こう見えても凶悪犯罪が多発する東京・新宿、七曲署捜査一係の刑事です。
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