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『特捜部Q ―吊された少女―』 ユッシ・エーズラ・オールスン(著), 吉田奈保子 (翻訳)

2018年01月18日 18時54分00秒 | ■読書
デンマークの作家「ユッシ・エーズラ・オールスン」の長篇ミステリ作品『特捜部Q ―吊された少女― (原題:Den granselose、英題:The Hanging Girl)』を読みました。


「ユッシ・エーズラ・オールスン」の作品は、一昨年7月に読んだ「特捜部Q」シリーズの第2作特捜部Q ―キジ殺し―以来なので約1年半振りですね… 引き続き北欧ミステリが続いています。

-----story-------------
〈特捜部Q〉シリーズ。
引退間際の警官からかかってきた一本の電話は、「カール」たちQのメンバーを十数年前に起きた異常な交通事故の捜査へと導くのだが……。
デンマークの人気警察小説、第六弾!

コペンハーゲン警察の特捜部Q。
未解決事件を専門に扱う部署である。
「カール・マーク警部補」が率いるQに今回舞いこんだのは、17年前に起こった少女轢き逃げ事件。
撥ね飛ばされた少女が、木に逆さ吊りになったまま絶命した悲惨なもので、有力な手がかりもなく放置されていた。
この事件に取り憑かれた警官が自分の退官式で自殺するという衝撃の幕開けから捜査は始まる。
やがて浮かび上がった容疑者は、新興宗教の影がちらつく男だった!あやしげな世界に戸惑いながらも、Qの面々は男を追うが…。
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未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察「特捜部Q」シリーズの第6作… 小口と天・地が黄色に染めてある、懐かしいハヤカワポケミス(ハヤカワ・ミステリ、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOK)版です、、、


これまでに読んだ第1作と第2作が、むっちゃ面白かったので期待して読んだのですが、本作品も期待を超える面白さ… 600ページを超えるボリュームでしたが、テンポが良くて愉しく読めたので、長く感じなかったですね。

たまたま古書店で見つけて買っちゃったので、第3作~第5作を飛ばして読んでしまったのが、ちょっとだけ残念… ホントは順番に読みたいんですが、なかなか古書店でみつからないんですよね。


さてさて、本作も「特捜部Q」責任者の「カール・マーク警部補」(正規な警察官は彼だけ)、助手の「ハーフェズ・エル・アサド」「ローセ・クヌスン」の三人が、強烈な個性を活かしつつ、協力して過去の未解決事件を解決に導く展開が愉しめます… いつの間にか「ゴードン・T・タイラー」という業務管理担当が加わっていましたね、、、

本作でも、「カール」「アサド」の思わずニヤリとしてしまう痛快なやりとりは健在… 辛い試練を乗り越えることで、メンバの絆がさらに深まっている感じがしますね。


「特捜部Q」が今回扱うのは17年前にボーンホルム島で事故死として処理された事件… きっかけはボーンホルム島に勤務する警官「クレスチャン・ハーバーザート」からカールにかかってきた一本の電話だった、、、

退職を前に心残りの事件の再捜査を依頼するものだったが、相変わらずやる気のない「カール」はすげなくあしらう… 翌日、定年退職を祝うパーティーの席上で、「ハーバーザート」が拳銃自殺してしまう。

無碍に拒否したことが引鉄を引かせたのではないか… 「ローセ」からのプレッシャーもあり、「カール」は重い腰を上げることに、、、

轢き逃げされた少女「アルバーテ・ゴルスミト」は、自動車に撥ねられた衝撃で宙に舞い、木に逆さ吊りとなった状態で発見され、事故として処理されていたのだが、第一発見者だった「ハーバーザート」は、家族を失ってまでも、なぜかその事故(事件)について長年独自の捜査を続けており、自宅には捜査資料が山のように残されていた… 「ローセ」はそれを署に持ち帰り、捜査を開始。

「ハーバーザート」の捜査資料の中に、車体の屋根に曲線の一部が見えるワーゲンバスの写真が残され、その傍に男の姿が写っており、「ハーバーザート」は、この男がワーゲンバスで犯行に及んだと推理していたらしい… 「カール」たちは、「ハーバーザート」の家族に接触するが、元妻「ジユン・コフォーズ」は非協力的な態度を示し、息子「ビャーゲ」は既に自殺していた。

そして、彼らの捜査と交互に描かれるのが、容疑者である<人と自然の超越的統合センター>のカリスマ性溢れる導師「アトゥ・アバンシャマシュ・ドゥムジ」と、その右腕である「ピルヨ・アバンシャマシュ・ドゥムジ」の物語… 「ピルヨ」「アトゥ」を愛していたが、「アトゥ」は彼女以外の女性と次々関係を持ち、嫉妬の鬼と化した「ピルヨ」「アトゥ」に近づいた女を次々と消していく… 「アルバーテ」もまた「ピルヨ」の手にかけられたのだろうか?

「ローセ」たちが事件解決の手掛かりを見つけ、「カール」「アサド」は次々と関係者を訪ねて情報を集める… 「アサド」の強引な質問による揺さぶりや、厳しい視線が、相手の告白を引き出し、車椅子に乗れるようにまで回復した「カール」の元部下「ハーディ・ヘニングスン」の助言等もあり、「カール」「アサド」は徐々に「アトゥ」「ピルヨ」に近付いて行く、、、

しかし、「カール」「アサド」の来訪を予期していた「ピルヨ」は、<人と自然の超越的統合センター>を訪ねてきた二人を監禁… 太陽光発電によって感電死させられそうになり絶体絶命のピンチを迎える!

二人揃って痛い目に遭わされるのは、いつものパターンなのですが、お互いに相手を思いやりながら窮地を脱出するシーンは、なかなか感動モノですね… 自分の親指をアース代わりに使うことで、「カール」を助けようとする「アサド」の犠牲的精神には敬服しました、、、

エンディングで17年前の事件の真犯人が明らかになるのですが… 犯人として考えていた人物が二転三転し、まさかのどんでん返しが用意されていました。

「アルバーテ」が邪魔になった「アトゥ」の犯行?
「アルバーテ」に嫉妬した「ピルヨ」の犯行?
「アルバーテ」に嫉妬した「ハーバーザート」の自殺した息子「ビャーゲ」(同性愛者)の犯行?

等々という推理が全く外れちゃいました… 意外な女性の犯行でしたが、動機がわかると、まぁ、それもあるかな って感じでした。

その女性も木に逆さ吊りとなって死んでしまうんですよね… 皮肉ですよね、、、

ホントに面白かったです… 飛ばしてしまった第3作~第5作も早く読みたいな。



以下、主な登場人物です。

「カール・マーク」
 コペンハーゲン警察殺人捜査課警部補。特捜部Qの責任者

「ハーフェズ・エル・アサド」
 カールのアシスタント

「ローセ・クヌスン」
 カールのアシスタント

「ゴードン・T・タイラー」
 Q課の業務管理担当

「ラース・ビャアン」
 コペンハーゲン警察殺人捜査課課長

「トマス・ラウアスン」
 元鑑識官。署内食堂のチーフ

「ハーディ・ヘニングスン」
 カールの同居人。元刑事でカールの元部下

「モーデン・ホラン」
 カールの家の元下宿人。介護士
 
「ミカ・ヨハンスン」
 理学療法士。モーデンの恋人

「クレスチャン・ハーバーザート」
 ボーンホルム島ラネ署勤務の警官

「ジユン・コフォーズ」
 クレスチャンの元妻

「ビャーゲ」
 クレスチャンの息子

「アルバーテ・ゴルスミト」
 轢き逃げされた少女

「クリストファ・ダルビュー(ストゥスゴー)」
 アルバーテの元恋人

「インガ・ダルビュー」
 クリストファの妻

「アトゥ・アバンシャマシュ・ドゥムジ」
 <人と自然の超越的統合センター>の導師

「ピルヨ・アバンシャマシュ・ドゥムジ」
 アトゥの右腕

「バレンティーナ」
 センターの機器メンテナンス係

「ワンダ・フィン」
 ジャマイカ出身のアスリート

「シャーリー」
 ワンダの友人

「スィモン・フィスカー」
 薬草園の経営者。ピルヨのコミューン仲間

「イェスパ」
 カールの義理の息子





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