「松本清張」の社会派推理長篇『棲息分布』を読みました。

『西郷札 傑作短編集〔三〕』、『私説・日本合戦譚』、『梅雨と西洋風呂』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
ロッキード事件を予見した社会派ミステリー。
鉄鋼王の死を糸口にあばかれる、政財界を巻き込んだ巨額の不正。
戦後に急成長を遂げた企業の内幕を描く壮大な社会派推理小説。
〈上〉
戦後、一代で財閥を築いた鉄鋼王「菅沼丑平」の死をきっかけに暴かれていく、政財界を巻き込んだ巨額の不正。
長期にわたる「菅沼」の粉飾決算を助けたのは傘下の運輸会社の社長「井戸原俊敏」だった。
戦争末期に軍需省の上官と共謀して物資を隠匿した過去をもつ「井戸原」は、上流階級出身の妻をも手中におさめ、財界進出を目論んでいた。
〈下〉
「菅沼」の死後、融資の代償として建設会社と銀座のテナントビルを手に入れた「井戸原」は、愛人の新進女優を利用して通産政務次官への接近を図る。
政財界で黒いつながりをもつ男たちの駆け引きと、実力者の愛人という立場を利用する女たちの思惑。
のちの政界スキャンダルを予見したかのような社会派ミステリーの傑作。
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終戦直後の混乱から高度経済成長の過程で築かれた、財界人を中心とする人物相関図を描く、社会派エンタテイメント作品です… ミステリ色は薄かったですね。
オリエント運輸産業の「井戸原俊敏」は、東洋鉄鋼の独裁的会長「菅沼丑平」の傘下にあった… しかし「菅沼」は突然死し、後継者の「幸一」は「井戸原」に融資の継続を懇願する、、、
実は東洋鉄鋼は業績不振を粉飾決算でごまかし、穴埋めに「井戸原」からの借入金を充てていたのだった… 「井戸原」は融資継続の代償として、傘下の建設会社を手中に収める。
続いて「井戸原」は、愛人を利用して政務次官の「志波卓生」に接近、さらなる資金の拡張に乗り出す… 「井戸原」の側近である常務の「根本安雄」は、「井戸原」が何故次から次へと資金を繰り出せるのか、その理由を知っていた、、、
戦時中から続く「根本機関」の人脈を駆使し、「井戸原一族」の下半身の乱脈を嗅ぎ付ける中で、「根本」はひそかに「井戸原」打倒の策を練り始めるが… 元軍需省の雇員で終戦間際のどさくさに紛れて軍が隠匿していた軍需品を外部に持ち出し、闇市で売り飛ばして莫大な資産を築いた「井戸原」と、その犯罪を摘発しようとしていた元陸軍憲兵大尉の「根本」の立場は、「井戸原」の成長により、いつの間にか逆転していただけでなく、「井戸原」が人物としても、企業としても、巨大な存在になってしまったことから、さらに広がっており、「根本」の謀略程度では、全く影響を受けない存在になっていたんですよね。
「根本」の思惑は叶わなかったばかりか、「井戸原」は「根本」の謀略を利用して、さらに大きな存在になってしまったようです… 本作品は特定の人物をモデルにした作品ではないとのことですが、ロッキード事件の「小佐野賢治」や「児玉誉士夫」等の政界の黒幕と呼ばれた男たちが登場人物のモデルになっているのかもしれませんね、、、
リアリティがあり、フィクションとノンフィクションの世界が渾然一体となっているところが、本作品の魅力だと感じました。
以下、主な登場人物です。
「井戸原俊敏」
オリエント運輸産業社長。元軍需省雇員。
終戦後、豊富な資金力で成り上がっていった。
その暗い過去とは…。
「根本安雄」
オリエント運輸産業常務。
元陸軍憲兵大尉。井戸原の過去を知っている。62歳。
「志波卓生」
通産省政務次官。将来の有力閣僚候補。
「井戸原初子」
井戸原俊敏の妻。公卿の血をひいている。
「倉田幸子」
銀座で洋装店を経営。初子とは以前からの知り合い。
「福島千鶴子」
高級婦人服店「ハレルヤ」の経営者。志波卓生の愛人。
「菅沼幸一」
東洋鉄鋼社長。ワンマン経営者・菅沼丑一の後を継ぐ。
「森田孝夫」
スポーツ紙「スポーツ東京」記者。
「山根光広」
プロ野球「コンドルズ」のピッチャー。
「白妙雪子」
落ち目の映画女優。本名は竹村美奈子。
「瑞穂高子」
売り出し中の女優。本名は下津井キヌ子。
「井戸原章治」
井戸原初子の甥。
「佐々木良三郎」
井戸原章治の従弟。
「佐々木妙子」
良三郎の妻。派手な顔立ちで饒舌。
「田所哲夫」
福生証券の社員。佐々木妙子の情人。
「木山重男」
業界雑誌「財界潮流」を運営。

『西郷札 傑作短編集〔三〕』、『私説・日本合戦譚』、『梅雨と西洋風呂』に続き「松本清張」作品です。
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ロッキード事件を予見した社会派ミステリー。
鉄鋼王の死を糸口にあばかれる、政財界を巻き込んだ巨額の不正。
戦後に急成長を遂げた企業の内幕を描く壮大な社会派推理小説。
〈上〉
戦後、一代で財閥を築いた鉄鋼王「菅沼丑平」の死をきっかけに暴かれていく、政財界を巻き込んだ巨額の不正。
長期にわたる「菅沼」の粉飾決算を助けたのは傘下の運輸会社の社長「井戸原俊敏」だった。
戦争末期に軍需省の上官と共謀して物資を隠匿した過去をもつ「井戸原」は、上流階級出身の妻をも手中におさめ、財界進出を目論んでいた。
〈下〉
「菅沼」の死後、融資の代償として建設会社と銀座のテナントビルを手に入れた「井戸原」は、愛人の新進女優を利用して通産政務次官への接近を図る。
政財界で黒いつながりをもつ男たちの駆け引きと、実力者の愛人という立場を利用する女たちの思惑。
のちの政界スキャンダルを予見したかのような社会派ミステリーの傑作。
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終戦直後の混乱から高度経済成長の過程で築かれた、財界人を中心とする人物相関図を描く、社会派エンタテイメント作品です… ミステリ色は薄かったですね。
オリエント運輸産業の「井戸原俊敏」は、東洋鉄鋼の独裁的会長「菅沼丑平」の傘下にあった… しかし「菅沼」は突然死し、後継者の「幸一」は「井戸原」に融資の継続を懇願する、、、
実は東洋鉄鋼は業績不振を粉飾決算でごまかし、穴埋めに「井戸原」からの借入金を充てていたのだった… 「井戸原」は融資継続の代償として、傘下の建設会社を手中に収める。
続いて「井戸原」は、愛人を利用して政務次官の「志波卓生」に接近、さらなる資金の拡張に乗り出す… 「井戸原」の側近である常務の「根本安雄」は、「井戸原」が何故次から次へと資金を繰り出せるのか、その理由を知っていた、、、
戦時中から続く「根本機関」の人脈を駆使し、「井戸原一族」の下半身の乱脈を嗅ぎ付ける中で、「根本」はひそかに「井戸原」打倒の策を練り始めるが… 元軍需省の雇員で終戦間際のどさくさに紛れて軍が隠匿していた軍需品を外部に持ち出し、闇市で売り飛ばして莫大な資産を築いた「井戸原」と、その犯罪を摘発しようとしていた元陸軍憲兵大尉の「根本」の立場は、「井戸原」の成長により、いつの間にか逆転していただけでなく、「井戸原」が人物としても、企業としても、巨大な存在になってしまったことから、さらに広がっており、「根本」の謀略程度では、全く影響を受けない存在になっていたんですよね。
「根本」の思惑は叶わなかったばかりか、「井戸原」は「根本」の謀略を利用して、さらに大きな存在になってしまったようです… 本作品は特定の人物をモデルにした作品ではないとのことですが、ロッキード事件の「小佐野賢治」や「児玉誉士夫」等の政界の黒幕と呼ばれた男たちが登場人物のモデルになっているのかもしれませんね、、、
リアリティがあり、フィクションとノンフィクションの世界が渾然一体となっているところが、本作品の魅力だと感じました。
以下、主な登場人物です。
「井戸原俊敏」
オリエント運輸産業社長。元軍需省雇員。
終戦後、豊富な資金力で成り上がっていった。
その暗い過去とは…。
「根本安雄」
オリエント運輸産業常務。
元陸軍憲兵大尉。井戸原の過去を知っている。62歳。
「志波卓生」
通産省政務次官。将来の有力閣僚候補。
「井戸原初子」
井戸原俊敏の妻。公卿の血をひいている。
「倉田幸子」
銀座で洋装店を経営。初子とは以前からの知り合い。
「福島千鶴子」
高級婦人服店「ハレルヤ」の経営者。志波卓生の愛人。
「菅沼幸一」
東洋鉄鋼社長。ワンマン経営者・菅沼丑一の後を継ぐ。
「森田孝夫」
スポーツ紙「スポーツ東京」記者。
「山根光広」
プロ野球「コンドルズ」のピッチャー。
「白妙雪子」
落ち目の映画女優。本名は竹村美奈子。
「瑞穂高子」
売り出し中の女優。本名は下津井キヌ子。
「井戸原章治」
井戸原初子の甥。
「佐々木良三郎」
井戸原章治の従弟。
「佐々木妙子」
良三郎の妻。派手な顔立ちで饒舌。
「田所哲夫」
福生証券の社員。佐々木妙子の情人。
「木山重男」
業界雑誌「財界潮流」を運営。
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