醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   42号   聖海

2014-12-27 10:02:14 | 随筆・小説

  和食文化について 

侘輔 「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された
    ということは日本食が世界文化遺産として世界に認められたということ
    だよね。そうだろ、ノミちゃん。
呑助 ワビちゃん、日本食って、凄いんだね。
侘助 日本食がこんなに世界に認められた理由は何だと思う。
呑助 それは日本食が健康に良いからなんじゃないの。世界一の長寿国だしね。
   そうでしょ。
侘助 日本食を世界無形文化遺産にしたもの、そのもとになったのは日本酒造り
   の文化が決定的に重要な役割を果たしているんだ。
呑助 へぇー、日本食の味と日本酒とはどんな関係にあるのかねー。
侘助 日本食の味のもとになっているのは、出汁(だし)にあるんだ。この出汁を
   作るのは昆布と鰹節だろう。
呑助 その昆布と鰹節の出汁で作った味噌汁はうまかったな。俺が子供の頃おふ
   くろは削り節と昆布で出汁を採っていたのを覚えているよ。粉末の味噌汁
   の素とは味が違っていたように思うね。
侘助 そうだろう。昆布と鰹節で採った出汁がどうておいしいのかというと、そ
   れは昆布も鰹節も熟成したものを使っているからなんだ。熟成したものと
   いうのはカビの生えたものをいうんだ。
呑助 へぇー、カビなんだ。カビというと毒、そんな思いが強いけれどもねぇー。
   カビか。
侘助 そうなんだよ。カビはもともと毒だったんだ。その毒を無毒化し、旨味を
   作り出すカビにしたのは酒造りをしていた者たちだったんだ。酒造りはま
   ず、蒸した米に麹菌を撒き、カビを繁茂させるでしょ。それを麹と言って
   いるわけだけどね。そのカビが米のでんぷんをブドウ糖に変える。ブドウ
   糖を酵母が食べてアルコールをだす。そのアルコールが日本酒だ。
呑助 そんな技術を昔の日本人はどのようにして手に入れたのかね。
侘助 甘い水があれば、その水は酒になる可能性を持った水なんだ。その甘い水
   に酵母が入れば酒になる。原始の人は自然の中に酒を発見した。同じよう
   に炊いた飯米にカビが生え、その飯が甘くなることを知る。その偶然を意
   識的に作り出そうと試みたわけなんだ。
呑助 そりゃ、長い年月がかかったことだろうね。
侘助 もちろん、数千年かかったことだろうね。カビとはもともと毒だったんだ
   から。その毒のカビの中から旨味を作り出すカビを作り出していったのだ
   からね。それも経験を蓄積し、経験に経験を繰り返してカビづくりをした。
呑助 カビとはデンプンを糖に変えるものだよね。
侘助 そうだよ。そのカビが大豆のでんぷんを糖に変えると醤油や味噌になる。
   穀物のでんぷんを糖に変えると酒や酢になる。昆布に生えると熟成した昆
   布になる。魚のカツオに生えると鰹節になる。そのカビをアスペルス・オ
   リゼというんだ。
呑助 へぇー。なんか、難しい名前だね。そのオリゼとかいうカビが日本食の味
   を作っているということなのかね。
侘助 そうなんだよ。アスペルス・オリゼというカビがわれわれの祖先が作り出
   した物なんだ。

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