徒然草第230段 五条内裏には、妖物ありけり
原文
五条内裏(ごでうのだいり)には、妖物(ばけもの)ありけり。藤大納言殿(とうのだいなごん)語られ侍りしは、殿上人(てんじやうびと)ども、黒戸にて碁を打ちけるに、御簾(みす)を掲げて見るものあり。「誰そ」と見向きたれば、狐、人のやうについゐて、さし覗(のぞ)きたるを、「あれ狐よ」とどよまれて、惑ひ逃げにけり。
未練の狐、化け損じけるにこそ。
現代語訳
五条大宮内裏には化け物がおった。藤大納言殿(とうのだいなごん)が語られたことによると殿上人(てんじやうびと)たちが黒戸の御所で碁を打っていると御簾を掲げて見る者がいた。「誰か」と振り向くと狐が人のような膝をつけ座って覗き見しているのを、「あれ狐だ」と驚かれたので慌てて逃げてしまった。
未熟な狐が化けそこなったことだ。
落語『初音の鼓』 白井一道
骨董趣味の殿様に、毎回胡散臭いものを売りつけてゆく古商人の吉兵衛。 今日も今日とて「初音の鼓」という怪しい鼓を、百両という大金で殿様に売りつけようと画策する。
『初音の鼓』といえば、源義経が静御前に与えたとされる代物で、源九郎狐の親の雄狐雌狐の皮が張られており、本物であれば何百金にもなる由緒正しい品であるのだが、当然本物であるはずがない。
そこで吉兵衛はこの鼓が本物である証拠として「鼓を打つと、傍らにいる者に狐の霊が乗り移って『コンッ』と鳴く」と殿様に吹き込み、試しに鼓を打つ殿様の前で狐の鳴き真似をして、狐が乗り移った芝居をする。
さらに吉兵衛は、殿様の重臣である三太夫を買収し、三太夫にも狐の鳴き真似をさせることによって、まんまと殿様を騙すことに成功する。
すっかり本物だと信用した殿様は百両で買うと確約するが、その前に今度は「自分ではなく吉兵衛が鼓を打ったら、自分にも狐が乗り移るのかどうか試してみたい」と言い出し、流石に殿様まで買収することは出来ないので吉兵衛は窮地に陥ってしまう。
いざ恐る恐る吉兵衛が鼓を打つと、なんと殿様が『コンッ』と鳴いた。吉兵衛が贋物だと思っていた鼓は、実は本物だったのである。
その後、何度打っても殿様がコンコンと鳴くため、吉兵衛は本物の鼓であることに感動すると同時に、今まで自分が働いてきた詐欺まがいの行為に恥ずかしさを覚える。
それはさておき、肝心のお勘定をしてもらうと、殿様からいただいた包みには一両しか入っていない。
吉兵衛がお代は百両だと確認をすると、殿様は「それでよいのじゃ。余と三太夫の鳴き賃が差し引いてある」と答えるのであった。
ウィキペディアより
白面金毛九尾の狐
紀元前11世紀頃、中国古代王朝殷の最後の王である紂の后、妲己を喰い殺して妃に化けると暴政を敷いたため、周の武王率いる軍勢により捕らえられ、処刑された。 この処刑の際に、太公望が照魔鏡を取り出して妲己にかざし向けると、白面金毛九尾の狐の正体を現して逃亡しようとしたため太公望が宝剣を投げつけると、九尾の体は3つに飛散した。一つは若藻という少女に化け、彼女に惑わされた吉備真備の計らいによって、阿倍仲麻呂、鑑真和尚らが乗る第10回目の遣唐使船に乗船し嵐に遭遇しながらも来日を果たした。 来日から約360年後、北面の武士である坂部行綱が子宝に恵まれなかったため、九尾の狐が化けたとも知らずに藻女という捨て子を拾い、大切に育てられる。 その17年後、坂部夫婦に大切に育てられた藻女は18歳で宮中に仕え、玉藻前と改名する。その才能と美貌、優しさから、次第に鳥羽上皇に寵愛され、契りを結ぶこととなる。しかしその後、鳥羽上皇は病を発する。そして、その原因が玉藻前であると発覚し、玉藻前は白面金毛九尾の狐の姿で宮中から逃亡した。 数年後、彼女は下野国・那須に現れ、婦女子や旅人を誘拐し喰い殺すなどの暴行を働いたため、鳥羽上皇は白面金毛九尾の狐の討伐を命令すると8万の軍勢が那須へ向かう。軍勢は白面金毛九尾の狐を殺すことに成功する。九尾の狐はその直後、殺生石という巨大な毒石に姿を変える。 その後玄翁和尚によって、殺生石は破壊され、各地へと飛散したという。
ウィキペディアより
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