醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  791号  白井一道

2018-07-15 12:23:31 | 随筆・小説


  明治150年を思う


句郎 中世ヨーロッパ世界にあってイギリスはいち早く市民革命を実現した。フランスは人権宣言を制定した大革命、フランス革命を実現し、法の支配という民主主義社会を実現した。一方神聖ローマ帝国の領域にあったプロイセン、オーストリアやロシア帝国の場合は再版農奴制という中世ヨーロッパの古い制度が復活し、強化されていった。ヨーロッパの西側に位置する英仏に比べて東側に位置したドイツやロシアにあっては、世界史の大きな流れに逆行する動きがあ
ったんだ。
華女 歴史とは不思議な発展をするものなのね。
句郎 そうなんだ。イギリスで綿布生産が隆盛を極めるとアメリカ南部でアフリカ人奴隷が綿花を栽培をする大農園が出現していったんだからね。アメリカ南部に入植した白人たちの豊かな生活の裏にはアフリカ人奴隷の涙があったんだ。
華女 欧米諸国が近代化したいうことは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の人々にとって時代に逆行する社会に突き落とされてしまったとい
うことなのね。
句郎 どうもそのようなんだ。現代社会にあっても「低開発の開発」ということをいった学者がいる。一九七六年にフランクは『世界資本主義と低開発』という著書を著した。この著書の中で発展途上国はヨーロッパ中世においてあったような再版農奴制のような状況にあるということを述べている。第三世界の発展とは、低開発を強制されていると述べている。
華女 日本はいち早く西洋諸国の仲間に入れてもらい、アジア諸国の仲間に入ったら大変なことになると悟ったのね。
句郎 福沢諭吉がそのような歴史観を持っていたのじゃないのかなと思っているんだ。
華女 アジア諸国を踏み台にして日本は欧米諸国の仲間に入れてもらおうとしたということなのね。
句郎 そうなんだ。「脱亜入欧」というスローガンを福沢諭吉は唱えているからね。
華女 凄まじい生存競争を勝ち抜くためだと福沢諭吉は考えていたのかしら。
句郎 そうなのかもしれない。英の政治家セシル・ローズはイギリスの貧しい人々を救うためにアフリカ諸国を植民地支配したと述べているからね。英国も生存競争を生き抜くため侵略戦争をしたということなんじゃないのかな。
華女 「乏しきを分かち合う」という思想を現実に実現するということは難しいことなのね。
句郎 中国がアヘン戦争によってイギリスの半植民地になっていった。このことを福沢諭吉は知っていたのかもしれないな。だから中国のようになってはならないと考えたのかもしれない。しかしアヘン戦争、アロー戦争に対する中国人の抵抗が激しかったので英仏は日本を植民地支配する軍事的余力がなかったので、日本は英仏の植民地にならずに済んだ。
華女 あら、そうなの。日本が西洋諸国の植民地にならずに済んだは、日本と言う国を西洋諸国は恐れたからだというような話を子供のころに聞いた気がするわ。
句郎 そう、日本は神の国だというような神話がまだ生きているのかな。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿