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主夫の徒然なるままに

「ゆとり教育」の誤解

「ゆとり教育」について、個人的に以下のように理解していた。

 1970年代後半から1980年代にかけて、中学校での校内暴力の嵐、その原因に詰め込み教育・偏差値教育があげられる。知識量偏重の画一的な教育と体罰教師に代表される管理教育に、教育制度と教師に見捨てられた中学生の反抗が校内暴力として蔓延した。そこに登場したのが、「ゆとり教育」だと理解していた。授業内容の3割削減・個性重視の教育などがうたわれた。1998年。

 例えば、福岡県の中学生の日本地理では、日本の県3つのみ学習することになった。福岡県と東京都と岩手県のみ。世界地理では、アメリカとドイツとマレーシアしか学習しない。米欧アジアから3か国のみの学習が全国の基本であったらしい。これにはかなり驚いた。歴史を学ぶにしろ経済を学ぶにしろ、あるいは理科を学ぶにしろ地理の知識はすべての基礎だと思っていたので驚きであった。しかも、高校入試問題では、例年と変わらない全国の県、全世界の国を対象とした問題が出され続けていた。さらに、高校では「世界史」が必修となったが、アジアやヨーロッパの国々を知らないで世界史を学べるのだろうかと疑った。

 中学英語も関係代名詞などが骨抜きになっていたが、その分は、高校に回された。つまり、高校ではより多くの学習内容が盛り込まれることになったわけだ。福岡県の進学高校は、0(ゼロ)次元の授業が当たり前で、7時に到着するバスにのるため5時過ぎには起きて登校する。地獄のような高校生活であったようだ。(5年ほど前より0次元授業は廃止された)

 永井忠孝著「英語の害毒」に「ゆとり教育」についての解説がある。通常、ゆとり教育とは、学習内容の3割削減と認識されているが、それはゆとり教育の半分しか理解していないということだ。残りの半分は、学習指導要綱が「最低基準」になったということにある。今まで入試などでは教えていないこと、教科書に載っていないことは入試問題にださないのが基本であったが、この「ゆとり教育」によってそのタガがはずされた。公立の小中学校では、この最低限の学習が中心となるが、上位の私立小中学校や塾では、大学入試を見据えた高度な内容、先取りの学習が推し進められた。教育格差がさらに拡大していった。「結果の平等主義から脱却し、トップを伸ばす戦略的人材育成」と自民党の教育政策が発表されている。

 私の教えた教室でも「ゆとり教育」はある程度無視して授業を行った。大学入試が変わらないのにのんびりと3割削減して教えるわけにはいかないし、中高一貫校のように中3の入試対策期間を必要としない相手と戦うには、より早く、より詳しく授業を推し進めていく必要があった。できる子供たちにとっては楽しい授業となる。

 では、できない生徒はどうするのか。「ゆとり教育」には、人材を2極化して、「エリート」と「非エリート」に分断する教育方針の一面がある。この「非エリート」たちには、這い上がれない過酷な社会に生きることになる。放置すれば、暴動が起きるか、革命がおきるか。そうならず、安い賃金で厳しい現実をいきさせる「個性重視の原則」がゆとり教育のもう一つの側面である。

 「勉強なんかできなくてもいい、君には個性がある。自分のやりたいことを見つけて、夢を追い続ければいい。」つまり、SMAPの歌、「世界に一つだけの花、その花を咲かせるために一生懸命になればいい。」ただ、現実は、成績と賃金にやはり相関関係がある。成績が良ければ賃金の高い職に就ける可能性が高く、その逆はきわめてまれである。個性重視の夢追い人は、根拠なき自信をもとにフリーターや非正規労働者として夢を追いかける。経済的に不遇であるが、本人たちは「今」の状況に満足する。成績が悪くても「今の成績に満足。」最低賃金で働き続けても夢があるからだいじょうぶ。このような人材は、企業にとって実においしい人たちとなる。そのゆとり世代の10年後、20年後、彼らが40代になるとき厳し過ぎる現実に唖然とする。結婚もできず、正社員にもなれず、家も持てない。「ゆとり教育」の過酷さの現実が、今の彼らを作り、日本の最下層として日本の富裕層やエリートを支えている。

 格差社会が世界を蔓延し、日本の格差社会が際立ってくるとともに社会問題化している。給付金というばら撒きで押さえつけられている「さとり世代」という不況のなかで育った中年男子、貧困女子。その遠因が「ゆとり教育」だということを初めて知った。







 <主夫の作る夕食>
美味しく焼けた魚のムニエル。
NHKの料理番組で参考にした「しし唐」のつまようじ焼き。塩水に10分ほどっとつけることで上品な味に変身。



 


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