新古今和歌集の部屋

式子内親王集 百首 夏



121 春過ぎて又郭公語らはぬ今日の眺めを訪ふ人もがな 玉葉
はるすきてまたほとときすかたらはぬけふのなかめをとふひともかな
春は過ぎて→文化九本・森本 かたたらず→C本 語らはず→京大本・神宮本 今日を眺めを→三手本・岩崎本 訪ふ人ぞ無き→三手本・B本 訪ふ人も無き→岩崎本

122 郭公忍び音や聞くとばかりに卯月の空は眺められつつ
ほとときすしのひねやきくとはかりにうつきのそらはなかめられつつ
卯月の空→C本 眺められつる→松本本

123 我が宿の垣根の雪を卯の花に山郭公過ぐるにぞ知る
わかやとのかきねのゆきをうのはなにやまほとときすすくるにそしる
垣根のゆみを→C本・三手本・神宮本・京大本・森本・河野本 かすねの雪の→春海本 卯の花の→神宮本 卯の花と→岩崎本 過ぎるにぞする→神宮本

124 待ち待ちて夢か現か郭公只一声の曙の空
まちまちてゆめかうつつかほとときすたたひとこゑのあけほののそら
本歌:郭公夢かうつつか朝露のおきて別れし暁の声(古今 読み人知らず)

125 寂しくも夜半の寝覚めを村雨に山郭公一声ぞ訪ふ 新後撰
さひしくもよはのねさめをむらさめにやまほとときすひとこゑそとふ 

126 昔思ふ花橘に訪れて物忘れせぬ郭公かな 新勅撰
むかしおもふはなたちはなにおとつれてものわすれせぬほとときすかな花たちに→森本

127 手に薫る水の水上尋ぬれば花橘の影にぞ有りける
てにかをるみつのみなかみたつぬれははなたちはなのかけにそありける
手に変はる→三手本 影ぞ有りける→B本 影に有りける→岩崎本・国会本・神宮本・三手本・河野本

128 春秋の色の他なるあはれかな蛍仄めく五月雨の宵
はるあきのいろのほかなるあはれかなほたるほのめくさみたれのよひ
五月雨の空→神宮本・国会本・河野本 五月雨の音→C本・京大本

129 眺めつる遠の雲居もやよ如何に行方も知らぬ五月雨の空
なかめつるをちのくもゐもやよいかにゆくへもしらぬさみたれのそら

130 山賤の蚊遣火立つる夕暮も思ひの外にあはれならずや
やまかつのかやりひたつるゆふくれもおもひのほかにあはれならすや
蚊遣火立てる→C本 蚊遣火焚ける→森本 夕暮に→森本 思ひの外の→B本・三手本・岩崎本 

131 色々の露を籬の常夏に置きて過ぎぬる村雨の空
いろいろのつゆをまかきのとこなつにおきてすきぬるむらさめのそら
露を笆の→神宮本 立ちて過ぎぬる→三手本

132 逢坂の関の杉群過ぎがてにあくまで結ぶ山の井の水
あふさかのせきのすきむらすきかてにあくまてむすふやまのゐのみつ
過ぎりてに→神宮本 飽くまで向かふ→A本・B本・三手本・岩崎本・京大本・C本・国会本・河野本・松平本・神宮本
本歌:むすぶ手のしづくに濁る山の井のあかでも人に別れぬるかな(古今 貫之)

133 辺りまで夏ぞ忘るる山陰の清水や秋の住処なるらむ
あたりまてなつそわするるゆまかけのしみつやあきのすみかなるらむ
夏は忘るる→C本・京大本・文化九本・森本・国会本

134 黄昏の軒端の荻にともすれば穂に出でぬ秋ぞ下に言問ふ 新古今
たそかれののきはのをきにともすれはほにいてぬあきそしたにこととふ 

135 夕されば楢の下風袖過ぎて夏の外なる蜩の声
ゆふされはならのしたかせそてすきてなつのほかなるひくらしのこゑ
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