「投資信託の“価格”」(いわゆる、基準価額)をみると、一緒に、「基準価額(税引前分配金再投資後)」というものが表示されています。
これは「もしも分配金を出さない運用方針にしていたら、基準価額は、今いくらになっていたのか」を計算したもので、
投信の運用成績を比較評価する時に参照されます。
(基準価額だと、仮に全く同じ運用を行っていても、分配金の有無や多寡によって値が変わってしまうため、単純には比較できません)
また、投信のリターン(期間変化率)も「基準価額(税引前分配金再投資後)」を使って計算されるのが一般的です。
このように、投資信託のパフォーマンスを見る上では、とても重要な情報なのですが、
実は、SBI証券と三菱UFJ国際投信では、表示される値に若干の差が生じている場合があります。
たとえば、下図は、2018年4月27日時点の「AI日本株式オープン(絶対収益追求型)」の『基準価額(税引前分配金再投資後)』をみたものですが
- SBI証券 :10,055円(設定来パフォーマンス:10,055÷10,000-1=0.55%)
- 三菱UFJ国際投信:10,054円(設定来パフォーマンス:10,054÷10,000-1=0.54%)
(説明では、表示桁未満の数値を「四捨五入」するとありますが、実際の処理は「切り下げ」となっています)
三菱UFJ国際投信は、このファンドの「運用会社」なので、こっちの値の方が正しいと思われた方もいらっしゃったようですが、
実は、SBI証券に表示されている値の方が「正しい」と言えます。
ちなみに、4月の月報に記載のある設定来のパフォーマンスは、0.55%となっています。
https://www.am.mufg.jp/pdf/geppou/252629/252629_201804.pdf
そのため、三菱UFJ国際投信の「基準価額チャート」だけでの問題のようです。
なお、このバグについては、結構前から存在しているようなのですが、未だに修正されないまま放置されているようです。
三菱UFJ国際投信のサイトで「基準価額(分配金再投資)」を参照する際には、注意した方が良いと思います。
(「AI日本株式オープン」に限らず、他の投信(ex. MAXIS日経225 など)でもまったく同じ現象が出ているようです。)
ちなみに、自分で「基準価額(税引前分配金再投資後)」を計算する場合ですが、以下のようにしてやれば、簡単に計算できると思います:
① まずは、設定来の時系列データをダウンロードします:
② 次に、日次リターンを計算します(プライスリターン、キャピタルリターン、トータルリターン):
- プライスリターン = 当日基準価額 ÷ 前日基準価額 - 1
- キャピタルリターン = 当日分配金 ÷ 前日基準価額
- トータルリターン = プライスリターン + キャピタルリターン
③ そして、トータルリターンを累積させていきます:
- 基準価額(分配金再投資)= 前日基準価額 × (1 + 当日のトータルリターン)
このように計算すると、2018/4/27の基準価額(分配金再投資)は「10054.84」であったことが分かります。
四捨五入して表示すると「10055」となり、SBI証券の基準価額チャートの表示と一致しています。
また、四捨五入するのではなく、切り下げ処理をすると「10054」となり、三菱UFJ国際投信の基準価額チャートの表示と一致します。
ちなみに、三菱UFJ銀行のサイトをみると、確かに、2018/4/27の基準価額(分配金再投資)は「10054.84」となっています。
☞ AI日本株式オープン(絶対収益追求型)「詳細チャート」:http://mufg.qhit.net/mufg/qsearch.exe?F=chart&KEY1=03314172
データリテラシー上は、騰落率の表示桁数を小数点以下第2位までとするのであれば、
三菱UFJ国際投信が行ったように、基準価額(分配金再投資)を小数で切り下げ処理したものを使って騰落率の計算を行うのは、不適切と言えます。
ここで述べたような丸め処理での誤差が目立ってくるためです。
騰落率の算出などデータ加工をする際に、丸め処理でこのような処理を見ると、データ分析の実務経験に乏しいと判断されることがあります。
データを扱う場合には、注意したいポイントです。
データリテラシー上は、基準価額(分配金再投資)は、三菱UFJ銀行のようなチャート表示が望ましいと言えます。
この値を使って騰落率を計算していれば何の問題もありませんでした。
※補足ですが、SBI証券やQUICK・日経新聞など一部では、基準価額(分配金再投資)として、チャート表示期間内の分配金のみ再投資した結果を表示させています。
一方、三菱UFJ国際投信では、設定来のすべての分配金を再投資した場合の結果を表示させています(AM-Oneとかも同様です)。
そのため、チャートの表示期間によっては、両者の値は、全く違う値になっています。
ただ、チャート表示期間の騰落率を計算すれば、どちらも同じ値にはなりますので、分配金の扱いについては特にどちらの方法でも良いとは言えます。
なお、目的にもよりますが、分配金については、後者の扱いの方が一般的だとは思います。