映画 奇跡のリンゴ 2013年 製作
監督 中村 義洋
主演 阿部 サダヲ (木村 秋則役)
菅野 美穂 (木村 美栄子役)
後に、木村家に婿養子となる、三上秋則は幼少期から変わった子供だった。
機械を解体して、中の部品と仕組みを調べる事に興味が有った。
両親がいない間に、柱に掛けてある大きな掛け時計や、テレビまでもがバラバラに分解され
修復不可能なまでになり、良く怒られていた。
成長して、学生になってもその癖は変わらず、文化祭でバンド演奏をする事になった際も
勝手に機械をいじり爆発させるなど、仲間内でも非難の嵐となっていた。
学校を卒業して上京した後も、徹底的に無駄を省く姿勢は変わらず、社内でも、のけ者扱いにされていた。
そんなある日、秋田県の父から呼び戻され三上秋則は、故郷のリンゴ農家の娘婿にと勧められる。
幼馴染だった、木村美栄子の積極的なアプローチにより、婿養子に迎えられ
木村秋則となった彼は、リンゴの栽培に精を出すようになる。
当時のリンゴ農家は農薬依存が激しく、年間16回もの農薬を散布しなければリンゴを出荷出来ない状況だった。
或る日、妻の美栄子の体が農薬に冒されて、全身が腫れているのに気づく。
しかし、美栄子はリンゴ農家に生まれたら、これは宿命なので仕方ないとあきらめている。
そんなある日、美栄子が身ごもった事が判った。
秋則は、図書館で子育ての本を探していて、偶然に無農薬の野菜栽培の本を見つける。
これだと叫んだ秋則は、当時絶対不可能だと言われていた、リンゴの無農薬栽培を決意する。
美栄子の父は、頑固者で農薬が無ければリンゴは育たないと反対だったが
秋則の勢いに負け、持っていたリンゴ農園の1/4だけを無農薬で試験栽培する事を許す。
それから、1年また1年と経ち、農薬の代わりにいろんな物を散布するデータ取りが続く。
いつしか、全く花が咲かないまま10年経ち、1/4だけだという約束が全部の農園に代わり
リンゴの収穫の無い年が続いていく。
美栄子の父は、周辺のリンゴ農家から責められ続けるが、なぜか秋則の援護に回るばかりでなく
なけなしの貯金を崩しながらの一家の生活が続く。
秋則の三人の娘も成長し、小学校に入学したが、貧乏な事で学校でのいじめにあう。
秋則も近所のリンゴ農家からは迷惑がられ、相手にされなくなっていく
そして、いつしか彼の顔から笑顔が無くなっていく。
或る秋祭りの日、秋則は「お世話になりました」という短い遺書を残し忽然と姿を消す。
美栄子は、一晩中祭りの中を探し続ける。
その頃、秋則は本気で死のうと思って森の中で枝にロープを投げる。
しかし、ロープが外れて落ちた所に農薬を掛けてもらうでもなく
森の中でひっそりと、しかし元気に育つ椎の木が目に入った。
人に手を掛けられる訳でもなく、厳しい自然環境の中で虫にすくわれるでもなく、頑強に生きている。
秋則は、その椎の木の生育環境と土をつぶさに調べ、これだと感銘する。
祭りの中、いやな予感を抱きつつ、一晩中秋則を探し続けた美栄子は、リンゴ畑に差し掛かると
秋則が森の中から飛び出してくる。
見つけた!見つけた! と叫びながら。
それを契機に、奇跡の大逆転の自然農法が始まる。
全く、草を生やし放題のリンゴ畑では、相変わらず周辺の農家からの苦情が続くが
秋則は頑として、手を掛けない農法を貫く。
やがて、数年後秋則のリンゴ畑で異変が起きていた。
全く何年も花が咲く事も無かったリンゴの木に、満面の花が咲く。
それを最初に見つけた、友人は何も言わずバイクを貸してやるから、リンゴ畑を見に行けと言う。
二人がリンゴ畑に恐る恐る近づくが、秋則は又何か悪い事が起きているような気がして木を見る事が出来ない。
美栄子はリンゴの様子に気づいて、秋則を前面に押し出すが
秋則は、いやあれは藤の花だとか、隣のリンゴの木だろうと直視できない。
やっと、満面のリンゴの花が咲いている事を認識して大喜びをする。
やがて、少し小さめのリンゴが沢山収穫され、美栄子と三人の娘たちは美味しい、甘いと大喜び
しかし、秋則は怖くて口にする事が出来ない。
美栄子達の督促で、こわごわと口にすると、甘いと納得の表情を浮かべる。
その少し小さ目の甘い自然農法のリンゴは、食べた人達の口コミで評判が拡がり
ネット通販で、販路がどんどん拡大していく。
その少し前、美栄子の父は高齢により、養護施設に入り痴呆も進んで施設でとうとう亡くなった。
しかし、その亡骸の右手には秋則が創ったリンゴの実がしっかり握られていた。
看護師や医師が離そうとしても、外れない位の強度で!
息子がとうとう成し遂げたリンゴを誇らしげに思うように・・
お父さんは、本当にリンゴが好きだったんだねぇ
と誰云うともなく、つぶやく声が聞こえる。