誰もいない個室に一枚の絵が飾られている。
海鳥が海面の魚を捕えた一瞬を見事にフィルムに収めた写真だ。
しかし、気になるのはその上の古びた時計!
手術待合室と表札の付いたこの部屋は、家族の手術が完了するまでに、その親族がじっと待つ部屋。
今日は家内が白内障の手術をする日だ。
広いその部屋にはソファーがいくつもあるが、出入り口に近い所に電話が一つ
案内された看護婦さんから、「手術が終わったら電話が掛かるので電話を取ってください」と案内された。
何も物音のしない静寂な部屋で、電話機の側でじっと待っている。
その座ったソファーの近くに、この絵が掛けられており、その上に時計が・・
静寂なその部屋に、この時計だけが物音をたてる。
一分毎に、ガッ! ガッ!と大きな音をたてて秒針が動く。
電話が鳴るのをじっと待つ身に、そのガッ! ガッ!と規則的になる音が
いつしか異空間にいるかのような感情を抱かせる。
やがて、電話が鳴り迎えに行く。
後日眼帯を外してもらって、片目ずつ試してみると
手術した方の眼が、すこぶる綺麗に見えると喜んでいる。
まず、片目の手術の成功おめでとう!!