コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

問題解決の前に問題を発見すること

2019-09-27 10:40:56 | 日記
先日、問題解決力の高め方について中堅社員を対象に研修を実施しました。
そもそも問題とは「あるべき姿と現状が乖離している」状態をいいます。あるべき姿とは、理想、目標などです。
理想、目標を常日頃からイメージしておくことが必要で、そのうえで、現状を認識する努力をしなければなりません。
「問題意識」がないと現状を認識、問題を発見することはできません。

問題を発見するとは、大きな問題になる前に発見、解決するということです。今、この瞬間です。
「重要性」、「緊急性」がない問題、事柄に気づくことが出来るかどうかです。
ここが大切と受講生にお話ししましたが、ここが出来ていない企業は大変な問題に発展する可能性があります。

特に歴史ある企業や問題を意識化する慣習がない企業においては、経営上の問題、人事上の問題など数多くの問題があるにも拘わらず、
新たな発想、全体を俯瞰する見方、問題意識の欠如等により、後々大きな問題になることが多いようです。問題が発覚してからでは手遅れで、
気付いた時は倒産等、「時すでに遅し」です。

問題は皆が感じている共通、客観的な事項もありますが、ある人には感じ、他の人には問題だと感じられない主観的なものもあります。
やはり普段から「問題意識」を高く持つ意識がないと問題を感じることが出来ず、問題を発見することは出来ません。
意識を高く持つことと、問題意識を向上させるには日頃のコミュニケーションが大切になります。
会社全体で風通しの良い環境を作り、問題の芽を早く取り去る必要があります。

現に起きているクレーム処理等は別として、見えている問題を社員全員が共有すること、
さらには、見えていない問題をあえて探したり、設定したりして問題を考えていく必要があります。
見えていない「探索型」「設定型」については、少なくとも中堅社員、管理職、経営者が考えていくことが経営戦略上、重要なことだと思います。

人間の成長に欠かせない一つとして「気づく力」がありますが、これを磨くには物の見方を日頃から広くしていくことが必要です。
物の見方を広くする方法として、1つは頭を初期化する「初期化思考」です。
今までの経験、地位をリセットし、冷静、客観的に白紙から考えてみることです。自分を捨て、無になり、ゼロから物事を見るということです。

また、問題になっていることを書きだし、似たような事柄をグルーピングすることにより、頭が整理できます。
「短期・中期・長期」的な問題に区分したり、「理想・現実」のギャップを理解し、理想と現実に区分する、
自分から見た「主体」と他者から見た「客体」に区分し、見方を変えて見てみる。「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、
「起きている現象」を「全体の構造」の中で考えてみる。さらには「時間」毎に区分し、時系列で考えるなど、
柔軟な物の見方、意識を持つと、問題に気づく可能性が高くなると思います。

問題を発見、解決していく方法として西洋の哲学者の思考法は参考になる点が多いと思います。
機会があれば、哲学者の考えと問題を発見、解決する手法とを今後、紹介していきたいと思います。
何か難しい話になりましたが、問題を認識する方法としてもっと、具体的に日頃から心がけることはどのようなことでしょうか。

私が受講生にお話ししたのは「不」から考えてみようということです。
例えば「不満」、「うちの会社は、経営方針が不明確だよね。」「経営陣が何を考えているか分からないようね」
「不信」、「会社の方針がコロコロ変わり、不信になるよね。」
「不潔」、「うちの工場は整理整頓が出来ていなくて不潔だよね」
「不快」、「うちの会社は挨拶が出来ていなく、不快になるよね」
その他「不振」、「不安」、「不便」など「不」の付く単語を考えてみるのも問題を発見する上で非常に良いアプローチだと思います。

小林製薬ではこのような方法で「熱さまシート」や「のどぬーる」を企画、商品化したようです。
問題を認識したうえで、問題解決とは
「原因」を探り、問題を引き起こしている原因を分析し、「課題設定」、原因の中で解決対象としたものを課題とし、
「解決策立案」、課題解決の施策を立案する。という流れで問題を解決していきます。

原因を探る方法としてトヨタが実施している「なぜなぜ分析」等を活用すると良いと思います。
トヨタでは5回の「なぜ」を実施しています。その他論理的思考であるロジックツリーがあります。
問題の原因解明や、解決策立案のために、問題を論理的に関連した要素ごとにツリー上にMECE、モレなくダブりなく分解していく方法です。
これらを活用し、問題解決にあたっていくことが大切です。

以上、問題解決のプロセスについても簡単にお話ししましたが、説明していない手法等もまだあります。
しかしながら、今回のブログでは割愛させていただきます。研修では問題解決に至るプロセスについて、「事例」を使って、
「発散と収束」により、グループ毎に考え、発表して頂きました。
「発散と収束」とは、簡単に言うとチーム内で意見を出しやすい環境を作り、意見をチームとしてまとめることです。
つまり良いアイデアを出すことを目的としています。

結論として、問題発見は「事実」を把握、問題解決は「アイデア」を出すことと締め括りました。
質疑応答では、受講生から「無意識」から「意識化」への転換が重要なことだとの意見もありました。

グローバル化、技術革新が進展する中、新たな問題発見・解決は今後、益々重要になると思われます。
「気づき」を大切に、会社全体で風通しの良いコミュニケーション環境を作ることを心がけてみてはどうでしょうか。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


働き方改革講習会を実施してみて

2019-07-04 17:22:21 | 日記
先月、働き方改革の講習会を中小企業主団体に対して実施しました。
メインテーマは、今年4月から実施されている「時間外労働の上限規制」(中小企業は来年4月)
及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」への対応についてです。
20名程度の参加でしたが、皆さん、2時間、熱心に聞いていただけたように感じました。

また、一方通行の講義でしたので、参加者の知識がどの程度あるか、はっきりと分かりませんでしたが、基本的な知識がない方は、
今回の「時間外労働の上限規制」及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」についての変更点を説明しても
理解することは難しいのではないかと思っています。
経験上、労働基準法、就業規則をしっかり理解している中小企業の事業主の方々は、少数です。

例えば、今回の講習会でのメインテーマでもある、労働基準法の労働時間については、「所定労働時間」と「法定労働時間」の相違、
残業させる場合の「36協定の締結方法」、「特別条項の意味」、「管理監督署の範囲」、「割増の計算方法」などです。
休日に関しては、「法定休日」と「法定外休日」及び「振替休日」と「代休」の相違、さらには基本的な有給休暇の知識として、
「有給休暇の消滅」「有給休暇の発生時期」「取得者に対する時季変更権」「パート・アルバイトの有給休暇の有無」、
「計画年休制度と労使協定」など基本的な知識が必要です。

このような基本的な事柄について、今まで多くの経営者、管理者と質疑応答を実施してきましたが、これらの知識がないため、
労働問題に発展した事例を私自身、数多く見てきました。

 昨年、国会での「働き方改革」により労働基準法、労働安全衛生法などは大幅な改正となりましたが、
これを機に経営者、管理者は、法律の基礎的な事項、就業規則の理解を今後、見直しをしていくべきと考えます。是非、ご検討をお願いいたします。

また、働き方改革の話に戻りますが、労働基準法、労働安全衛生法の改正とは別に、
労働の内容が同じ、もしくは同等の労働者には同一の賃金が支払われるべきであるという原則、
同一労働同一賃金が来年4月に始まります(中小企業は1年遅れ)。
これは、パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法を改正して行なわれます。

さらには、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)を改正し、初めてパワハラ防止措置義務が規定されました。
大企業では来年4月から実施となりますが、社会問題となっているパワハラ防止の法制化は初めてのことです。
セクハラやマタニティーハラスメントと違い、これまで企業の自主的な対応に委ねられてきました。

今回、法律化されたことで、企業の経営者、管理者の方々も同一労働同一賃金の対策と併せて、
パワハラ対策の防止に向けて就業規則等の見直し、社員の研修等を実施していくことが求められます。

このような来年以降に実施される事柄についても講習会で、お話をさせていただきました。
また、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の話にも触れましたが、
国会での議論とは別に導入する企業がほとんどないため、内容には触れませんでした。

最後に、「時間外労働の上限規制」及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」への対応についての主な改正ポイントは次の通りです。
「時間外労働の上限規制」
法律によって時間外労働の上限規制を設けた。 
①時間外労働の上限は、原則、月45時間、年間360時間とする(変形労働時間の場合は、月42時間、年間320時間)。
②特別条項で延長できる労働時間は、月最大、休日労働を含めて100時間、年間では720時間(休日労働含まず)。
③特別条項付きの36協定は新書式になり、特別条項を適用するための具体的理由が必要。

「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」
①使用者は10日以上の年次有給休暇が付与されるパート、アルバイト、有期雇用、管理職を問わず、全ての労働者に対し、
毎年5日以上、時季を指定して年次有給休暇を取得させること。
②労働者が自ら有給休暇を取得した場合や、「年次有給休暇の計画的付与制度」により有給休暇を取得させた場合は、
その日数分は上記の義務を免れること。
③時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休 を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存すること。

以上、改正ポイントをご説明させていただきましたが、先ほどもお話ししましたが、まずは、基本的な事項を把握し、改正点を良く理解することです。
私と取引のある企業においては、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法等、労働法全般による労働基準監督署による調査、

さらには男女雇用機会均等法、育児・介護休業法等の観点から調査を実施する労働局雇用環境・均等部などが、就業規則の是正、改善命令などを企業に対して実施しています。
改善命令に従わない場合は罰則もあります。
 
労働法等、今後、企業に対しては、厳しいコンプラインアンスが求められます。マイナスに考えるのでなく、職場活性化の観点から、企業と社員がウィンウィンの関係が築けるよう、
就業規則を検討していくべきと講習会を実施し、改めて感じることが出来ました。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


モチベーションが上がらない理由よりもモチベーションの維持を

2019-04-16 14:56:59 | 日記
以前、公的機関で依頼され、多くの中小企業の経営者、管理職等の面談を実施してきました。
その際、「社員のモチベーションが上がらない」との相談を多く受けました。

私としては全社員のモチベーションを一律に上げ、維持していくことは不可能だと思っています。
なぜなら、モチベーションは様々な要因で下がり、会社とは直接関係ない理由で下がることもあるからです。

会社として、社員全員のモチベーション低下の理由を個々に把握し、対応していくことは現実的ではありません。
経営者、管理職等はモチベーションを上げることより、モチベーションを維持することに意識を向けることが重要だと考えています。

元気のない会社に限って、「社員のモチベーションが上がらない」との話をする企業経営者、管理職等が多いですが、
相談される企業は以下の共通点があることに気づきました。
1.会社・組織全体にネガティブな感情、思考が蔓延している
2.相談される方がモチベーションとは何か。さらにモチベーションが上がっていない理由を真剣に考えていない
3.モチベーションが上がっていない1つの要因が経営者、管理職等経営幹部だということに気づいていない

職場が活性化され、活き活きしている企業は、モチベーションをどうすべきかなどと、第三者に話をすることはありません。
職場が活性化されていない企業ほど、モチベーションの話が多く出ます。病気同様、ネガティブな感情、思考が蔓延している組織はそれが伝染していきます。

以前、私は、ある企業で、人事制度のコンサルティングに携わりましたが、制度変更にあたって社員ヒアリングを実施した結果、
経営者、管理職等への不満、職場全体の不満が社内に蔓延していたことに大変驚きました。
離職者も多く、まさにネガティブな感情、思考が蔓延し、社内全体のモチベーションは低下していました。

幸せと感じる人の周りにはポジティブ感情、思考の人が集まります。一方、不幸せに感じる人の周りにはネガティブ感情、思考を持った人が集まります。
今までポジティブ感情、思考が強かった人でもネガティブな環境に染まってしまうことは多々あります。

また、相談される方の特徴として、モチベーションとは何かを理解せずに、第三者に何げなく、モチベーションに関する不満、相談をしていることも良くあります。
モチベーション自体、非常に抽象的な言葉であり、一般的には「動機」、「意欲」、「やる気」などの意味となりますが、
人により「動機」、「意欲」、「やる気」などは様々であり、これらは「身体的」「精神的」なものに左右されます。

要因は「身体的・精神的な病気」「会社との関係」「上司と部下の関係」「他者との関係」「家族との関係」など、
様々な理由があり、一人ひとりの原因を把握することは非常に困難なものとなります。さらにモチベーションは絶えず、上がったり、下がったりします。

極端にいえば、時間ごとにモチベーションは変化します。
一般的に高いモチベーションは、長時間維持することは難しく、低いモチベーションは、長時間、継続する可能性があります。
モチベーションは、個人の内面、心の問題であり、様々な要因、変化があるということです。
また、テンションの高い人、気合いが入っている人が、モチベーションが高い人とは限りません。

例えば、気合いを入れて売り上げを伸ばそうと思っていても売り上げを伸ばす方法を理解していない人は、テンションが高くてもモチベーションは低くなります。
また、テンションが低くても内面に秘めた気持ちが強い人は、モチベーションが高く、このようなタイプの人も多くいます。
よってモチベーションのアップ、ダウンは意識していないと他者から見えないこともあります。

このようにモチベーションとは何かを理解せずに、モチベーションが上がっていない理由について、自身が分析もせず、「モチベーションが上がらない」と嘆いています。
モチベーションで大切なことは、低くなっている共通の理由、ネガティブ要因等について具体的に考えていくことが必要です。

例えば、全社員対象としたヒアリングや周りの社員との面談、カウンセリング等、さらにはストレスチェック制度等で組織の問題点を把握することです。
そうすることにより、会社、組織の問題点が見えてくるはずです。

結果、社内でモチベーションが上がっていない要因が経営者、管理職等経営幹部であることは結構、多いのではないでしょうか。

例えば、会社への忠誠心が高い者、異常にテンションが高い者、完璧主義者、仕事以外の生きがいがない者、仕事中毒、自信家であり、
自分の意見が全て正しいと思っている者、声が大きくパワハラ的な行為が疑われる者など、これらに該当する経営者・管理職等であれば、周りの人のモチベーションを下げている可能性があります。
プレーヤーとしては素晴らしいが、マネージメントが出来ない経営者、管理職等は多くいます。
自分自身が周りの者に悪影響を及ぼしているのではないかと、意識し、会社、組織のトップとして、
周りの者に配慮し、自身の業務の考え方、マネージメントのあり方について再考していかなければなりません。

会社の方向性が明確でなく、何をすれば良いのか、分からない組織では、組織全体のモチベーションは低く、高いモチベーションを持った者でもモチベーションは下がります。
部下のマネージメントに携わる経営者・管理職等は低くなっている共通の事項、ネガティブ要因等を把握し、改善し、ネガティブ要因等をなくすように努めなければなりません。

また、個々の部下等に対しては、個別にモチベーションに配慮して業務を実施していかなければなりません。
他者を理解し、他者から映る自己を意識する必要があります。特に大事なのが、誰もが持っている「承認欲求」を満足させてあげることが重要です。
部下のモチベーションに関する要因は人それぞれ、様々です。状況に適した評価、認知をしてあげることが必要となります。

部下のモチベーションをあげていくことは大変です。職場、部下のモチベーションを一律に上げ、維持していくことは素晴らしい事ですが、現実は非常に難しい事です。
せめて現在のモチベーションを維持できるよう、声かけ、挨拶、さらには個別に対応した丁寧なコミュニケーションを経営者・管理職等は実施すべきです。
押し付けでなく、伸び伸びと業務ができる職場環境づくり、横、斜めの人間関係づくりが大切です。

4月、人事異動の季節です。

新たなメンバーで業務を実施するにあたり、マネージメントに携わる経営者・管理職等はネガティブな感情、思考を持った人を出さず、
伝染を防ぎ、個々のモチベーションをどのように長く、維持させるか、良く考えていただきたいものです。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


今求められる強みを活かした人材の育成

2019-01-23 11:08:51 | 日記
私のお客様は、ほとんどが中小企業ですが、最近の話題は「人手不足」に関することが多くなっています。
これは日本全体の問題でもあるのですが、「外国人労働者」で全て解決できる問題ではありません。
「人手不足」の要因としては主に2つあると思います。

1つ目は事業規模拡大、売上向上に伴う人材、人手の不足。これはある意味非常に恵まれた企業です。
2つ目は退職率の高い企業。採用しても定着せずに採用と退職の繰り返しをしている企業。
私も過去にこのような企業数社とお付き合いがありましたが、いずれも事業規模の縮小、倒産、廃業等に至っています。

これらの全ての企業に共通しているのは、「会社全体がネガティブ」になっていることです。
具体的には「経営者、上司、部下の悪口」「人の弱みを責める」「人を行動でなく、性格で評価する」など、
組織全体が伝染病のようにネガティブ感情が蔓延しています。
このような会社は間違いなく退職者が多く、人材が育たない環境になっています。

ネガティブ感情を如何にポジティブ感情に職場を変えていくかが人材を育成する上で非常に重要で、
この点を経営者、管理者が気づき、変えることができるかが「能力開発」「人材育成」、さらには「職場活性化」の大きな課題だと思います。

今回、退職率の高い企業に対して私の経験、考え方をお話ししたいと思います。
退職率を改善、定着率を向上させるには個々の「強み」を伸ばす職場環境にしていく必要があります。
私が関係している企業には、必ず、「キャリア教育」の必要性について話をし、職場に組み入れるための研修などを実施することにしています。
特に個々の「強み」について、まずは自分自身が気づき、周りが認める必要があります。

具体的には自分自身が大切にしている「価値観」を他人とのコミュニケーションを通じて、ゲームなどで自分自身が気づくような研修を実施しています。
これにより他人との価値観の相違が理解できるとともに、価値観により自身の強みを理解することができます。

さらに業務と関連させることにより経営者、上司、部下、同僚等との信頼関係、モチベーションを向上させることができます。
ここで大切なことは日頃の「コミュニケーション」をどうするかです。

相手が「気持ちの良い言葉」として受け取ることが大切であり、良い言葉を経営者、管理者、上司などは考えていく必要があります。
例えば、「否定語」などは使わない事です。「そんな暇はない」「なぜ出来ない」「能力がない」など。また行動ではなく、性格を非難すること
「ねちねちしている」「生意気」「気が弱い」「暗い」などもモチベーションを低下させる要因となります。

昨年、スポーツ団体等において、地位の高い者が弱い者に対する「パワハラ」が大きなニュースとなりました。
パワハラに関して、社会の見る目は非常に厳しいものとなっています。現在の「パワハラ」は、弱者が強者になる傾向もありますが、
経営者、管理職、リーダーで「指揮命令型」のタイプの人は、注意しなければならないことがあります。
指揮命令しているつもりが時には暴言になる可能性があるということです。人は感情で左右されます。

良かれと思って言った言葉が、時には暴言になります。暴言に聞こえます。信頼関係がない場合にはパワハラに発展していく可能性があります。
今はネットもあり、あっというまに外部に情報が流れます。情報が流れた後は会社にとって大きなマイナスとなります。
他人は感情で動きます。理解しても納得することが出来ない場合も多々あります。

今を生きる私たちにとって、「相手を尊重する」ことが大切なこととなりつつある中で、ネットの普及、相互のコミュニケーション不足により、
精神的に脆い人、傷つきやすい人も増加しています。

時代が変わり、グローバル化のなかで、経営はワンマンのみで継続することが困難になっています。
これからは「気持ち良いこと」「自己効力感」を高め、「強み」を自分で理解し、周りの者がそれを認め、
個々の強みを伸ばして、職場の活性化に繋げていく方法が最善と考えます。強みを伸ばし、弱みを自覚させ、個人が前向きな発言、行動が出来るような職場にしていく。

その中で強みを発揮した行動については「労い」「誉める」ことを習慣化していくことです。

良い行動、苦労した仕事をした結果、労いの言葉、誉められることは人間にとって、最大の喜びです。
相手の強みを認め、本人が「何をすべきか」考え、答えを出し、結果、責任を伴うような「コミュニケーション」が職場の中で行われれば必ず人は育ちます。

私はコンサルタントとして、今年もこれを引き続き実践していくつもりです。
さらに就業規則で明記されている「表彰制度」についても、より良い運用を考えてきたいと思います。
勤続年数も大切ですが、会社に対して、良い行動、顧客に喜ばれるような行動、貢献した者に対して
年齢、勤続年数に拘わらず表彰するような職場環境にすることを会社と一緒になって考えていこうと思っています。

最後に少し古い話ですが、昭和30年代~40年代にかけて学校、会社内で挨拶の実践を促す「オアシス運動」というものがありました。
オアシスとは「おはよう」「ありがとう」「失礼します」「すみません」のそれぞれの最初の1文字をつなげたものですが、今でも十分活用できると思っています。

まずはちょっとした挨拶から心をこめて気持ち良い言葉をかけてみてはどうでしょうか。人間関係も変わっていくはずです。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


いよいよ年金支給年齢70歳時代の到来か

2018-11-22 11:07:53 | 日記
いよいよ、70歳までの定年・継続雇用を安倍政権が検討を開始し、2020年には「高年齢者雇用安定法改正案」を国会に提出する予定です。
この後に年金の開始年齢を70歳にするのではないかと、私自身、大変危惧しています。

現在、私の社会保険労務士でもある知人が、70歳までの雇用延長、定年延長、継続雇用制度導入についてのノウハウを厚生労働省から委託され、企業に対して実施しています。
知人の話では、法律改正に向け、70歳までの実績づくりを、厚生労働省はがむしゃらに推進しているとのことです。

しかしながら70歳定年・継続雇用義務化は多くの課題があるように思われます。
まずは、業界一律70歳とするならば、運転手を雇用している運送業。特にバス運転手など高齢による認知機能の低下など、顧客の安全配慮、事故に対するリスクをどうすべきか、
建設業についても体力、運動能力が低下した高齢者の事故防止策、さらにはその他、安全配慮を考慮しなければならない企業、職種についてどうすべきか、
検討すべき課題は多いと思われます。

また、優秀で健康な高齢者であれば、人手不足の今、65歳以降も継続して雇用している企業は増えています。私も70歳雇用、エイジレス、生涯現役で働くことに大賛成です。
しかしながら、70歳雇用の義務化となれば、高齢者のモチベーションの維持を図りながら、若手の昇進、モチベーションの向上などとバランスを取る必要があります。
企業内の人材育成、人事・賃金制度、教育全てに関係してきますので、企業、特に中小企業はうまく対応していかなければなりません。本当にできるのでしょうか。

日本は欧米と比較して解雇、不利益な扱いができにくい環境にあります。高齢者のモチベーション向上は期待できず、
維持さえ困難となった高齢者対応を企業内で処理せよと、一方的に責任を負わせることに問題はないのでしょうか。労使紛争が増加するのではないでしょうか。

現在のところ、義務化でなく、努力義務の可能性が大との話が聞こえてきます。私はこれに賛成です。義務化でなく、努力義務に留めるべきと思います。
継続雇用を強制、義務化するのでなく、高齢者ニーズが高い業種、NPOなど、新たに働ける職場づくり、転職市場を増やす努力を政府も考えるべきと思います。

しかしながら将来は70歳定年・継続雇用義務化の方向に進んでいくのではないでしょうか。
70歳定年・継続雇用義務化の次は、年金の支給開始年齢の引き上げが実施されるはずです。これが政府の本丸です。
政府は現在予定なしと言っていますが、選択ではない70歳以降の年金繰り下げを検討していくはずです。

現在、65歳以降の繰り下げは、受給者の選択で出来ますが、70歳までの繰り下げ支給の制度(1ヶ月遅らせるごとに0.7%づつ増加)
を選択により、受給している者はほとんどいません。
制度を知らない方もいますが、いないにも拘わらず、70歳以降の選択年金繰り下げ制度の検討も始まっています。

70歳までの定年延長、継続雇用の実績アップがなされば、年金の支給開始年齢を70歳からとする法律改正に進んでいくと思われます。
70歳までの定年延長、継続雇用の実績づくり、義務化は、年金支給引き上げの地ならしのためのものであり、本当にハッピーな世の中になるのでしょうか。
生涯現役=美徳、「死ぬまで働く」ことを奨励、強制するような社会になりはしないか、長年働き、病気、両親の介護等でリタイア、
また第2の人生で違う生き方を目指すために職を辞す高齢者が、リスペクトされずに、「働かざる者、食うべからず」の冷たい社会になってしまいはしないか、本当に気になります。

私は、以前、「年金の支給開始年齢が68、70歳? 冗談もほどほどに。」(2011年10月掲載のブログ)で支給開始年齢引き上げ反対についてお話させていただきました。
当時、政府の方針として「100年安心」「年金は現役時代の収入の50%を割り込ませない」とありました。あれから10年も経っていません。
100年安心?一体あの政府方針は何だったのでしょうか。いよいよ偽ることに限界がきたのかもしれません。

私は偽りの年金支給開始年齢の引き上げについて今も反対です。
これは国の信頼を損なうもので、ロシアのプーチン大統領でさえ、引き上げについて案を提出した途端、デモが起こり、一部、撤回をせざるを得ませんでした。

若者も可哀そうです。厳しく年金を納めさせられ、受給開始年齢は引き延ばし。遠い将来に対して年金を払う若者は増加するでしょうか。
生活保護を申請する方が増加するかも知れません。現在、昭和36年(1961年)4月1日までに生まれた方は特例で厚生年金を65歳より前で受給できます。
65歳からの年金支給は昭和36年(1961年)4月2日生まれ以降(女性は5年遅れ)の方となっています。

昭和45年(1970年)以降生まれの方々、段階ジュニア世代は、現在65歳の年金支給開始が70歳になるかもしれません。
いや、もっと対象が拡大され、昭和45年以前に生まれた方も受給開始年齢が引き延ばされるかもしれません。
このようなことで「年金を信頼せよ」なんて、誰が信用するでしょうか。

70歳定年・継続雇用の実績づくり、義務化の裏には、年金支給開始年齢の引き上げがあります。
政府には正直にお話ししていただきたいと思います。

少子高齢社会では、年金について、厳しくなるのは、致し方ありません。今後も国民全員、痛みを分かち合いながら、我慢していく必要はあります。

政治、行政は将来をごまかさず、年金財源について詳しく説明していただきたい。
正直に国民に話す必要があると思います。

高齢者の負担増も考えなければいけないでしょう。
例えば、元気に働いている期間の受給停止、収入がある高齢者に対しての保険料徴収義務(国民年金60歳、厚生年金70歳)の拡大について見直しが必要かもしれません。

また、失業などで負担が重荷になった場合の若年者の救済措置、専業主婦等(第3号被保険者)からの保険料徴収なども併せて議論する必要があると思います。

さらには消費税の大幅アップなども大きな課題です。
これらの議論をせずに、受給開始年齢だけをごまかしながら保険料を徴収していくことは絶対に許せません。
数年前の「100年安心」と偽りの制度改革と同様なことをするならば、いっそのこと、消費税全額を国民一人一人に支給し、年金制度を廃止したほうがすっきりします。

これからは、国民も厳しい選択をする時代がやってくるかもしれません。

現在、外国人労働者問題が国会で議論されています。人手不足からを日本で単純労働する外国人労働者を増やそうと考えている政府ですが、
議論が煮詰まっておらず、大変な騒ぎになっています(平成30年11月22日現在)。少子高齢化で外国人労働者を雇用すること自体はやむを得ないことだと私は思います。

しかしながら来年から改正されることについては、拙速との印象を受けます。
従来からある技能実習生制度では「日本で技術を学んで母国でその技術を生かす」こととなっています。
ところがそれは建前で、単純労働させることが本音という政府の考え方には賛成できません。
本音で丁寧に細かく議論していかないと将来、外国人労働者問題も大変なことになるかもしれません。

今後、70歳定年・継続雇用の審議が始まった時に、この「本音と建前」を私たちは読み取ることが必要です。
70歳定年・継続雇用の審議、年金制度の議論を聞き、真実を見極め、
政治家が言っていることの裏まで読み、どのような制度が良いのか、国民一人一人が考えていかなくてはいけないと思います。

最後に、70歳定年・継続雇用の審議は「外国人労働者問題」のように「木を見て森をみず」ではなく、国の形を示し、議論していただきたいですね。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp