アイ!サラマッポ in バギオ

フィリピン人介護者のケアを受けながらの、フィリピンでのインディペンデント・リヴィング…、心の赴くまま、ここに記します。

もう一つの「卒業式」-障がい児通所センターNTC(ダバオ)

2009-03-30 08:55:00 | フィリピン-ダバオ

 以前にも一度記事にしましたが、ダバオ市にある障がい児(スペシャル・チルドレン)通所センター「NTC」は、私がダバオにいた4年間、ずっと関わらせていただいた思い出の詰まった場所です。

http://blog.goo.ne.jp/isshin3_ph/e/e84f189a2e0d520a8aa0d22f074999b8

(以前のNTCに関する記事)

 ダバオ市内で、やはり障がい児にリハビリを提供しているマハリカ基金とともに、毎年この時期に「修了式-Recognition ceremony」がとり行われます。言ってみればそこの卒業式ですが、一年に一度、そこに通った全員に修了証書が渡されるので「修了式」といった方が良いでしょう。
 
(2004年の修了式-5年前の今日3月30日)
…私は初めての参列でしたが、ゲストスピーチを頼まれ、日本の障がい者支援制度が整ってきたのも、それほど昔の話ではないこと、当事者である障がい者が声を上げないと当局は気づかないこと等を、家族にも分かってほしいと思って話しました。(ああ、その日はちょうど運賃の値上げを要求してジプニーの運転手の協会がストライキをしていた日でした。)
 フィリピンでは、障がい者・障がい児に対する公的な支援は、私の知る限り、施設はありますが、個々人へは「ほぼ無い」と言ってよいでしょう。「あなたは、日本人でよかったわね…(障がい年金をもらえて)。」とよく言われます。以前、ケソン市でこちらの下院議員の方にも会ったことがありますが、「日本と違ってフィリピンは予算不足でそこまでお金が回らない…。」と言う彼には、何人か秘書兼ガールフレンドがいるとのことでした。フィリピンは、大家族が多いですから、誰か家族の一員が病気やけがの後遺症が残ってケアが必要となった時には、手の空いている人(必ずいます)がお世話をすることが多いようです。あとは、基金や福祉団体、海外のNGOなどによるサポートも少なくありません。
 ただ、このNTCに関しては、理学療法士で設立者のベィブスさんが個人で立ち上げるまでは、ほとんど家から外へ出る機会がなかった子供たちでした。学校へも行けず、リハビリを受ける余裕もなく…。2004年修了式のこの写真では、まだ人数は少ないですが、その後毎年児童の数が増え、場所とスタッフの確保に翻弄されていました。そして、大きな暖かい人の輪、コミュニティが作られ、障がいを持つ子供たちも家族も安心して溜まれる場所ができたのです。そこは、戦前、そこにいた多くの日本人が「人がたくさん集まって栄えますように」という願いを込めて「民多溜」(ミンタル)という地名をつけたところなのです(ダバオ市郊外)。

 この2004年の修了式も、フィリピン最大のショッピングモールグループのSM(シュー・マート)ダバオ支店が、2階の大きな「エンターテインメント・プラザ」という広い会場を無料で貸してくれました。なかなか買い物にも来られない障がい児と家族たちは、朝からおめかしをしてモールにやって来て、お昼過ぎのその式に出席するのです。
 
私自身も、そういう事情もあって、SMのメンバー(全店共通)となり、買い物もそこでするように心がけていたものです。SMダバオも、その時は、まだできて間もなくで、駐車場には障がい者用のスペースが設けられ、どの入口にはスロープもありました。中の通路やスーパーも広めの空間で、とても心地よく感じたものです。「障がいのある方を優先して下さい。」と書かれたエレベーターもありました。人と待ち合わせるにも冷房が利いていて(利き過ぎていた)、「SMで昼食を…」(ティファニーならぬ…^^)という約束をよくしたものでした。
 
しかし、私がダバオに移り住んだ、今から6年前には、そんなSMダバオでも車いすの利用者はほとんど見かけず、チン・コントロール式(あごで操縦)電動車椅子を使っている私には、臆面もない人々の視線を感じたものです。障がい者用の駐車スペースを一般客が利用し、エレベーターの前で待っていても後から来た人たちがぞろぞろと入って、次の、次のまた次のを待たされたりもしました。しかし、そんな事情は、私が文句を言った訳ではないのに、すぐに改善されました。障がい者専用の駐車スペースには、一般の人が駐車しないようにロープが張られ、エレベーターガールは、マナー知らずの客に「ちょっと待って下さい。」と言えるようになり…。その後、次第に、障がい者、車いす利用者だけでなく、多くのお年寄りやベビーカーの親子を見かけるようになっていきました。

 今年も、さぞ多くの人たちが見守る中で、NTCとマハリカ基金の障がい児の修了式が行われたことでしょう。



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