われわれが行った
高裁長官・訴追要求の詳細は 以下の通りです。
読んでもらえば、長官らの脅迫違法行為指摘についてスジがとおっており、
当たり前のことです。
◆ 長官らの違法行為が不問に付され、訴追請求されないのに、
おどされた岡口裁判官が、弾劾裁判所に訴追されるなどと言うことは、
あり得べからざることと思料します。
◆ そもそも、マスコミは
岡口分限裁判、訴追請求問題は 逐一報道するのに、
われわれの行った、今回の東京高裁長官「訴追請求」を含め、
東京地検への長官らの職権濫用罪、脅迫罪「告発」などを
誰に忖度しているのか、
全く 一切 報道せず、黙殺 していることは けしからんことで
す!
前線の記者は取材して、承知しているのに、各社デスクがもみつぶしているのです
<訴追請求書>
平成31年2月27日
裁判官訴追委員会 御中
請求人 美和 勇夫
同 浅井 正
同 林 寛太郎
裁判官 林 道 晴 (東京高等裁判所長官) 及び 裁判官 吉 崎 佳 弥 (東京高等裁判所事務局長)(以下「被請求人ら」という。)には,弾劾による罷免の事由があると思われるので,罷免の訴追を求める。
訴追請求の事由
被請求人林道晴は東京都千代田区霞が関1丁目1番4号所在の東京高等裁判所において同所長官として、被請求人吉崎佳弥は同所において同所事務局長として勤務していたところ、両名は共謀の上、平成30年5月24日、同所長官室に、東京高等裁判所及び東京簡易裁判所の判事である岡口基一を呼び出し・・・
同人が私生活上職務外でおこなっているソーシャル・ネットワーキング・サービスの「Twitter」に関し、「裁判官の仕事とTwitterとどちらが大事だ」「Twitterを止めろ、やめなければ分限裁判にかけてクビにしてしまうぞ」などと
憲法上保障された「表現の自由」を侵害し、パワハラ行為にもあたる脅迫・強要をはげしい剣幕で1時間近くにわたって与え続け、同人に苦悩、不安の精神的ダメージを負わせ、もって同人が私的に「Twitter」を使用継続することを妨害したものである。
詳細な事実関係等は次のとおり
第1.本件の事実関係について
1.平成30年5月24日午前11時頃、東京高等裁判所判事であり、かつ東京簡易裁判所判事である岡口基一(以下「岡口裁判官」という)は、東京高等裁判所の長官室に出向くよう突然呼ばれた。
東京高等裁判所の長官室には、東京高等裁判所長官である被請求人林道晴(以下「長官」という)と、東京高等裁判所事務局長である被請求人吉崎佳弥(以下「事務局長」という)が岡口裁判官を待ち受けていた。
2.長官と事務局長は、岡口裁判官に対し、岡口裁判官が私生活上職務外で行っている「ソーシャル・ネットワーキング・サービス「Twitter」(以下「Twitter」)を今すぐやめるよう」強く迫った。
両名は、岡口裁判官に対し、「「Twitter」と裁判官としての仕事とどちらが大事
なのか」などと、「Twitter」を止めるように激しい剣幕で迫った。
3.両名から激しい剣幕で1時間もツイッター使用をやめるように迫られた岡口裁判官は、何も言えなくなってしまった。
4.激しい剣幕で迫られたにもかかわらず、岡口裁判官が「Twitter」を止める旨述べることなく黙っていたところ、長官と事務局長は、岡口裁判官に対し、『「Twitter」を止めなければ分限裁判にかけて岡口裁判官をクビにしてしまう』
旨申し向けた。
事務局長は、『君ね。今、長官が何をおっしゃっているか分かってる?君、さっき、「Twitter」と裁判官の仕事を比べると裁判官の仕事の方が大事だと言ったよね。でも、分限裁判でクビになってしまったら、裁判官の仕事はできなくなってしまうんだよ。君、そういうこと分かってるの』などという発言をした。
ツイッター使用を妨害してやめさせることを決意させようという状況が1時間近く続いた。
5.出がけに事務局長は、岡口裁判官に対し、電話をするように言った。
岡口裁判官が事務局長に架電すると、事務局長は岡口裁判官に対し、再び「Twitter」を止めるように妨害した。
それでも岡口裁判官が「Twitter」を止めると言わなかったところ、事務局長は、岡口裁判官に対し、『君、変わってるね』と侮辱した言葉を発した。
6.岡口裁判官は、精神的なダメージを受けていたく感情を傷つけられ、その日以来睡眠が浅くなり、日中は集中力が欠ける状態が続いた。
7.岡口裁判官は、ツイッター使用を妨害されてもやめるとは言わなかったの
で、平成30年7月24日付で、東京高等裁判所から岡口裁判官に対し、裁判官分限法6条に基づき、懲戒申立てがなされた。
第2.事実関係に関する証拠
1.岡口裁判官の陳述書に基づく。
2.また、『事務局長』が東京高等裁判所分限事件調査委員会に提出した『報告書』(岡口裁判官の分限裁判の記録というホームページ上に掲載されていたもの)には、下記の記載がある。
記
① 裁判官の仕事よりもツイートの方が大事なのかという質問に対
し、
② 同長官が、申し訳ないという気持ちを疑うつもりはないが、行動につながっていないから困る、ツイートを続けるということであれば、それを前提にして分限裁判を検討せざるを得ないと述べた
③ 長官は、仮に裁判官を辞めることになってもツイートは止めないということかと尋ねた
3.この『報告書』からすると、事務局長も、『長官と事務局長が、岡口裁判官
に対し、ツイートを辞めなければ分限裁判を検討せざるを得ない旨及びツイート
を辞めなければ裁判官を辞めることになる旨の圧力をかけた』ことを認めている。
4.検察庁には関係者を調べた証拠となる書類及び証拠物等が存在する。
第3.被請求人らの行為が脅迫罪・強要罪に該当すること
1.条文
刑法第222条(脅迫)
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
刑法第223条(強要)
1 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前2項の罪の未遂は、罰する。 (未遂罪の規定あり)
刑法第60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
2.どのような事案が脅迫罪・強要罪に該当するとされているか(今までの前例はいくらでもあります)
⑴ 脅迫罪について
- 「君の警察活動を止めよ、止めないと必ず不幸が起こる」
「君も妻子があるから、よく考えたらどうか、皆、君の敵ばかりだ」等申し向けた事案(大阪高裁判決昭和29年6月11日)。
※このような事案を参考にすると、例えば「君のTwitterを止めよ、止めないと不幸が起こる」と申し向ければ、脅迫に該当するものと考えられる。
② 県警察本部警察隊長に対し「国民の敵になり身を滅ぼすより、辞職せよ」等記載したビラをもって了知させた事案(最高裁判決昭和34年7月24日)。
⑵ 強要罪について
① 強要罪の脅迫は、脅迫罪にいう脅迫と同じである。
② 権利の行使の妨害の例としては、告訴を中止させた事例、競技大会に参加出場することをやめさせた事案などがある。
③ 万引きを疑っている警備員を装って、
「分かってますよね。警察に行くか。今ここで調書を作った方があなたにとっていいと思いますが。」などと申し向け、文書を作成するよう要求して脅迫し、
「私は貴店で万引してしまいました。」、「深くお詫び申し上げます。」などと記載した誓約書等2通を作成させ、もって義務のないことを行わせた事案。
⑶ 強要未遂罪について
- 作為を強いるために脅迫の文言をしたためた書状を郵送したが、相手方に到達しなかった事案。
- 自宅のパソコンを使用し、被害者が使用するメールアドレスに、「被害者の裸体画像等と共に返信がなければばらまく」旨記載した電子メールを送信して閲読させ、「その要求に応じなければ被害者の名誉に危害を加える旨告知して怖がらせ、義務のないことを行わせようとした」が、被害者が応じず、その目的を遂げなかったという事案。
3.脅迫罪・強要罪にいう脅迫に該当すること
脅迫とは、一般人をして畏怖せしめるに足る害悪の告知をいう。
注(あくまで一般人が基準です)
高等裁判所・簡易裁判所の判事が、雲の上のおそれ多い存在の上司である高等裁判所の長官と事務局長から
「分限裁判にかけてクビにしてしまう」旨申し向けることは害悪の告知にあたる。
長官室に呼び出され、そんなことをいわれれば、職を失い、ひいては高等裁判所・簡易裁判所の判事であるという名誉も失い、収入も失う可能性が高いと考えるのが通常である。
(東京高等裁判所長官は、最高裁判所長官・裁判官に次ぐもので、政府における副大臣等に相当する・事務局長も裁判官で出世エリートコースにある司法官僚といわれる人です)
裁判官分限法の6条は、「分限事件の裁判手続は、裁判所法第八十条の規定により当該裁判官に対して監督権を行う裁判所の申立により、これを開始する」と規定している。
裁判所法80条2号は、「各高等裁判所は、その高等裁判所の職員並びに管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督する」と規定していることから、東京高等裁判所は、東京高等裁判所の裁判官及び東京簡易裁判所の裁判官に対し監督権を有しており、東京高等裁判所の長官は、分限裁判の申立を行う権限を有する。
そのため、「東京高等裁判所のトップである長官」と「事務方のトップである事務局長」(裁判官)から、分限裁判にかけると申し向けられれば、分限裁判にかけられる現実的可能性が非常に高いと思うのが通常の人間である。
裁判官分限法の2条は分限裁判における懲戒の内容を定めているところ、
「裁判所の懲戒は、戒告又は一万円以下の過料とする」とされており、分限裁判によって罷免はできないが、分限裁判において懲戒処分を受けた場合、裁判官として再任用されないおそれが充分にある。
再任用されなければクビと同じである。
さらに、分限裁判において懲戒処分を受けた場合、次いで、国会の「弾劾裁判」により罷免されることも充分にあり得る。
高等裁判所長官はその勤務する裁判所及びその管轄区域内の下級裁判所の裁判官について、弾劾による罷免の事由があると思料するときは、最高裁判所に対し、その旨を報告しなければならない。
最高裁判所は、裁判官について、“弾劾による罷免の事由があると思料する”ときは、「裁判官訴追委員会」に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならないとされている(裁判官弾劾法15条2項、同条3項)
すなわち、高等裁判所長官ほどの立場であれば、裁判官を分限裁判にかけたうえ、「弾劾による罷免の事由がある」と最高裁判所に報告することで、弾劾裁判を開始させ、罷免につなげることができる。
実際に、
今回、岡口裁判官は弾劾裁判にかけられる可能性がある事態に至っている。岡口裁判官に対し、
国会の裁判官訴追委員会(委員長・田村憲久衆院議員)が、事情聴取のために平成31年3月4日に出頭するよう要請した。聴取の内容を踏まえ、罷免を判断する国会の裁判官弾劾裁判所に訴追すべきかどうかが検討されることになった。
今まで東京高等裁判所・東京簡易裁判所の判事としてのキャリアを築いてきた者が、
分限裁判によって懲戒処分を受け、あるいは分限裁判にかけられ今後再任用されないということになり・・・、
さらには最高裁判所に罷免事由があると報告され弾劾裁判にかけられるなどして、名誉を失い、仕事(裁判官としての職務を行う自由)を失い、収入を失うということは身の破滅同然であって、畏怖しない(おそれおののかない)はずがない。
高等裁判所の長官と事務局長が・・・高等裁判所・簡易裁判所の判事に対し、上記のとおり「分限裁判にかけクビにしてしまう」旨申し向けることは、脅迫に該当する。
4.自由、名誉及び財産に対する害悪の告知であること
脅迫罪・強要罪の加害の対象は、告知の相手方の生命、身体、自由、名誉、財産である。
前述のとおり、東京高等裁判所・東京簡易裁判所の判事というキャリアを失うことによって、裁判官の職務を行うという自由を失い、東京高等裁判所・東京簡易裁判所の判事という名誉を失い、収入という財産を失う。
よって、分限裁判にかけてクビにしてしまう旨申し向けることは、自由、名誉及び財産に対して害を加える旨の告知となる事明らかである。
5.違法性は阻却されないこと(違法でないとは言えない)
長官と事務局長が、岡口裁判官に対し、監督権限に基づきクビになるよといいながら「Twitter」を止めるように注意・説得することが適法行為だったとは到底言えない。
岡口裁判官が私生活上行っている「Twitter」中、「・・・・・・・・・・」の表現は適切でないから注意するようにと説得するならまだしも、
およそツイッター使用をやめてしまえということを“命令・威嚇 口調”で述べるのは、憲法で保障された「表現の自由の侵害」である。(長官たるものの憲法違反は重要である!)
たとえ長官と事務局長が、岡口裁判官に対し、監督権限に基づき「Twitter」を止めるように注意・説得することに何らかの相当理由があったとしても・・・
、『これこれの理由で〇月〇日のツイッター表現は不適切であるから』と・・理由を明らかにして『「Twitter」を止めたらどうだろうか』などと穏やかに相談すればすむことである。
1時間あまりも『分限裁判にかけてクビにする』などと脅してツイッターを全部やめるよう迫ったのは、適切な説得を超えたパワハラ行為(不法行為)であり、岡口裁判官が訴えれば国家賠償裁判(損害賠償事件)となる。
高等裁判所の長官と事務局長という高裁司法行政のトップから、高等裁判所に所属する裁判官が長官室に呼び出され、『分限裁判にかけてクビにする』と言われれば・・・「分限裁判によって懲戒処分を受けるかもしれない」「分限裁判にかけられ今後再任用されないかもしれない」
さらには「最高裁判所に罷免事由があると報告され弾劾裁判にかけられ罷免されるかもしれない」などと不安に思い、今まで築いてきたキャリア、収入、名誉を失うことをおもんばかり、強く畏怖するのが、つねである。
『分限裁判にかけてクビにする』と申し向けるのは、社会通念上相当な注意の方法を著しく逸脱する行為であり、昨今世上「各分野」で問題にされている「パワハラ行為」そのものである。
このようなパワハラが、ブラック企業ではなく、こともあろうにそれらを法でさばく高等裁判所の長官室で行われた事は由々しき大問題である。
『分限裁判にかけてクビにする』『Twitterをやめろ』などと1時間にわたり申し向ける行為は監督権限を濫用したものに他ならない。
申立人らは、【職権濫用罪】でも告発したが、「嫌疑なし」で不起訴とされたので、この犯罪は、直ちに東京地方裁判所へ不服審判の申し立てをした。
長官と事務局長が、岡口裁判官に対し、適法な監督権限に基づき「Twitter」を止めるように言ったのだとしても、かかる手段方法は違法性を阻却しない。
6.強要罪の「権利の行使を妨害した」に該当すること
岡口裁判官は、「表現の自由」として私的に「Twitter」を使用する権利を有していた。しかるに被請求人らは、岡口裁判官を、密室である長官室に呼び出し・・・、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの「Twitter」を止めなければ分限裁判にかけてクビにしてしまう旨強要し続けて裁判官としての将来生活に不安、恐怖を覚えさせ、精神的に取り返しのつかない強いダメージを与えた。
岡口裁判官が私的に「Twitter」を使用継続することを(やめさせとして脅し)妨害した。
被請求人ら両名がツイッターをやめさせようと画策して実行した行為は、岡口裁判官の「ツイッターを継続して今後も使用したいという権利を強力な公権力の行使により妨害した」といえる。
7.強要罪の未遂処罰規定
仮に強要罪の既遂ではないとしても、強要罪には「未遂処罰の規定」が存在する。
「Twitter」を止めなければ、分限裁判にかけてクビにしてしまうなどという被請求人らの言動は、ツイターをやめさせるよう強要するものである。それだけで「Twitter」の使用を妨害するもので、使用を妨害するに足りる十分な危険性を備えている。
第4.被請求人らの行為が公務員職権濫用罪に該当すること
1.公務員職権濫用罪は、公務員による職権の濫用によって、①人に義務のないことを行わせ、②または権利の行使を妨害することである。
2.被請求人らが公務員であることは明らかである。
被請求人らと岡口裁判官は、実質的に上司と部下の関係にある。
3.職権の「濫用」とは、公務員がその職権を不法に行使することであり、判例は「公務員がその一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的に、具体的に違法、不当な行為をすること」と定義している。
4.一般的職務権限は、明文の根拠規定がなくとも、法制度を総合的、実質的に観察して認められる場合であればよいとされている(最決昭和57年1月28日刑集36巻1号1頁[身分帳事件]の栗本裁判官の補足意見。)。判例によると、一般的職務権限は、法令上明文の根拠規定がなくとも、その権限行使は強制力を伴うものでなくとも良い。
被請求人らが岡口裁判官に対し、「Twitter」使用を止めなければ分限裁判にかけてクビにしてしまう旨申し向け妨害した行為は、岡口裁判官を監督する目的で行われた。
これは、分限裁判という言葉が使用されていることからも、平成30年7 月に至って実際に懲戒申立てがなされていることからも推認できる。
5.この点について、裁判所法80条は、「司法行政の監督権は、左の各号の定めるところによりこれを行う」と規定し、同条2号は、各高等裁判所は、その高等裁判所の職員並びに管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督すると規定する。
裁判所法20条は、各高等裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、各高等裁判所長官が、これを総括すると規定している。
他方、下級裁判所事務処理規則20条は「司法行政事務は、裁判官会議の議により、その一部を当該裁判官会議を組織する一人又は二人以上の裁判官に委任することができる」と規定する。
そのため本件は、裁判官の監督権限行使につき、『裁判官会議の議』により、①「被請求人ら両名に委任されていた場合」と、②「委任されていなかった場合」とが考えられる。
裁判官の監督権限につき、①『裁判官会議の議』により被請求人らに委任されていた場合には、被請求人らに一般的職務権限があったことは明らかである。
裁判官の監督権限につき、② 『裁判官会議の議』により被請求人らに委任されていなかった場合であっても、裁判所法80条及び下級裁判所事務処理規則20条からすれば司法行政事務の監督権限を委任できる仕組みになっていることや、高等裁判所長官・事務局長と高等裁判所の判事という両者の関係、関係性の結び付きの強さを考えると、岡口裁判官を監督する目的のもと被請求人らが「Twitter」を止めなければ分限裁判にかけてクビにしてしまう旨申し向けた行為は、職務と切り離された私的なものとみることは到底できない(岩瀬徹 最高裁判所判例解説刑事篇昭和60年129頁を参照)。
よって、岡口裁判官を監督するため、被請求人らが岡口裁判官に対し、ツイッターをやめるように注意するなどの行為は、被請求人らの一般的職務権限に属する事項に該当する。
6.本件で、長官と事務局長が、岡口裁判官に対し、監督権限に基づきクビになるよといいながら「Twitter」を止めるように注意・説得することが適法だったとは到底言えないのは,前述したとおりである。
7.岡口裁判官は、「表現の自由」として
私的に「Twitter」を使用する権利を有していたところ、被請求人らは、岡口裁判官を、密室であるいかめしい長官室に呼び出し、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの「Twitter」を止めなければ分限裁判にかけてクビにしてしまう旨強要し続けて裁判官としての将来生活に不安、恐怖を覚えさせ、精神的に取り返しのつかない強いダメージを与え、
岡口裁判官が私的に「Twitter」を使用継続することをやめさせるよう妨害した。
よって、被請求人ら両名がツイッターをやめさせようと画策して実行した行為は、岡口裁判官の「ツイッターを継続して今後も使用したいという権利を強力な公権力の行使により妨害した」といえる。
8.なお、岡口裁判官が「Twitter」の使用を止めると言わなくとも、「Twitter」の使用を止めさせることが可能な言動をしたこと自体で権利の行使を妨害したといえる。
『出田孝一「判解」最高裁判所判例解説刑事篇平成元年度103頁(盗聴事件最決平成元年3月14日に関するもの)』においては、下記のような説明がされている。
『本件について、被請求人らが盗聴に成功したとは認められないことを理由に公務員職権濫用罪の成立を否定する見解がある(中森喜彦・後注1 七三頁)。
しかし、通信内容を現実に了知されないことだけでなく、これを了知されることのない状態を維持、確保することも通信の秘密ないしプライバシーの権利に含まれるとの見解に立てば、盗聴に成功したかどうかにかかわりなく、
盗聴可能な状態を作出したこと自体で右の権利侵害があったと考えることも可能である』
従って、私生活においてソーシャルネットワーキングである「Twitter」を使用することだけでなく、使用を妨害されることのない状態を維持、確保することも表現の自由に含まれるのであって、使用を止めさせたかどうかにかかわりなく、使用を妨害可能な言動をしたこと自体で権利侵害があったと考える。
そして、「Twitter」を止めなければ分限裁判にかけてクビにしてしまうなどという被請求人らの言動は、「Twitter」の使用を妨害可能である。
第5.被請求人らの行為の悪質性
1.裁判所は「適法な手続」による正義を示してくれる機関であると国民が信じているからこそ、裁判所の威厳・信頼が保たれている。
長官は東京高等裁判所のトップであり、事務局長は東京高等裁判所の事務を取り仕切るトップであるから、法令を遵守すべきは当然である。
いくら部下であっても、裁判所において、部下に対し刑法にふれるような脅迫、強要行為を行っておどしてはならないことは当然である。
(日頃このようにおどして部下を叱責することを当然と思っているのでないか?)
長官と事務局長が、裁判所で我が国の刑法にふれる脅迫、強要という違法行為を行った事は裁判所に対する国民の信頼を大きく損なうものである。
まして地方裁判所でなく、裁判官のすべてが畏敬の念をもつ東京高等裁判所の「長官室における行為」である。
2.国民の裁判に対する信頼を守るべき立場にある被請求人らトップが行った「Twitterを止めなければ分限裁判にかけてクビにするなどと発言し、岡口裁判官のTwitter使用を妨害した」脅迫、強要行為は、悪質性がきわめて高い。
第6.弾劾による罷免の事由に該当すること
1.脅迫罪・強要罪に該当する事案の部分でも紹介したが、前例を参考にすると、例えば「君のTwitterを止めよ、止めないと不幸が起こる」と申し向ければ、脅迫に該当する。
2.「Twitterを止めろ、やめなければ分限裁判にかけてクビにしてしまうぞ」などと1時間にもわたり申し向けることは、
仮に岡口裁判官の行った「Twitter」上の表現に多少問題があったとしても、社会通念上相当といえる注意の方法を著しく逸脱している。 適法な注意の方法とはいえない。
3. 岡口裁判官の「Twitter」上の発言に問題がないというのは大多数の学者・法律家の意見である。
仮に「Twitter」上の発言に多少の問題があったとしても明らかに問題があると言える事案ではなく、問題があるかどうかについては見解の相違がある。
4.仮に「Twitter」上の発言に問題があったとしても、「Twitter」上のこのような発言に問題があるから消去するよう申し向ければ足り、
「Twitter」そのものをやめさせる必要性は全くなかった(全く問題のない「Twitter」上での発言も規制しようとするものであった。)。
「Twitter」そのものをなんとしてもやめさせようと、長官室で脅した被請求人らの行為は、度を越している。
5.証拠として、被害者である岡口裁判官の陳述書が存在する。
のみならず、被請求人とされている事務局長自身が『長官と事務局長が、岡口裁判官に対し、ツイートを辞めなければ分限裁判を検討せざるを得ない旨及びツイートを辞めなければ裁判官を辞めることになる旨の圧力をかけた』ことを認めている。
すなわち、被請求人自身の自白が存在するケースである。
6.被請求人らの行為は、脅迫罪、強要罪、公務員職権濫用罪の共同正犯という刑法上の犯罪に該当する行為であるばかりか,前述のとおり悪質である。
よって,弾劾法2条2号の「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」に該当する。
結 語
被請求人らの所為は、弾劾法2条2号に該当する行為と思料されるので、罷免の訴追を求められたく、請求する。
以上