忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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2005年の幕開けは「カンフーハッスル」と共に

2004年12月26日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

■DVD:「カンフーハッスル」


強烈な印象を残した「少林サッカー」から2年、
ついにチャウ・シンチーの最新作が完成した。
もちろん今作でも監督・主演・脚本・製作のひとり4役を務めている。
とにかく遊びまくって作った感のある「少林サッカー」に比べ、
全体的にグッと大人向けに作ってあるのが印象的だ。
貧民街にある豚小屋砦の住人達と、悪名高きギャング団・斧頭会との戦いや、
伝説の達人達が繰り広げる死闘の一部には残虐なシーンも含まれており、
「少林サッカー」のお気楽なノリを期待して観ると多少面食らうかも知れない。

とは言え、「少林サッカー」ファンが楽しめる要素もふんだんにある。
ワイヤーなどのVFX効果を使い、マンガ的な演出を再現する手法は健在で、
何気ないシーンから達人達の必殺技まで、今回は大盤振る舞いの大サービスぶりだ。
アクション監督に「マトリックス」「キルビル」のユエン・ウーピンだけでなく
「メダリオン」「80デイズ」のサモ・ハン・キンポーも配しているだけあり、
VFXを使わないアクション部分にもちゃんと見応えがある。
今年観たアクション映画の中には「マッハ!!!!!」という佳作もあったが、
あの映画はタイ人特有の生真面目さが邪魔をして娯楽に徹しきれていない部分があった。
しかし「カンフーハッスル」は違う。
カンフーが好きで好きで仕方ない人間が嬉々として作ったという匂いがプンプンする。
gooの映画サイトを見て初めて知ったのだが、チャウ・シンチーは
「カンフーの達人になるのが1番の夢、俳優は2番目」なのだそうだ。
プンプン匂うわけである。

この映画のもうひとつの見所は、
「少林サッカー」よりもチャウ・シンチーの人柄がより色濃く出ていることだ。
今回私が発見したチャウ・シンチーのキーワード、それは「ファン」だ。
「マニア」でも「オタク」でもなく「ファン」である。
この映画には、過去の名作・ヒット作から拝借したネタが多数鏤められているが、
どれもこれも清々しいまでストレートに拝借していて実に微笑ましい。
斧頭会の下っ端が全員黒服で登場するシーンはまんま100人スミスであり、
壁の向こうから大量の血が流れ出てくるシーンはまんま「シャイニング」であり、
その他にも至る所に散見することが出来るが、不思議な程に不快感がない。
それは、チャウ・シンチーの目線が明らかに「ファン」だからではないかと思う。
「好きだなと思う詩を書き留めて、それに手を加えて出しました」
と言ったアイドルもいたが、そういう意味の「ファン」ではなく、
ニュアンスで言えばナイナイの岡村が他の芸人のギャグをよく使うのと似ている。
チャウ・シンチーは愛を込めて拝借しているのだ。
同じような監督に「キルビル」のタランティーノがいるが、あの人は完全に「オタク」である。
タランティーノの拝借の仕方は細かい上に年代もバラバラなため
素人には理解し難い事もしばしばだが、その分熱烈な支持を受けてもいる。
チャウ・シンチーの場合は、年間5、6本しか映画を観ないという
ライトユーザーでも知っている作品から、それと分かる拝借の仕方をするのだ。
タランティーノと比べてどちらが良い・悪いの話ではない。私はどちらも好きだ。
ただ、サービス精神という意味においてはチャウ・シンチーの方が上かと思う。

この映画で唯一難点になっているのは、恋愛部分がかなり希薄なことだ。
「少林サッカー」では、ヴィッキー・チャオ演じるムイが非常に良いキャラクターで、
恋愛とサッカーという、同時進行するふたつのストーリーのパイプ役として
ちゃんと機能していたのだが、今回は恋愛部分が最後まで置き去りになってしまっている。
幼少期の設定もきちんと作ったのなら、もう少し膨らませても良かったと思うのだが・・・

新年一発目の笑い初めとして観るにはうってつけの1本であることには間違いない。
冒頭にも書いた通り多少残酷なシーンはあるが、
管理人夫妻の活躍でそれも帳消しに出来るはずだ。
公開日の元旦は映画ファンサービスデーである。
初詣帰りは是非劇場へ。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:カンフーハッスル
    配給:ソニー・ピクチャーズ
   公開日:2005年1月1日
    監督:チャウ・シンチー
   出演者:チャウ・シンチー、ブルース・リャン 他
 公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/kungfuhustle/site/index.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
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8 コメント

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Unknown (豆腐)
2004-12-27 11:51:02
最後に映画を見たのはいつだったか。

恋愛部分なんていりませんよ、うん。
返信する
Unknown (ソドム)
2004-12-27 17:28:12
この映画のCMとか見るたびに

本当は日本がこういう映画を撮らなきゃ

いけないのになぁと思うのは私だけでしょうか?



結局マンガ、アニメ、ゲームをマニアの物であると

決め続けた世間的な閉鎖間がある日本では無理だったんでしょうかね。





ハリウッドの様な大爆発シーンの後に黒煙の中から

ドリフの様に頭爆発してて口から白い粉を出すような

阿呆な映画がたくさん出て欲しいもんです。
返信する
me,too. (koto)
2004-12-27 17:38:09
夏ぐらいから情報は聞いていて、チェックしていたので見たいですが、

いかんせん、映画館が上映している時間は、会社に拘束されているので、

見るチャンスは元旦しかない・・・。



親戚一同が同じ市内にいるので、年始回りをしながら、

ゲーム買って、映画見て・・・

分刻みのスケジュールになりそう(泣)



少林サッカーを見逃しているので、

時間作って映画館へ足を運ぶようにしよう
返信する
む、 ()
2004-12-28 01:23:36
>豆腐殿



そう寂しいことを言うな。



>ソドム殿



そうなのだ。

日本が原作である「オールドボーイ」が韓国で映画化されたときも

やはり口惜しい思いをした。

日本人はなぜか海外に行って箔をつけてくると

途端に有り難がる風潮がある。

日本人は日本人以外に褒めてもらわなければ安心出来ないのかも知れない。

もっと自分の感性に自信を持って欲しい。



>koto殿



お忙しい生活の合間に当BLOGに来ていただき感謝。

「少林サッカー」を未見なのであれば、

まずDVDなどで感覚を掴んでおいた方が良いかも知れぬ。

チャウ・シンチーの作品は案外人を選ぶので。



返信する
Unknown (minao)
2005-01-04 22:50:56
今日見てきたんですが、私の見たかったカンフー映画の要素が全てつぎ込まれている感じで、もう大満足でした。

小難しいこと考えずに、アクションシーンで熱くなれて、ちょっとジンと来るシーンもあって・・・

そしてそういうシーンの配置の仕方が絶妙だなと。

「娯楽映画はこうでなきゃ!」と思わせる出来でした。



残酷な描写はわりと苦手なのですが、

最初からカンフー映画として見に行ったおかげなのか、

あまり気になりませんでした。

その点はギャグ映画として見に行って、序盤で理不尽な暴力を見せられた小林サッカーの方がどちらかというと苦手だったかもしれません。

ギャグ(?)シーンでああいう暴力が頻繁に出てくるのは、

中国人の感覚なのか、チャウ・シンチーの感覚なのかはよく分かりませんが・・・

恐らく漫画として描かれればあまり気にならないんでしょうけど、映像として表現されると、ちょっとドキッとしてしまうんですよね。
返信する
こりゃ「加油中年(造語)」だな(笑) (koto)
2005-01-06 16:14:13
年始回りをパスして(本当は仕事だった・・・)

映画館4館走り回って、なんとか観ました。



心の琴線は、殺し屋の琴の様に激しくなりました(笑)。



あぁ、素薔薇しき、オヤジ達の宴・・・。



忍様、面白かったっス!!
返信する
計算し尽された貧乏 (シンちゃん)
2005-01-17 12:57:54
この映画は汚い(褒め言葉)

建物、威服、人物、性格描写、何から何まで、徹底して汚い(褒め言葉)



美しく、そして汚い、計算し尽された貧乏な映像にぐいぐい引き込まれました

映画の前半、ギャングの隆盛、達人達の登場、脱力満点のチェイスシーン、殺し屋との戦いまで、息詰まる思いで没入させてもらいました



が、映画の後半になると、肝心のアクションが退屈に感じました。

何所かでみた絵面であることは承知の上、この監督の持ち味であり、なおかつパロディ大好きな筈の私がどうして退屈だったのか?



3日考えて未だに解りかねてるのですが

たぶん、アクションがゆっくり過ぎるからではないかと思ってます
返信する
む、 ()
2005-01-19 01:16:28
最近掲示板の新規書き込みが多過ぎて

古い記事の書き込みを見逃してしまう。

申し訳ない。



>minao殿



「少林サッカー」の笑いの部分が辛いというのは同感だ。

ただあのノリはシンチー作品特有のものではなく、

香港映画のノリなのだ。

私も最近は慣れて来たが、合わない人も多いと思う。



>koto殿



おぉ、満足していただけたか。良かった。

私もあの琴をひく兄弟が好きだ。

ボスガエルも捨て難いが。



>シンちゃん殿



そうか、ゆっくりであったか。

確かにスピード感という点では今ひとつだったかも知れぬ。

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