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忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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映画「星つなぎのエリオ」独りじゃないと知ること|「リメンバー・ミー」「ソウルフル・ワールド」も再紹介

2025年07月29日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼映画「星つなぎのエリオ」独りじゃないと知ること



08月01日公開■洋アニ:星つなぎのエリオ

ディズニー&ピクサーの名コンビによる新作「星つなぎのエリオ」が8月1日より公開。
両親を失った地球の少年が、同じく孤独を抱えたエイリアンの少年と友情を育み
二人で手を取り合って宇宙の危機を救うファンタジー。
声の出演はヨナス・キブレアブ、ゾーイ・サルダナ、渡辺直美、レミー・エジャリー。
脚本は「ソウルフル・ワールド」のマイク・ジョーンズ、「私ときどきレッサーパンダ」のジュリア・チョー。
監督は「私ときどきレッサーパンダ」のドミー・シーと本作が長編デビューとなるマデリン・シャラフィアン、
「リメンバー・ミー」の共同監督を務めたエイドリアン・モリーナの3人体制。
日本版エンドソングはBUMP OF CHICKENの名曲「リボン」。

ピクサーといえば、その名を見た時点で
一定以上のクオリティが約束されている大安定のトップ・ブランドであり
特に本作は私の大好きな「ソウルフル・ワールド」の脚本家と
「リメンバー・ミー」の脚本&共同監督のタッグということで期待も大きかった。
宇宙に憧れを持つ少年が両親を失くし、世界で独りぼっちになってしまったと
落ち込んでいる時、遥か遠くの星の住人と無線で繋がり、
予想もしていなかった刺激的な出会いと大冒険を経て生きる力を取り戻す。
この優れたプロットを、製作陣が100%生かせていたかと言われると
残念ながら従来のピクサー作品に比べて甘いと言わざるを得ない。
マーベルやディズニーでは当たり前になっているチーム形式による脚本や演出が、
本作においてはテーマの軸をぶらし、キャラクターの心理描写を薄くしてしまったような気がする。

「リロ&スティッチ」のような異世界の住人との友情物語にしたかったのか、
「リメンバー・ミー」のような故人を悼む心を描きたかったのか
伸ばした枝葉がそれぞれの先で大きな花を咲かせるには至らず、
大団円に向かってひとつに集約されていくようなダイナミックさもない。
シーン単位で見ればそこそこ良い話なのだが、
1本の映画としてまとまっていかないもどかしさがある。

「宇宙のどこかに私たちとは違う生物がいて、彼らとコミュニケーションが取れたなら」

少年の夢が現実のものとなっているのに、物語が喜びや興奮や人種を超えた友情よりも
少年の吐いた嘘にフォーカスし、説教臭くしてしまったのも失敗だったのではないか。

この世を去った愛しい人々が、自分のことを今もどこかで見守ってくれていると信じ
今日を生きていくのが「リメンバー・ミー」の教えであるのに対し、
愛しい人々が居なくなった世界でも、あなたは決して独りぼっちではないんだよと
語りかけるのが「星つなぎのエリオ」の教え。
哀しみに捉われるあまり、見落としてしまっている身近な愛情や友情に
目を向けようという視点は温かく共感するが、
ならばこの物語で少年の孤独を埋めるのは、血縁者である叔母ではなく
無線仲間だったのではないだろうか。(彼らもサポートはしているが脇役)
遠い星に住む友人との対比という意味でも、その方がしっくりくる。

ピクサー作品でなければもっとニュートラルに楽しめたと思うので
劇場で観る予定の方は、まずは期待値を少しだけ下げておくことをお勧め。

映画「星つなぎのエリオ」は2025年8月1日より公開。




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ジャズミュージシャンになるという夢が叶う瞬間に
不幸な事故で命を落とした音楽教師のジョーが、迷い込んだソウルの世界から地上に戻るため
人間界に何も期待しないこじらせソウルの22号と協力しながら奮闘する物語。
ジョー役には「ドリーム・ガールズ」ジェイミー・フォックス。
22番役には「デート&ナイト」のティナ・フェイ。
監督は「カールじいさんの空飛ぶ家」「インサイド・ヘッド」のピート・ドクター。
印象的な音楽を担当しているのはNetflix「Mank / マンク」や
A24制作映画「WAVES/ウェイブス」のトレント・レズナー&アッティカス・ロス。

NHKのバラエティ番組「チコちゃんに叱られる!」の中で
「大人になると一年が早く感じるのはなぜ?」という疑問を取り上げたことがあり、
チコちゃんの回答は「年を取ると、人生にトキメキがなくなるから」だった。
子供の頃には、食事ひとつ取っても知らない食材との出会いなどのトキメキがあるが
大人になると食事は空腹を満たすだけの行為になる。
時間経過はトキメキの数が多いほとゆっくりになり、少ないほど早いというものだった。
一年どころか十年前の出来事も最近に思える私には、非常に納得のいく話だった。

本作に登場する通称『22番』は、まだこの世に生まれていないソウルである。
これから世界に生まれ、多くのトキメキを吸収して成長するはずが
多くの偉人とのコミュニケーションを通じて世の中の清濁を見過ぎたせいで
すっかりこじらせ女子と化し、物事を斜に構えて見るクセがついてしまった。
ジャズプレーヤーになる夢を諦めきれないまま音楽教師をしていたジョーは
ついに回ってきたチャンスを手にした瞬間に不幸な事故に巻き込まれてしまう。
生まれたくない22番と、もう一度現世に戻りたいジョー。
まだ生まれ来ぬソウルと、ソウル(ミュージック)を愛する音楽家の道中には
私たちの生活にもあてはまる喜びや悩みに満ちていて、その全てが眩しく愛おしい。
22番が初めてピザを食べてトキメキを覚えるシーンでは
私が幼い頃に初めてハンバーガーを食べた時の感動を呼び起こしてくれた。

ジョーの母親は、夢を諦めて実直に働けという。
幼い頃には「何になりたいか」を問い、それが何にせよ夢があるのは良いことだと
無条件に背中を押してくれたはずが、いつしかレールから踏み外さない生き方をしろと諭されるようになる。
夢が叶おうが夢に破れようが時間は変わらぬ速度で進み人生は前に前に進んでいく。
人生は有限だと気付かされた時に、人はトキメキを感じる余裕を失ってしまう。
チコちゃんは「大人になるとトキメキが減るから」といった。
しかしトキメキとは、日々の生活に無数にあるものではないのかな?とこの映画は語りかける。
大きなイベントが起こらない代わりに、無数の小さな喜びを物語中に配置し
22番がトキメキを感じると同じ歩幅で、見ている私の価値観も書き換えられていく。
夢も大事だけど、命ある一瞬を大切に、ただ生きていればいい。
毎日こなすルーティーンの中にもきっとトキメキは隠れている。それを探していこうよと。
この作品がコロナ禍の2020年に世に発表されたことは奇跡にも思える。




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世界中どこで暮らす人にも等しく訪れる「死」をテーマに、
ふとしたきっかけで死者の国に迷い込んだ少年の冒険を描く。
監督は「トイ・ストーリー3」のリー・アンクリッチと、
本作が監督デビューとなるエイドリアン・モリーナ。
主人公の少年ミゲルの声はアンソニー・ゴンザレス。
ヘクターにはメキシコのNo.1人気俳優ガエル・ガルシア・ベルナル。
ハリウッド進出する必要があったのだろうかとずっと思っていたガエルが
まさかのディズニー作品に出演するとは予想外の喜び。

人は死んだらどこに行くのだろう。
宗教や霊的な存在を信じる・信じないに関わらず、そのことを考えない人はいないだろう。
いつもすぐ側にいると言う者もいるし、天国にいると教える者もいる。
ペットには虹の橋という概念もある。
死後の世界があるのか無いのかは、結局のところ誰にも分からない。
しかし命の灯が消えた瞬間に、全てが無かったことになるのは寂しい。
この「死んだらそれで全て終わりでは寂しい」と想う気持ちが
死後の世界を「あって欲しい場所」とし、今を生きる私達の心の拠り所になっている。
賑やかに葬る国もあればしめやかに葬る国もあったりと、
国によって葬り出す方法は様々だが、
「安らかに眠って欲しい」「もう一度逢いたい」と願う気持ちは世界共通だ。

「リメンバー・ミー」は誰もがおぼろげに抱いていた
「死後の世界」を描いたファンタジーである。
メキシコの風習である「死者の日」は、日本に置き換えればお盆。
墓参りや墓参の祈りが何故あるのか。
その日だけ帰ってくると言われる死者の日やお盆に故人が本当に来ているのだろうか。
いや、来ていて欲しい。
そんな淡い期待を込めて写真に話しかけている私達にとって
この映画はこの上ない癒しであり、教えにもなる。

人は二度死ぬと言われる。
一度は命の灯が消えた時、そしてもう一度は人々から完全に忘れ去られた時だと。
人づてや映画、ドラマで幾度となく聞いてきたこの言葉の意味が
これほど上手に、かつ満点の娯楽作品としてビジュアル化されたことは過去になかった。
エンドロールに出てくる一文と大量の写真に思わず涙が溢れた。
この精神で作っているから、ディズニー作品はいつでも素晴らしいのだ。


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