JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「春婦傳」

2017-09-18 | 映画(DVD)
「追悼企画 映画監督 鈴木清順の世界」

「春婦傳」1965年 日活 監督:鈴木清順

「肉体の門」と同原作者の文芸もの。戦時下の中国内地、慰安所を転々とする娼婦・春美(野川)は、一人の兵士を愛するが…。極限下の銃火で交わされる激しい愛を描いた衝撃作!

6月鑑賞分



野川由美子は鈴木清順作品となると俄然輝くな。鼻の造形からこの人の横顔ショットは絶品なんだな。
春美(野川由美子)は少しギャーギャーとうるさいが、それが彼女の気性をよく現していると言えましょう。故にデレ度に満足。



前線の三上上等兵(川地民夫)の安否を気にして走り出す。爆裂の中の疾走をカメラが横移動で捉える。どうしたってここが一番の魅せ場。
壕の陰に仰向けに横たわる二人。爆撃が花火のように夜空を飛びかう。
当然、反戦映画の側面もあるがモノクロ戦争シーンの美しさは捨てがたい。
何か影を背負う青年兵・三上の川地民夫の佇まいも良く戦場メロ(ドラマ)要素が胸に残る。
八路軍を追う春美がコケる。





副官成田中尉の玉川伊佐男の存在も印象深い。闇の中酒を飲みながら跳ねっ返りの女ほど情が深く自分から離れられなくなった女の性を思い知らせるシーン劇画の一コマのようだ。



悪い軍曹といえばやはり藤岡重慶、時系列は逆だけどイメージ固定されてるからね。

本来は従軍慰安婦の問題を、とある配慮から日本人売春婦に置き換えていると思うけれど、その中にあって最後、唯一の朝鮮女役の初井言栄に吐かせる台詞・・・








上映後トークショー。
川地民夫さん、映画監督の葛生雅美さん。途中から観客席に居た映画監督の蔵原惟二さん、Pの岡田裕さんも飛び入り参加。
皆さん爺いながら雄弁で、トークショーとしては珍しく楽しいもので、帰らずに良かった。これなら進行も楽だろう。
杖をついた川地さんはマイクを持つ手も揺れる彦六状態ながらもお元気で、オシャレな紺ブレが育ちの良さを感じる。医者の息子だったらしい。しゃべってる事は湘南の不良ですけど。
清順監督は女性の仕草演出が上手く、自ら野川由美子役になって、ヤニだらけの歯で川地さんの耳を噛んだって件。
説明を一切せずに解った時点で誇らしく「なっ」と言う件。
撮影第二班の葛生監督と川地さんの間で監督の印象に相違があり、身近であったはずの葛生監督が納得しかねるといった風に頻りに首をひねっておられるのが面白い。
そしてやっぱり皆さん今の邦画界に忸怩たる思いがあるようです。





神保町シアター


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2 コメント

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『暁の脱走』と同じです (さすらい日乗)
2018-09-24 23:25:56
黒澤明が脚本を書き、谷口千吉が監督した『暁の脱走』と同じ原作で、鈴木作品の方が原作に近い。

黒澤脚本では、主人公は手榴弾では死なず、山口淑子と逃げて小沢栄太郎に銃撃されて死ぬのです。黒澤の自己処罰意識だと私は思いますね。
山口も、娼婦ではなく戦地慰問の歌手になっていましたね。
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Unknown (imapon)
2018-10-04 02:25:39
さすらい日乗様、コメント感謝。
ブログ管理ままならず、遅れてすみません。
「暁の脱走」は見ていませんが、見ないうちから「春婦傳」に軍配上げちゃう感じです。いけませんね。
だって、山口淑子より野川由美子。どう転んでも・・・
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