ラーと子供たちの騒ぎ声で目が覚めた。
「なんだ、なんだ?」
ふとんを蹴って飛び出すと、玄関口のテラスに羽幅が20センチもあろうかという巨大な蛾がとまっている。
「まるで、虎みたいな模様でしょ。これはね、幸運をもたらしてくれるありがたい蛾なんだよ」
興奮気味のラーに促されてよくよく見てみると、確かに右側の羽は茶褐色と白のまだらで、そう見えなくもない。
しかし、左側の羽はボロボロで、上縁の左先がなんとなく蛇の頭のようにも見える。
残念ながら、対象をなしていたはずの右羽のその部分は千切れている。
もしも両方の羽が完全に残っておれば、虎と蛇が絡みあったような勇壮な模様が現出するのではあるまいか。
*
それにしても、この羽の傷みようはどうしたことだろう。
蛾の寿命などについては何も知らないが、数々の危機を切り抜けつつ、相当の時間を生き抜いてきたことは間違いないだろう。
もしかしたら、最期のときを悟り、わが家に幸運をもたらすべく羽を休めに来てくれたのだろうか。
科学にからきし弱い文系人間の勝手な妄想を尻目に、当の老いたる巨大蛾は、さっきからピクリともしない。
*
ひとつだけ確かなことは、ラーや村の衆はこの蛾が“幸運をもたらしてくれる”と信じていることである。
幸運とは、再開した麺屋の繁盛だろうか。
ひょっとしたら、宝くじの一等当選かもしれない。
何はともあれ、ここは信じるに如くはない。
そのとき、突如として私の耳にかの懐かしきメロディが甦った。
「モスラ~や、モスラ~♪」
怪しくも美しいハーモニーを奏でるのはむろん、史上最強の双子デュオ、ザ・ピーナッツである(若い人は知らないだろうなあ)。
少年時代に夢中になった映画『モスラ』のシーンを思い出しつつ、私は南の島の原住民のごとく巨大蛾の前にひれ伏し、恩寵の到来を乞い願うのだった。
「モスラ~や、モスラ~♪」
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この幼虫が食草の葉を食うときには、ガリガリと周囲に音を出すようですよ?