【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【麺屋再開店】

2011年07月24日 | オムコイ便り

 去る月曜日から、麺屋を再開店した。

 とはいっても、最近になって市場環境(?)が好転したわけでも、画期的な新戦略を生み出したわけでもない。

 村の衆の懐具合は相変わらずだし、味付けも値段も元のままだ。

 しかし、いくら探しても町には適当な店舗物件が見つからないし、なによりもラーが村を離れたがらない。

 というわけで、勝算は何もないわけだが、座して死を待つ(ちと、大げさか)よりも増しだという心境でのゴーサインだった。

    *

 ところが、蓋を開けてみると、初日には意外に客が入った。

「ああ、やっぱりラーのクッティアオはうまい」

「豚骨スープが効いてるねえ」

 そう声をかけてくれる人も多い。

 気を良くしていたところ、二日目からは停滞気味。

 連日の雨のせいもあろうが、なぜか狙い目の昼飯時には客が入らず、午後1時を過ぎてからぽつぽつと夕方まで続くという案配だ。

「やっぱり、町じゃないと駄目なのかなあ」

「そうは言っても物件がないし、お前さんは町が嫌いだろう」

「思い切って、親戚の多い山奥の村に移そうか」

「あの悪路を、毎日通うのも大変だろう」

 客待ちの間にあれこれ話は出るが、いずれも取りとめが無い。

 客足に一喜一憂しながら、諸々の雑事に追われる時間だけが過ぎてゆく。

      *

 そして、昨日。

 なんと、昼時に一挙15人もの客がやってくるという“事件”が起きた。

 わが店では3卓12席しか設けておらず、2卓が満席になることも滅多にないから、これは大いなる“事件”なのである。

 あふれた客にはゴザに座って待ってもらい、詫びを言いつつフル回転。

 嵐が去ったあと、ラーが腰痛を訴える。

 長い間閉店していたツケが回ってきたようである。

「ああ、忙しかったねえ。でも、お客さんが多いと、楽しいね」

「ああ、そうだな。まあ、あんまり欲張らず、ボチボチいこう」

 ゴザに座って、背中や腰を揉み合いながら、クンター(爺様)とクンヤーイ(婆様)は、ひっそりと笑い合うのだった。

 おっと、お客がやってきた。

 どっこいしょっ、と。

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