【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【ちと、情けないけれど】

2009年12月16日 | オムコイ便り
 
 村に居ながらにしてネットがつながると、やはり気分がいい。

 例の“パソコン破壊および顔面破壊事件”以来、2ヶ月あまりも頭の片隅を覆ってきた暗雲が、一気に晴れたような爽快さである。

 今朝も仕込みが終わると、さっそく愛機マックブック・プロをかかえて、店から50メートルほど離れた村の入り口脇の草むらに腰をおろして(これは、ちと情けない)ネット接続にトライした。

 つながった!

 と思いきや、すぐに途切れる。

 そのまま愛機を抱いて、はるか向こうに見える町のアンテナに向かって10メートルほど移動。

 通りかかるバイクやクルマから、村人たちが「何事か?」という顔で私を眺めている。

 道路脇の土手に腰をおろし、再びトライ。

 今度は、快調である。

 タイミングよく、福岡の姉からメールが届いており、店の写真を貼付して近況を伝えることができた。

 ご心配やお祝いのコメントもたくさんいただき、幸せいっぱいである。

        *

 待ちかねたAISのエンジニアがチェンマイからやって来たのは、昨日の昼過ぎだった。

 さっそく、店の小部屋で無線モデムをセットしての点検作業が始まった。

 彼が持参した電波検出計器では、電波状態には問題がないらしい。

 彼のパソコンに携帯電話をつないでみると、問題なくつながる。

 次に、私のモデムを彼のパソコンにつなぐと、駄目である。

 そこで、モデムのプログラム内容をチェックし、間に何度か本部に電話を入れ、操作を重ねて場所を店先に移すと、懐かしのアンテナバーとEDGEという文字がやっと表示された。

 これは「接続準備OK」という状態で、それまで頭をひねり続けていたエンジニアが思わず小さなガッツポーズを見せた。

 かなり、いい人らしい。

 ところが、接続を試みると待ち状態が延々と続く。

 そこで、再度モデムを彼のパソコンにつなぐと、かなりの高速でつながった。

 「電波はOK、モデムもOK、ということはパソコンとモデムの相性に問題があるのかもしれません」

 ちなみに、彼はマックを触るのは初めてだという。

 そこで、チェンマイのアップルパソコン販売店に電話して、いつも世話になっているスタッフに彼と話をしてもらうが、タイ人どおしなのにどうも話が通じないようだ。

 「マックが初めての人に、電話で説明するのはちょっと無理みたいです。よかったら、彼と一緒に当店へ来てみていただけませんか?」

 スタッフの言葉に、苦笑しながら礼を言って電話を切った。

       *

 エンジニアがタバコを一服し、気を取り直して「あるソフトをダウンロードしてみましょう」と座り直した。

 しかし、何度試みてもAISのバンドを検出できず、やっと検出したかと思うとダウンロード速度はゼロのままだ。

 再び、本部との間で何度も電話のやりとりが続く。

 「このままではどうしようもないので、町に行ってアンテナのそばで試してみましょう」

 そこで、店の前の空き地に停められたAISのクルマに乗り込もうとすると、「ちょっと待ってください。この空き地は、電波が強いからここで試してみましょう」

 だが、やっぱり駄目である。

 クルマが動き始めるとすぐに、「ストップ!ここは、とても電波が強いです。ここで試してみましょう」

 ちょうど、そこは村への入り口に当たるところで、わが麺屋からは50メートルほどの距離だ。

 半信半疑で試してみると、あーら不思議、おなじみのYahoo!画面の登場である。

 「やりましたね!」

 彼、再びガッツポーズである。

 クルマをおりると、彼が胸を張りながら指差す向こう正面に小さく給水塔が見える。

 

 町への距離は、3キロ足らずだ。

 「あそこに、当社のアンテナが設置されています。ネット用電波の限界地点がどうやらこの峠みたいで、あなたの店はこの峠を少し下ったところにあるし、3軒のコンクリートブロック造の家が並んでいるから、残念ながら店の中ではネットが通じないのです。よかったら、チェンマイでネット専用のアンテナを買って屋根の上に付けてもらえれば、店の中でもつながるようになると思います。値段は、700~800バーツくらいでしょう」

 「でも、2ヶ月前にはここから1キロ奥のわが家でもつながったんだよ」

 「そうですか。じゃあ、やっぱりアンテナに問題が出たのかもしれませんね。では、チェンマイに戻る前にアンテナの電波強度をもう一度改善してみることにします」

 「ぜひ、よろしく。期待していますよ」

 店に一度戻り、GPSにわが店の位置を入力してから、彼らは丁寧なワイをして町の方に去って行った。

 やれやれ。

 時間は、すでに3時半である。

 激しい空腹を覚えて、ラーの特盛りクッティアを一気に啜り込んだ。

        *

 夕方、店がひと段落してから愛機を抱えて村の入り口まで向かった。

 新規開店の雑貨屋が休業していたので、店先のテーブルを借りてモデムをセットする。

 ムフフフ。

 つながる、つながる。

 写真アップのスピードも、かつて家でイライラしていたことを思えば、はるかに早い。

 こうして、ここ数日分の記事を一気に掲載することができたという次第だ。

          *

 どうやらアンテナ出力は改善できなかったらしく、家では相変わらずつながらないままだし、店から常にパソコンを抱えて50~60メートルは移動しなければならない。

 なんとも情けない状態ではあるけれども、これでひとまずは“ネット難民”からの脱出成功である。

 家主の雑貨屋からは、「ウチの店の真向かい(村の入り口寄りである)に4軒目の貸家を建てるから、なんならそこに店を移してもいいよ」という話をもらったので、屋根に付ける専用アンテナの状態次第では、店を移転することになるかもしれない。

 まあ、その方が麺屋としての立地条件ははるかに良くなるのだから、一石二鳥というところだ。

 ただし、その4軒目がいつ完成するのかは、まだ定かではない。

 いやはや。

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