【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【短期出家は林間学校?】

2011年04月10日 | オムコイ便り

 
 昨日の昼前、寺に顔を出して驚いた。

 黄衣に身をまとった60人ほどの小坊主が、ずらりと居並んでいる。




 1週間ほど前、3男のポーが剃髪したときには、10人足らずだったのに。

 今日は、病院関係者による健康診断と炊き出しが行われており、腹を空かせた小坊主たちが、昼飯を待っていたのであった。

     *

 アッという間に平らげたポーが、照れくさそうな顔でやってきた。

 高僧が着るような薄茶色の衣をまとっており、なかなか風格がある。

 いつもなら元気なワイ(合掌礼)を送ってくるのだが、今日はニコリと微笑むだけだ。

 出家した僧は、衆生からのワイを受けても、自分からワイをすることはない。

 その慣習に従っているようだ。

 ラーもすっかり僧侶扱いで、「プラ(僧)ポー」などと呼んでいる。

 久しぶりに会う息子の体にも触れず、並んで記念写真を撮るときも距離をおいてしゃがみ込んでしまった。

     *

「クンター、明日家に戻るので服を持って迎えに来てください」

「なんだ、まだ1週間ちょっとじゃないか。なんなら、このままお坊さんになってもいいんだぞ」

「もう、充分修行しました。あとは家に戻ってみて、お寺の方がいいと思ったら、また考えてみます」

「そうか。じゃあ、これまでに何を学んだか教えてくれ」

「えーと、毎日早起きしてお経を読んで、ご飯をたくさん食べて、それからみんなと一緒に楽しく遊びました」

 ラーからは、朝は托鉢に出て、食事も一日に2回、僧侶と同様の厳しい暮らしをするのだと聞かされていたのだが、どうも話が違う。

 托鉢に出ずとも、信者による炊き出しや差し入れで食べ物はあふれており、さっきの体重測定では2キロほど太ったほどだという。

 一番印象に残ったのは、普段は知らない山奥の村の子供たちと仲良く遊んだこと。

 あれこれ話を総合してみると、夏休みの短期出家は、日本でいう林間学校みたいなものらしいということが分かった。

      *

 そのあとのラーとのおしゃべりを聞いていると、

「早く魚獲りに行きたい」

「ソンクラーンの爆竹遊びや水掛けがやりたい」

 遊びの話ばかりである。

 やっぱり、まだ13歳のガキなのである。

 顔見知りの高僧によれば、ほとんどの子供たちがこの日曜日に家に戻り、来週半ばからのソンクラーンを家族と共に楽しむのだという。

「たとえ1週間足らずでも、仏教を間近に感じ、仏や家族を敬う心が深まれば、寺としてもありがたい。ポーは人一倍、僧侶の修行に関心を持っているようだから、よかったらまた来年も出家させてみたらどうだろう」

 ありがたい言葉をいただいた。

     *

 というわけで、今朝は昨夜から降り続く雨の中、ポーや村の子供たちを寺まで迎えに行った。

 高僧に寺院増築のためのタンブン(寄進)を手渡し、立ち話をしていると、見たような顔の年輩の僧がやってきた。

 あれ?

 先日、女房を亡くした近所の雑貨屋の旦那ではないか。

 最近、その姿を見かけないので病気でもしているのでもないのかと心配していたのだが、彼もまた女房供養のために短期出家をしていたのであった。

 葬式のあとしばらくの間、なんだか惚けたような顔で店の前に座っていたものだが、今は引き締まったいい顔をしている。

 暮らしに身近な仏教の力を、改めて感じた次第だ。

     *

 家に戻ると、ポーは以前のようにワイをしながらラーの母親に元気な挨拶をし、投網を引っ掴んで仲間の小坊主たちを引き連れて雨の中を飛び出して行った。

「おいおい、修行明けにさっそく殺生かい」

 そう言いたいところだが、すでに還俗したのだから、何も問題はないのだそうな。

 タイの仏様は、きわめて太っ腹であるらしい。

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