昨夜の満月は、凄かった。
外に出ると、ハッとするほどまわりが明るい。
裏のバナナ畑の地面が銀色に輝いて、浮き上がっているように見える。
放尿するのも、はばかられるほどだ。
*
凄絶なほどの月明かりに射られたかのように、空気もぐんぐん冷え込んでくる。
寒がりのラーが小さな囲炉裏にでかい丸太をくべたので、家の中はまるで火事のような有様だ。
ふとんに入っても、肩や太ももや足先が冷たくて仕方がない。
例によってあれこれと着込んで、子供のように丸まった。
朝方に見た「スネークショー」の様子が目に浮かんで、なかなか寝つけない。
〈双頭の蛇は、本当にいたのだろうか〉
〈それにしても、あの紐で縛るような仕草はどうにもわざとらしかったなあ〉
〈仏像商売としては、先に双頭の蛇を見せた方が有り難みは増す筈なのに〉
〈やっぱり、最後はずっこけるようなオチだったのかなあ〉
最後のギャグシーンをあれこれ想像してくすくす笑っていると、ますます目が冴えてきた。
*
寝返りしながら、ふと目をあげると、割竹壁の隙間から不気味なほどに冴えた満月が顔を覗かせている。
こんな満月が見られるだけでも、オムコイに住んだ甲斐があろうというものだ。
おまけに、あんな怪しげな珍商売も楽しませてもらった。
そんなことを思っていると、ラーが突然大声で寝言を言い、足をバタバタさせ始めた。
月明かりの下、双頭の大蛇と格闘でもしているのだろうか。
*
今朝になって、「クンター、体は大丈夫?」と心配そうに私の顔を覗き込む。
「どうして?」
ははーん、やっぱり、昨夜はふたりして大蛇に襲われたのか。
「だって、ひと晩中おならをしていたから、病気になったかと思って心配したよ」
「・・・」
すべては、怪しい満月のせいだった、ということにしておこう。
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やはり、身の回りのホットな話題には皆さん共感できますもんね。
これからも楽しませてくださいませ。
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しんちゃん
寅さんには、「ついでの折りにオムコイにご降臨たまわり、どこぞの高僧や当たったかどうかも分からぬ宝くじの話などに頼らぬ、本物の“啖呵売”の凄みをお示しくださいますよう」とくれぐれもよろしくお伝えください。