【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【“北極”の春の兆し】

2011年01月21日 | オムコイ便り

 気象情報にも詳しいブログ『新明天庵だより』(ブックマーク参照)によれば、オムコイは“チェンマイの北極”といわれているそうである(本当だろうか)。
 
 確かに、12月から1月にかけての朝晩はきわめて寒い。

 観光ガイドなんぞに「タイは常夏の国である」なんてたわけた表記を見かけると、豚のえさを水でこねた冷え冷えの手をその襟首に突っ込んでやりたくなる。

 とりわけ、昨日の明け方などは今年一番の冷え込みかと思えるほどで、午前7時の気温は7℃。

 最低気温は、おそらく5℃を下回ったのではあるまいか、

      *

 そんな冷たい朝靄の中、次男のイエッが半袖・半ズボンの制服姿で人待ち顔だ。

 こちらは、上着の4枚重ねであるというのに。

「おい、上着はどうしたんだ?」

「学校に行くと暑くなるから、これで平気です。それより、迎えの友だちがなかなか来なくて」

 時計を見ると、遅刻寸前である。

「よし、じゃあクルマで送っていこう」

 バイクだと耳や手がちぎれるし、霧で眼鏡がびしょびしょに濡れる。

      *

 エンジンが、なかなかかからない。

 やっと走り出すと、フロントグラスが曇って前が見えない。

 曇り止めなんてしゃれたもの、「常夏」のタイのクルマには付いていない(新型のクルマのことは分からない)。

 “北極”には、きわめて不便である。

 前面は、深い霧だ。

 仕方がないから、窓を開けて走る。

 さ、さぶい。

 こいつ、いつも半袖・半ズボンで友だちのバイクに相乗りしてるのかあ。

 本当の“北極”なら、死んじまうぞお。

     *

 ついでに、郡役所の駐車場でネットをつなぐ。

 なにやら音楽がうるさいので少しだけ窓を開けると、正面に見えるセブン(イレブン)が開店の日を迎えたようだ。


 
 まだ8時過ぎだというのに、店の前には人だかりができている。

 開店プレゼントらしい風船を手にしている子供たちの姿も見える。

 うーん、ついに始まってしまったかあ(なにが?)。

 オーナーは、クルマやバイクの販売を手がけているジュイである(私の中古車も彼から買った)。

 チェンマイのトヨタ系ディーラーで働いていただけあって、なかなか商売上手だ。

 新車お披露目などのプロモーションに慣れており、風船サービスも彼のアイディアかもしれない。

     *

 店に戻って机に向かうと、足元からゾクゾクと冷え込んでくる。

 ブロック積みで、壁しかないようながらんとした造りである。

 床も、コンクリートの打ちっぱなしだ。

 脱いでいた上着を重ね、靴下も履き直して、起き抜けと同様の完全装備になった。

 室温が23℃になっても、なんだかうそ寒くて仕方がない。

 昼になって家に飯を喰いに戻ると、今度はやたらに暑い。

 気温は25℃ほどになっており、野外同様のわが家はこの気温をもろに反映する。

 上着と靴下を脱ぎ、薄いズボンに履き替えた。

 そのままの格好で店に戻って机に向かい直すと、また寒くなってきた。

 あわてて着替えたが、くしゃみが連発。

 鼻水がとまらなくなった。

 やっぱり、コンクリート造りはいかんなあ。

       *

 そこへ、ラーが飛び込んできた。

「頭痛がひどいから、薬草サウナに行ってもいい?」

 彼女も、数日前から体調を崩した上に風邪にも苦しんでいる。

 最近、町の病院に「マッサージと薬草サウナ施設」が併設されたらしく、さっそく、その噂を聞き込んだらしい。

 提携先は、彼女も通ったことのあるチェンマイの「伝統医薬マッサージスクール」だという。

「俺も風邪ひいたみたいだから、一緒に行ってみるか」

 だが、行ってみるとピカピカの施設はガラガラで「他に客がいないので、人数が揃う夕方にまた出直して欲しい」という。

 ちなみに、サウナは30分で40バーツ、全身マッサージは1時間120バーツ。

 さすが、“北極”である。

 戻りかけると、病棟の方にピンク色のかたまりが見える。

「あれ、桜じゃないか?」

 近づいてみると、枝振りは桜なのだが、花芯の色が濃く、桜のような梅のような微妙な花びらである。




「よく分からんが、寒いオムコイにも春が来つつあるということで、実にめでたい」

 きわめて文系的な感想を述べつつ、“北極の春の兆し”を愛でた。

      *

「きれいだねえ。さて、仕方がないからセブンにでも寄って帰ろうか」

 き、来たあ。

「お前さん、頭痛がひどいんじゃないのか?」

「うん、そうだけど、せっかくだから、ちょっとだけね」

 むろん、ちょっとだけで終わるわけがない。

 店内では、民族衣装を着たラフー族の女性が手っぱいに菓子をつかんでいる。



 負けじとラーの提げた買い物籠も、見る見る山になっていく。

 大好物の焼きソーセージ(日本のコンビニだとおでんみたいなものか)はともかく、買い置きのあるシャンプーや石鹸までまとめ買いだ。

 まるで、閉店セールに臨む猛者の勢いである。

「あのなあ、別に今日で終わるわけじゃないんだから、落ち着きなさいよ」

「だって、新開店はお祭りみたいなもんなんだから買い物を楽しまなくちゃ」

「・・・」

 店を出てレシートを見せると、ミッキーマウスと熊のプーさんの蓋付きマーマ(インスタント麺)用プラスチック丼が手渡された。

「わあ、子供たちが喜ぶね」

 さらに、レシートに名前と電話番号を書いて大きな箱に入れておくと、抽選で台の上に置かれている景品が当たるかもしれないという。

「あ、欄の花やアイロンもあるね。やったあ!」

 まるで、もう当たったような喜びようである。

「ところで、頭痛はどうなんだ?」

「あれ、もうすっかり良くなったよ」

「・・・」

 どうやら、セブンの開店が薬草サウナの役目を果たしたようである(それにしても、高くついた)。

 こちらは、相変わらず鼻水が止まらない。

 へ、ヘックショーン。

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2 コメント

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いつものことだ (yoritomo)
2011-01-21 20:01:46
うーんラーさんは中々やりますねぇ。
    
オムコイの桜は以前エチオピアで見たジャカランダに色合いが似ていますね。

ところで、日本の独身男性が増加している原因の一旦はコンビニエンスストアのまん延にあると思っています。
やはり人は不便さを感じなければなりませぬ。

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花よりセブン (クンター)
2011-01-22 13:25:48
yoritomoさん

 はい、いつものようにラーに嵌められてしまったようです(笑)。
 エチオピアのジャカランダというのも、桜の一種なんでしょうか。オムコイでは、「花よりセブン」というムードですが。
返信する

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